79.褒美
「クロネお姉様! ユナ!」
教会に戻ると、そこで待っていたエリシアが駆けつけてくる。クロネに向かって飛び込むと、クロネはその体を抱きとめた。
「無事で良かった!」
「エリシアはなんともなかったか?」
「うん、私は大丈夫よ。オルディア様の結界があったから、魔物は町に入って来れなかったし」
「そうか、良かった」
クロネは頭を撫でると、エリシアは嬉しそうにはにかんだ。
そういえば、オルディア様も結界を張るの頑張ってくれたんだな。こんなに大きな町を丸ごと包むほどの結界ってかなりの力を使うよね。今度、感謝をしなくっちゃね。
『今、私の事を考えていませんでしたか!?』
「わっ!」
なっ、急に話しかけないでください!
『だって、急にユナの声が聞こえたから……しゅん。でも! 私、頑張りましたよ! 見ててくれましたか!?』
見てましたよ。魔物がいなくなるまで、結界を張ってくれてありがとうございます。
『もっと、褒めて! もっと!』
あれだけたくさんの魔物を一歩も町に入れなかった。あの結界がなかったら、私たちが帰ってくる場所だって、なくなってたかもしれない。それを守ったオルディア様は凄いです。
『えへへ……ほんとですか?』
オルディア様が頑張ってくれたから、みんな無事でいられました。エリシアも笑ってるし、クロネも安心してる。全部、オルディア様のおかげです。
『うっ』
うっ?
『うおぉぉおおおっん! こんなに褒められたの、初めてぇぇっ! 嬉しいぃぃぃっ!』
そ、そんなに嬉しかったんですか?
『創造神だから、それくらい出来て当たり前って言われて幾億年……。誰も褒めてくれた試しがなくて……。心から褒められるってこんなに気持ちのいい事なんですね』
創造神も大変なんですね。少しでも、気がまぎれたなら良かったです。
『また困った事があったら言ってください。力になりますよ。その時はいっぱい褒めてくださいね』
そう言って、オルディア様の声は遠のいていった。色々と面倒な創造神だけど、創造神にも心があるんだなって思った。
だったら、今度は少しは優しく……。したら、調子に乗りそうだから、ほんのちょっと優しくしてあげよう。
「ユナ?」
「あ、ごめん。何か用だった?」
「どうやら、スウェンたちは帰っていったらしい」
クロネに呼ばれて近づくと、知ったのはスウェンが帰ったという事。
「また明日も教会に来る予定だから、明日も一緒に教会に来る?」
「その方がいいだろう。ランカの事をまだスウェンに確認していないしな」
「そういう事なら、明日もお邪魔しようか」
この町に来た目的、ランカを忘れてはいけない。今日は色々あってランカの事を問いただせなかったけれど、今度こそランカの事を聞かなくっちゃ。
◇
翌日、教会に行く前に私たちは領主様に呼ばれた。
「昨日の活躍を聞いたよ。なんでも、二人で万の大軍の三分の二を倒したそうじゃないか」
「それだけじゃなく、Aランクの魔物も倒したと聞いたわ。二人ともBランクなのに、格上に勝つなんてとても強いのね」
「この領が助かったのは二人のお陰だ、ぜひ礼をさせてくれ」
どうやら、私たちの活躍はすぐに領主様に伝えられたみたいだ。沢山の魔物を倒したと思ったけど、三分の二も倒していたなんて……自分でもビックリだ。
すると、その場にいたエリシアも口を開く。
「クロネお姉様とユナがいなかったら、今頃町は魔物の侵攻によって滅亡していたかもしれない。二人がいてくれて本当に良かった。だから、そのお礼がしたいの」
この領を守っただけじゃなく、この国の王女も守ったことになるみたいだ。
「何か欲しいものはあるかしら?」
「なんでも言ってくれ、あるものは出そう」
「なら、褒章メダルを。それと、少しの旅資金もくれると嬉しい」
「分かった。私からは旅資金と褒章メダルを全て出そう。今、持っている褒章メダルは十四枚だ」
「なら、私からは褒章メダルを五十枚だすわ」
……今、何枚って言った? ビックリしてクロネを見ると、クロネもビックリして止まっていた。
「そ、そんなにくれるのか?」
「だって、王女の命を救ったようなものよ。叙爵するくらいの価値はあるわ」
ということは、今持っている褒章メダルが十六枚。それに十四枚と五十枚を足したら……七十枚!? 一気に増えた! それに、五十枚を超えると騎士爵か冒険爵を貰えるよね。
じゃあ、すでに貴族の仲間入りを果たしたって事!? まだ褒章メダルを集めて一か月も経っていないのに、これは早い!
二人で驚いていると、目の前のテーブルに褒章メダルと旅資金が詰まった袋が用意された。本当にこんなに貰ってもいいの!?
戸惑っていると、クロネが用意された物をマジックバッグにしまった。その手はちょっと緊張しているのか、震えていた。
「良かったな、ユナ。これで貴族の仲間入りが出来るぞ」
そう言われて、私は思わず返事に詰まった。貴族……だなんて。私が? 本当に?
でも、確かに袋があるし、クロネが受け取ってくれた。ってことは、これは夢じゃない。
「う、うん……。なんか突然やってきたから、驚いて……」
「そこは素直に喜んでもいいと思う」
「そ、そうだよね!」
ようやく、笑顔が浮かんできた。……嬉しい。本当に、嬉しい!
すると、目の前のクロネが嬉しそうに笑顔を浮かべてくれた。そのお陰で、私の嬉しい気持ちは倍増した。
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