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転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした  作者: 鳥助
第一章 捨てられたけど、万能な魔力があるお陰でなんとかなりそう!
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7.猫耳獣人クロネ(2)

 道の脇の木の陰でクロネを膝枕して起きるのを待った。考える事は、どうしてクロネが強さにこだわっていたのか、だ。


 年齢は私と変わらないくらいなのに、どうして戦闘を好んで行うんだろう。きっと、私には知らない何かを背負っているに違いない。


 次、起きた時はどんな話をしよう。どこから来たの? 趣味は? 何か目標がある? 考えると色んな事が浮かんでくる。


 ……浮かんでくるが。


「くっ……猫耳、触りたい。あと、しっぽも!」


 異世界転生を果たして、初めて出会った獣人の子供。夢にまで見た猫耳としっぽがそこにある。意識を他に持っていこうと思ったが、やっぱり気になって仕方がない。


 猫耳もしっぽも脱力していて、触り心地が良さそう。す、少しだけなら触ってもいいよね。寝ているし、気づかれないよね?


 ドキドキしながら、震える手で猫耳の裏を触る。


「わー、フカフカ! つるつる!」


 猫耳の裏は毛が生えていてフカフカしているのに、撫でるとつるつるしている。そのもふもふ加減に夢中になって猫耳の裏を擦ってしまった。


 今度は指先で猫耳を摘まんでみる。人間の耳と変わらない硬さとやわらかさ。だけど、その耳が毛で覆われるだけで、どうしてこんなに気持ちがいいんだろう。


「もふもふ、もふもふ」


 両手で両耳をもふもふする。なんか、今まで満たされなかった心が満たされていくような、そんな快感を覚えた。


 耳も堪能したし、次はしっぽでも……。


「何をしている」

「はっ!」


 気づいてしまったのか!


「ち、違うのこれは! その! 猫耳があまりにも可愛かったから! だから! その! 負けました!」

「……何を言っている?」

「……えっ? そんなに気にしていない?」

「いや、気にするだろ。一心不乱に耳を触っていたからな」

「そ、そうだよね! 気持ち悪かったよね! ごめんね!」

「……別にいいけど」


 気持ち悪いって思われたらどうしよう、って思ったけれどクロネはそんなに気にしてないみたい。よ、良かった……怪しい人に思われて成敗されるところだった。


 クロネは私の膝から起き上がると、地面に置いた剣を掴んだ。もしかして、また戦うの?


 咄嗟に身構えるが、クロネは剣を触っただけで、それ以上の事はしてこなかった。


「私はどうしていた?」

「気絶していたよ。私の風の弾の欠片が当たったみたい」

「そうか。あたしは負けたのか……」


 正直に言うと、クロネの耳が残念そうに傾いた。あの動き……いい!


 いやいや、今はそっちに集中している場合じゃないんだって!


 少し俯いていたクロネだったけど、すぐに気を取り戻して顔を上げた。


「お前、強いな」

「お前じゃなくてユナだよ」

「ユナは強い」


 顔を向けたクロネの目がキラキラ光っているように見えた。もしかして、尊敬されている?


 でも、勝ったのなんて偶然だし、私の実力のお陰じゃないような気がする。風の弾がクロネのスキル技と衝突して、欠片になって飛んで偶然クロネの頭に当たっただけだもんね。うん、私の実力じゃないな。


「クロネも強かったよ」

「本当か? あたし、強い?」

「うん、強いよ」

「……そうか」


 クロネの顔はマントで隠れているけれど、目が嬉しそうに細くなり、しっぽがゆらゆらと揺れている。くっ……猫耳獣人、可愛い!


「でも、強さが足りない。ユナに勝てるほどの力が欲しい」

「どうして、そこまで強くなりたいの?」

「……勝ちたい相手がいる」


 クロネに勝ちたい相手?


「それって凄く強い人なの?」

「強い。父上も母上も敵わなかった」

「もしかして、クロネの両親はその人に……」

「大丈夫、殺されていない。でも、下僕になった」

「そうなんだ……」


 ある人にクロネのお父さんとお母さんは負けた。そして、下僕になったってこと?


「じゃあ、クロネは両親を助けたいの?」

「それもある。だけど、一番は……勝ちたい。それだけだ」


 負けたのが相当悔しかったらしい。ということは、クロネって戦闘狂ってこと? いやいや、戦闘狂は失礼だよね。負けず嫌いってことだよね。


「だから、あたしはユナについていく」


 ……んん?


「強いユナと一緒にいると、自然と強い敵が集まって来る。それと戦いたい。あと、ユナと一緒に修行したい」


 ……なんか、唐突に話の流れが変わってない?


「ちょ、ちょっと待って。なんで、そんな思考になるか分からないんだけど……。私はそんなに戦闘しないと思うよ」

「嘘だ。戦っている時の目は戦闘が好きな目をしていた。だから、ユナの傍にいると自然と戦いが発生する」


 私を何だと思っているの!? 私がいるだけで、自然と戦が発生するわけないじゃない!


「私はこう見えても平和主義者で……」

「嘘だ。あんな戦闘をする人が平和主義者な訳ない」

「えぇ……」


 私っていつのまにかクロネと同じ戦闘狂になったのかな?


「とにかく、あたしはユナについていく」


 真剣なまなざしを向けてそう言われた。その真剣さに心が揺らぐ。


 見捨てられて孤独だった私に突然現れた同行者。しかも、同じ年くらいの女の子。友達になれそうな人の登場に嬉しくない訳がない。


「じゃあ、これからよろしくね。クロネ」

「あぁ、よろしく頼む」


 手を差し伸べると、クロネがしっかりと握手してくれた。これからは賑やかになりそう!

お読みいただきありがとうございます!

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