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【書籍化決定】転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした  作者: 鳥助
第二章 クロネの事情

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80.ランカの行方

 褒美を貰った後、私たちはエリシアと共に教会に赴いた。昨日は魔物が攻めてきたからそっちを優先してしまったけど、本来ならこっちの方が本題なのだ。


 司教スウェン。魔物を従える、ランカを攫った人。こんな危ない人がカリューネ教の司教だなんて驚きだ。


 でも、カリューネ教も善良な宗教とも言えない。もしかして、カリューネ教の内部はそんな危ない人が他にもいるんじゃないかと思えるほどだ。


 もし、それが本当だとしたら大変だ。魔物を従える人が大勢いたら、何を仕出かすか分からない。それそこ、暴力で国を乗っ取ることを考えているかもしれない。


 ……いや、今はそれは大事じゃない。ランカがどこにいるかが重要だ。とにかく、スウェンと会ってランカの事を問いたださなくては。


 教会の内部でカリューネ教の一団が来るのを待つ。すると、扉が開き、そこからカリューネ教の神官たちが現れた。


 早速、スウェンに。そう思って視線を向けると――神官の一団にスウェンの姿がなかった。


「おい、ユナ。スウェンの姿が見えない」

「う、うん……。どういうこと?」


 昨日はちゃんといたはずなのに、一体どこに行ってしまったのだろうか? エリシアと神官の話が終わるのを待って、私たちはエリシアに話しかけた。


「なぁ、エリシア。昨日のスウェンっていう奴はどこに行ったか聞いてないか?」

「どうやら、違う町に行ったらしいわよ」

「違う町!? ど、どこに行った!?」

「確か……ダランシェ子爵領、だったかしら」


 もう違う町に行ったの? この領の布教は一体どうするつもりだったのだろうか? 普通ならもう少しいて、説得を続けるとばかり思っていたけれど……。


 そんな事を考えている間に一団は昨日と同じように教会の奥へと移動していく。その後を追いながら、私たちは声を潜めて相談し合う。


「スウェンがいなくなったっていうことは、きっとランカも連れていかれただろうな」

「そう見ていいと思う。まさか、こんなに早くいなくなるとは思わなかった」

「スウェンっていう奴は不可解な行動をする奴だ。それに……」


 クロネが深刻そうな顔をしたあと、さらに声を潜めて話す。


「魔物と戦った時の匂い……あのスウェンから匂ってきた匂いと同じだったんだ」

「そ、それって!?」

「……もしかしたら、あのスウェンが昨日の魔物の大軍に関係しているのかもしれない」

「……!」


 その言葉を聞いて、言葉を飲み込んだ。もし、そうだとしたら……一大事だ。


 スウェンにはあの大軍の魔物を準備できる力があって、それで町を襲わせる指示を出せる。そんな危険な人物を野放しにしたら、どうなるか……。


 目的は何? カリューネ教を布教することじゃないの? その行動は独断でやっているの?


 色んな疑問が浮かんできて、頭の中がごちゃごちゃだ。クロネも難しい顔をして、何かを考えているようだ。


「……あんな奴、野放しに出来ない。国が危ない」

「そうだよね。どうにかしないと、どこかで手遅れになる」

「ランカの事も心配だけど、スウェンは捨て置けない。ユナ、あいつを止めるために協力してくれないか?」


 真剣な眼差しを向けられた。クロネは国を守ってきたお父さんの意思をしっかりと受け継いでいるようだ。あんな危険な人物を野放しにできないよね。


「分かった。ランカも救って、スウェンを止めよう。それが一番良い方法だよ」

「……ありがとう」


 力強く言うと、クロネはホッとした表情になった。


 ◇


「クロネお姉様、行ってしまうの!?」


 話し合いが終わり、私たちは領主の屋敷に戻ってきた。そこで、スウェンを追うために次の町へ行くと告げると、エリシアがとても驚いたように声を上げた。


「話は聞いたよな? スウェンという奴は放って置けない」

「……確かに、魔物を従える人物は放っておけないわ。正義感のあるクロネお姉様は見て見ぬふりを出来ないのも分かっている。だけど、急すぎて……」

「折角会えたのに、ごめん。だけど、行かなくちゃ」


 エリシアが俯いて、ドレスの裾を握る。その姿は寂しそうに見えて、胸が痛む。そんなエリシアにクロネは出来るだけ優しく伝えた。


 すると、エリシアが顔を上げる。その顔はちょっと困ったように笑っていた。


「……もう、仕方ないわね。何を言っても、行ってしまうでしょ?」

「……ごめん」

「いいのよ。こうして、クロネお姉様に出会えただけでも嬉しいから」


 申し訳なさそうにするクロネに向かって、エリシアは健気に笑って見せた。その笑顔を見て、クロネはホッとした様子だ。


 そのエリシアが少しもじもじとすると、恥ずかしそうに口を開く。


「でも、今日だけは一緒に居てくれる?」

「もちろん」

「やった!」


 エリシアはクロネに抱き着くと、二人は楽しそうに笑い合った。これは邪魔しちゃいけないよね。私はそっと離れると、部屋を後にした。


 ――そして、翌朝。私たちはリーネラ子爵領を後にして、ダランシェ子爵領へと向かった。

第二章、完。

いつもお読みいただきありがとうございます!

第三章からの更新は12:10の固定になります。

どうぞ、次章もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
いや、まぁ分かるけど、急がないとヤバいのでは?
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