59.オルディア様の像
「えっ、もう出てしまうのか!」
男爵一家と一緒に朝食をしている時、今日中に村を出ていく事を伝えたら、そんな風に驚かれてしまった。
「まだ、ゆっくりしていってもいいのでは?」
「それなりに急ぐ旅路だから、ゆっくりもしていられない」
「早く目的地に着きたいの」
「そ、そうか……それは残念だ。もう少し、もてなしたかったが……。それに……」
男爵はとても残念そうな顔をした。だけど、その最後の言葉が気になる。
「何か私たちにして欲しい事があったの? 家も畑も元通りに戻したはずだけど……」
「えぇ、全て元通りにして本当に助かった。だが、もしまた魔物が現れたりしたらと思うと……」
突然魔物に襲われた恐怖がまだ残っているらしい。だから、強い私たちが村に少しでも残って欲しいという思いがあるみたいだ。
「やはり、魔物が増えた現状を安心して過ごすには、戦える者がいるのがいいと思うのだ」
「確かに……また魔物に襲われたりしたら大変だよね。でも、私たちはこの村に留まるわけにはいかないし……」
「冒険者ギルドに冒険者を派遣してもらうように頼んだらどうだ?」
「やはり、それが一番か……」
どうやら、男爵も冒険者を派遣してもらう事を考えていたらしい。真剣な表情で悩み始めた。
「ワイバーンの前にもゴブリンやオークが村に近くに出没したこともあるんだ。こんな事、前にはなかったのに……」
「何がきっかけでそうなったんだろう?」
「きっかけ? ……そうだ、カリューネ教が来てから魔物を見る機会が増えたんだ」
「ここにもカリューネ教が来たのか?」
どうやら、この村にはカリューネ教が来たみたいだ。場所によってはカリューネ教が来たり、来なかったりしている。
「あぁ、そうなんだ。突然やってきて、今まで信仰していたオルディア様の像を取り壊して、変わりにカリューネ様の像を置いていったんだ。その後、村の近くで魔物が見られるようになったのは……」
やっぱり、カリューネ教が怪しい? それとも、想像上の神様だから、まだ力がないせい? どっちにしろ、今の状況は危うい。
ここは、やっぱりオルディア様の像がなくっちゃ。
「やはり、オルディア様の像がなくなったから、魔物が近づいてきたと考えた方がいいのか?」
「その可能性はある。でも、またオルディア様の像を建てれば問題ないよ」
「そ、そうか! だったら、オルディア様の像を発注しなければ! だが、その間……どうするか……」
オルディア様への信仰はまだ残っているらしい。そういうことなら、私は一肌脱ぎますか。
「だったら、私が魔力で作ろうか?」
「そ、そんなことが可能なのか?」
「うん、出来るよ。カリューネ教の像はそのままにしておいて、別のところにオルディア様の像を建てる?」
「あぁ、それがいい。またカリューネ教が来たら、大変だからな。だったら、いい場所がある」
男爵は立ち上がり、私たちもそれに続いた。
◇
「村の中心の広場なら、村人たちも気軽に祈ることが出来るだろう」
私たちが連れられてきたのは、村の中心にある広場。その広場の脇にスペースがあるから、そこに建てて欲しいらしい。
だったらここにオルディア様の像と、雨風を凌げる壁と屋根を作ればいいよね。
じゃあ、早速――の前にちゃんとオルディア様に確認しないと。私は胸に下げた首飾りに手を当てて、オルディア様を呼びかける。
オルディア様、いますか? オルディア様――。
『あー、仕事したくなーい。だらけたーい。二度寝したーい』
初っ端からオルディア様が愚痴を零していた。は、話を聞いてくれるかな?
あのオルディア様?
『あれ? ユナじゃないですか! なんですか、話をしたくて呼び出したんですか!? あーでも、ちょうど仕事をしようとしていたところですからねー、いやー、時間がないなー』
明らかにサボっていたじゃないですか……。しっかりしてください。
『えへへ、ユナのちょっと呆れたように言う説教はいいですね、心に染みます。気持ちがいいです』
いつのまに説教されて喜ぶ属性を付けたんですか。今日はオルディア様にお願いがあって呼んだんです。
『お願いですか?』
村を守護するためにオルディア様の像を建てたいんです。なので、その村を守護をお願いしたいのですが……。
『私の像!? それは大賛成ですよ! 最近、その国では私の像が破壊されて困っていたところなんです! バンバン建ててください、バンバン!』
守護の方は?
『大丈夫です、ちゃんと神力を散布しますから、その力で守護が出来るのです!』
散布って……。じゃあ、建てるだけでいいですか?
『あぁ、ちゃんと祈りを籠めないとダメですよ。祈りを込めれば籠めるほど、神力の効果が上がります』
じゃあ、建てた後は日常的に祈りを籠めれば、魔物は近寄ってこないという事ですね。
『それでこの村にも私の加護が届きます。ユナのお陰で、この国の影響力が少しずつ戻りそうです。もし、同じように困った所があったら、私の像を立ててください』
分かりました、そうしてみます。
『ふふん、どうですか。ちゃんとお仕事をしたでしょう。褒めてもいいんですよ、褒めても!』
さて、じゃあ像でも建てようかな。
『褒めてー!』
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