57.魔力って修復も出来るって!
「お父様!」
「あなた!」
「おぉっ! 二人とも、よく無事で!」
ワイバーンを倒したことで、屋敷に取り残された人たちは解放された。屋敷の主、男爵は無事だった妻と子供と感動の再会をする。
他にも屋敷に取り残された人はいたみたいで、外にいた人達と生きていることを喜び合っていた。
その光景を見ていると、男爵が近づいてきた。
「お二人とも、ワイバーンを倒して、我々を救って頂いてありがとうございます。ぜひ、感謝をしたいので今日は私の屋敷に泊っていってください」
この言葉にチラッと屋敷を見て見た。屋敷の窓はワイバーンが顔を突っ込んだせいか割れていて、壁のあちこちは穴が開いている。とてもじゃないが、安心して泊まれる場所ではない。
「あ、あははっ。ちょっと風通しがいいですが、寝具は上等の物を用意させますので」
これだったら、異空間に作った部屋に泊まったほうが安心かも? でも、折角の好意を無駄にするわけにもいかないし。
そんな事を考えていると、屋敷に村人が集まってきた。みな、先ほどのワイバーンの声を聞き、気になって来たみたいだ。
村人は地面にめり込んだワイバーンを見て、助かったと喜んでる。だけど、素直に喜んでいる様子はなかった。
「男爵様……俺の家が」
「私たちの家も……」
「家だけじゃない、畑も荒らされた」
「そうか……。被害はここだけではないと思っていたが……」
村人が口々に被害をいうと、男爵は深刻そうな顔をした。ワイバーンは倒せても、ワイバーンが荒らした家と畑は壊れたままだ。
きっと、これからどうしようかと悩んでいるに違いない。何か力になれば良いのだけれど……。
私の魔力でどうにか出来ないかな? どんな力に変異すれば、壊れた物を直せるのだろう?
壊れた物を直す、直す……元通りにする、時間を戻す……時間を戻す! その力に変異させれば、きっと壊れた物は元通りに戻るはず!
試しにワイバーンの炎で焼け焦げた地面に魔力を付与する。そして、その魔力に時を戻す力を付与させてみた。すると、みるみるうちに焼け焦げた地面が元通りの雑草が生えた物に戻った。
よし、この方法は使える!
「あの、壊れた物なら私に任せて!」
「君に? だが、君が直すにはとても……」
「大丈夫! 見てて!」
私は屋敷の前に立つと、屋敷を自分の魔力で覆いつくす。次に魔力に時を戻す力を付与した。すると、窓が割れ、穴が開いた壁が逆再生でもしているように元通りに戻っていく。
「お、おぉっ!? こ、これは!」
その様子に男爵も他の人達も驚いた。普通なら取り替えないといけない窓ガラスが張られた窓が綺麗に元に戻り、職人の手で直さなければいけない壁の穴が綺麗に消えていく。
魔力の行使を止めると、そこにはどこも壊れていない元通りに戻った屋敷に直っていた。
「まさか、こんなことがっ!」
「凄い! こんな力があるなんて!」
「どんな魔法を使ったの!?」
その場にいた人たちは見た物が信じられないと声を上げた。目を擦って何度もみたり、頬をつねって夢じゃないかと確認する人もいるほどだ。
そんな事をしても、現実は変わらない。目の前で起こったことを、信じ始めた。
「あ、あの……君に頼みがあるんだが」
「他のところも直して欲しいんだよね?」
「い、いいのか?」
「もちろん! その為にこの力を考えたから」
「そうか! 後で望む報酬を渡そう。だから、頼む……ワイバーンに襲われた村を元に戻してくれ」
その願いに私が頷くと、村人は歓喜に沸いた。よし、ここは頑張って壊れたところを直していこう。
◇
それから、私は村の中を巡って壊れたところを修理した。焼かれた家があれば魔力で囲って、時を戻す力を付与すると元通り。
屋根と壁が崩壊した家を魔力で囲って、時を戻す力を付与するとまた元通り。そうやって、順番に家々を巡っていって壊れたところを修理していった。
家々の修復が終わると、今度は畑の修復。流石にそれは出来ないんじゃないかって村人たちが不安そうだったけれど、私が力を行使すると皆なびっくり。荒らされた畑が元通りに戻っていくのだ。
「家だけじゃなくて、畑も元に戻るなんて!」
「良かった……。本当に良かった!」
「これで生活が出来る! 君、本当にありがとう!」
畑を全て元通りにすると、私は村人に囲まれて心からのお礼を言われた。
喜びと安堵の声が響き渡る中、私は少しだけ照れながらも、皆の笑顔を見て胸がじんわりと温かくなるのを感じた。
「ありがとう! 本当にありがとう!」
「君がいなかったら、村は終わってた……!」
「なんと感謝を伝えていいか……本当にありがとう!」
次々に届く感謝の言葉に、胸が熱くなる。私でも人の力になれるんだと知ると、それは自信に繋がっていく。
すると、クロネがそっと私の肩に手を置いた。
「ユナ、よくやったな。ユナの魔力が、たくさんの人を救ったんだ」
「うん……ありがとう、クロネ」
クロネの言葉に、胸の奥が温かくなる。私の力が誰かの役に立てた。困っていた人を助けられた。それが、こんなにも嬉しいことだなんて。
それから、村人に歓迎された私たちは宴に招待されて、そこで楽しいひと時を過ごしていた。
ただ、クロネが少しだけ考え事をしていたことに私は気づかなかった。
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