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【書籍化決定】転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした  作者: 鳥助
第一章 捨てられたけど、万能な魔力があるお陰でなんとかなりそう!

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51.ランカ……?

「よっ……と」


 魔力で転移してきた屋根の上。一色に染まった屋根は建物によって高さがバラバラで、とても移動がしにくい。


 そんな中、クロネと狼が睨み合っている。顰め顔で唸り声を上げる狼、目を細め鋭い眼光で睨みつけるクロネ。どちらとも、一歩も引かない構えだ。


 よく見ると、クロネを纏っていた防御魔法が欠けている。先ほどの攻防でいくらか攻撃を貰ってしまったのだろう。このままだと防御魔法が解けてしまう。


 クロネの防御魔法が弱くなっているのに、狼の体には傷一つもないように見える。想像以上に硬い体で、クロネの攻撃では歯が立たないということだろうか?


 本当にこの狼を倒せるの? ……いいや、これはランカかもしれないから、殺せない。どうにかして、拘束をしなければ。


 そんなことを考えていると、二人の体がフッと消えた。えっ……どこに? そう思った瞬間、空中で大きな衝撃が走った。


「くっ!」

「グルルッ!」


 二人が空中で衝突すると、今度は落ちながら連撃が始まった。目にも止まらぬ速さでお互いの攻撃を繰り出す。激しい金属音が鳴り響き、目で追えない分、耳でその激しさを感じた。


 だけど、狼の方が手数が多い。クロネの纏っていた防御魔法が次々に削れていって、その身が危険に晒されそうだ。


 とにかく、狼を止めないと! 狼に向かって魔力を放つ。魔力が狼を包み込むと、一気に圧力をかけて、その体を拘束した。


「グッ……ガッ……!」


 体の動きを止めた狼。その隙を狙い、クロネが一旦距離を取る。そして、フッと消えると――狼の背後に回った。


「《迅雷双刃・双雷》!」


 強烈な一撃を食らわせた後、体を消し――今度は前に現われ、もう一撃放つ。前後の衝撃に狼の体は宙に舞った。始めてみる技だ、これは効いたはず!


 そう思っていると、宙に舞った狼の体がくるりと回転した。そして、何事もなく屋根に着地する。


「グルルッ……」


 その体には少しの傷が出来ていた。あの強い衝撃にそれだけの傷しか付けられないなんて……!


「くそっ! これもダメか……!」


 クロネが悔しそうに顔を歪める。すると、目の前にいた狼がフッと消え、クロネの背中に現れた。


「なっ!」

「ガァァッ!」


 狼は重い一撃を背中に放ち、一瞬で前に出ると前からも重い一撃を放つ。これは……さっきのクロネの技!


 クロネの体は宙に舞う。その防御魔法は解かれていた。それを見た瞬間――自然と魔力を高め、圧縮し、狼に向かって放っていた。


 その魔力は狼の体に着弾すると、周囲の空気を吸収し――爆発した。閉じ込められた魔力が一気に解放され、局所的な衝撃波と熱を撒き散らす。まるで爆発が一点に濃縮されたかのように、周囲の空間が軋みを上げる。


 爆炎は去り、その場には狼だけが残された。魔力の爆発を受けた、その体は抉れて血が溢れていた。そこで、ハッとした。


「ラ、ランカ……」


 もしかしたら、ランカかもしれない狼にあんな深手を……。途端に自分が悪い事をしたように思ってしまった。


 狼は大人しく立っていたが、今度は苦しそうに唸り出した。もしかして、怪我が深くて!? どうしようかと迷っていると、狼は両手で頭を抱え、声を発する。


「グッ、ガッ……ア、ア、アレ……何?」


 その声は聞いたことがある! ランカの声だ!


「ランカ! ランカだよね!?」

「えっ、あっ……こ、これ、は……。ラン、カは……どうして……」


 狼は頭から手を離し、自分の体を見た。その姿を見て、とても動揺している様子だ。


 なんでランカの意識が戻ったかは分からない。もしかしたら、痛みの衝撃があったからかもしれない。だけど、今はそんな事はどうでもいい。


 ランカの意識が戻ったってことは、これ以上戦わなくて済む。少しの安堵を感じると、ランカに近づいていく。


 ――だが、その時。


 ランカの足元に黒い影が現れた。その黒い影から、黒い触手みたいな物が生え、狼の体を拘束していく。


「な、に……これっ」


 ランカの体はあっという間に黒い触手に覆われた。そして、その体が黒い影に吸い込まれていく。


「ランカッ!」


 手を差し伸べて駆け寄る。目の前の事象の疑問を考えるよりも早く、ランカの身を案じた。


 戸惑いに揺れた目が私を見る。触手で覆われた手が精一杯伸ばされた。


「た、助け……てっ……」


 その手を引っ張りあげたかった。なのに、その手は黒い影に吸い込まれてしまう。そして、ランカを飲み込んだ黒い影は忽然と消えた。


 残ったのは、無常に伸ばされた私の手。

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