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【書籍化決定】転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした  作者: 鳥助
第二章 クロネの事情

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63.クロネを知る子

 突然現れた私たちよりも小さな子供。その子供はクロネを見ると、一目散に駆けつけて抱き着いた。


 隣にいた私は呆然とそれを見ていると、ハッと我に返った。まさか、ここでクロネを知る子がいるなんて思いもしなかった。


 当の本人はというと――とても困惑した表情を浮かべていた。


「エリシア……どうしてここに」


 クロネを知っている子がいた! しかも、お姫様みたいに可愛い子と知り合いだなんて……。クロネは一体何者なの?


 黙って見ていると、エリシアと呼ばれた子はクロネの胸から顔を上げて――キッとクロネを睨みつける。


「クロネお姉様のバカ! どうして突然いなくなったりしたの!?」

「ちゃんと、伝えておいたはずだけど……」

「わたくしに直接言ってくださらなかったじゃない! それは、突然というものよ!」

「その……ごめん」

「そう簡単に許さないから!」


 エリシアは懸命にクロネの胸を叩いて訴えると、クロネの耳としっぽがシュンと下がった。どうやら、申し訳ない気持ちがあるらしい。


 そういえば、お姉様って言っているけれど……もしかして妹? でも、この子は耳もしっぽもないけれど……。どういう関係なのか分からない。


「あれから、どれだけ心配したか……。ルクレシオン家の事だって、ほったらかしにして……」

「あ、家のことは……」


 そう言って、クロネが戸惑いながらこちらをチラッと見てきた。それって、もしかしてクロネの家名? クロネってどこかの貴族の出身だったりする?


 突然現れたエリシアのお陰で色んな疑問が浮上してきた。詳しく話を聞きたいところだけど、今はそんな雰囲気じゃないし……。


 そう思っていると――


「エリシア様!」


 怒りの籠った声が聞こえてきた。振り向くと、怒りの形相を浮かべたカリューネ教の神官が近づいてきた。


「大事な話をしている時に飛び出すなんて、何を考えているのですか!」

「……これは大事なことです」

「ここの司祭を説得する事の方が大事です! あなたの役目を覚えていますか?」

「……分かっています」


 カリューネ教の神官の声にエリシアの様子が変わった。毅然とした態度になったけど、ちょっと不機嫌そうだ。


「あなたがここにいられるのは、あと一週間もありません。それまでに必ずここの司祭を説得してください。近々、我々の上の者が来ますから、一緒に説得してもらいますからね」


 神官は必要な事を話すと、部下を連れてそそくさとその場を退散した。やっぱり、カリューネ教の神官はオルディア様の神官と違って雰囲気が悪い。


 その神官を見送っていると、突然手を握られて引っ張られる。


「じゃあ、行こう」


 私の前にクロネが出てきて、急いでこの場を退散しようとする。だが、その時――私の反対側の手が引っ張られる。


「クロネお姉様! 逃がしませんよ!」


 エリシアが私の手を引っ張ったみたいだ。目的はクロネみたいだけど、瞬時に私を引き留めることがクロネを引き留める事だと悟ったようだ。


「あたしはやる事があるから忙しい。エルシアに付き合っている暇はない。さぁ、ユナ行こう」

「そんなことを言って、また姿を眩ませる気ね。そうはさせないから!」


 クロネが私を引っ張って、エリシアが反対側の私を引っ張る。あぁ、私のために争わないでー!


『はい! 私も参加したいです!』


 オ、オルディア様!?


『私の聖域にユナの気配がして見に来たら、私のユナを奪い合っている場面じゃないですか! ユナは私のものですー!』


 あぁ、ふざけて考えていた事にオルディア様が乗っかってきたから、面倒な事になった! 私って馬鹿!


「ユナ、エリシアの話を聞くな。早くランカを探しに行こう」

「クロネお姉様は私の話を聞いて! この人とどこかに行くつもりでしょ! そうはさせないから!」

『エーンヤ、アソーレ! ユナは渡しませーん!』


 何このカオス! 二人が私を引っ張っていて痛いし、ふざけているオルディア様の声が頭の中で響くし。こういう時は……こういう時は!


 魔力を放って、すぐ一メートル先に転移する。すると、引っ張り合う二人の手から離れることが出来た。と、とにかくこれで落ち着い――。


『あぁ、ダメです。私には二人に奪い合いをされているのに、オルディア様の事が気になって! はははっ、そうでしょう。さぁ、ユナ……安心して私の胸に飛び込んできなさい。オルディア様! ユナ!』


 さようなら、オルディア様。


『あ、ちょっと待っ――』


 勝手にオルディア様との通話を切れた。いや、これ……私の意思で切れるんかい! 色々言いたいことはあるけれど、今はそれどころじゃない。


「離せ、エリシア!」

「絶対に離さないわ!」


 私がいなくなったことを良いことに、エリシアはクロネの腰に抱き着いて離れない。これは、話をしないとダメな雰囲気じゃない?


「クロネ、出会っていきなり別れるのは可哀想だから、話をしようよ」

「……そうだな。いきなり、出て行ったあたしが悪いし」


 私の説得にとうとうクロネが折れた。


「エリシア、ちゃんと話し合うから離れろ」

「本当!? 本当に逃げない?」

「あぁ、逃げない」


 そういうとエリシアはとても嬉しそうな顔をした。こうして、私たちはエリシアに連れられて行った。

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