47.町の捜索
次の日もランカと会っては説得したけれど、ランカの心は動かなかった。それどころか、日を追うにつれてランカの態度が悪くなっていく。まるで、私たちが悪者だと言わんばかりだ。
ランカも神官見習いになれるのは怪しいと思っているのに、どうしてそこに執着するのか分からない。ランカの目的って一体なんだろう? ランカを拾った神官は一体何を考えている?
分からない事が多すぎて、どうにかなってしまいそうだ。どうやったら、ランカを説得出来るのか……。それを二人で相談して考えているが、答えは見つからない。
そんな時、冒険者ギルドに行くと、あの依頼の最募集を見かけた。
「町の魔物の噂、まだあったんだね」
「そうみたいだな。まだ、見つかっていないらしい」
「見つからないから探索する冒険者を増やすみたいだね。どうする? 私たちもやってみる?」
「やってみよう。町に魔物がいるかもしれない状態は危険だ」
「町にはランカもいるし、守るためにもこの真相を突き止めなくっちゃね」
町に魔物がいるかもしれない状況は危険だ。もしランカが魔物と出会ってしまったら、その身に危険が及んでしまう。
そうなる前に、この問題は解決しておきたい。それに、これは領主からの依頼だ。もしかしたら、また褒章メダルが貰えるかもしれない。
この依頼は私たちに打ってつけだ。
◇
「じゃあ、魔物が見つかった所に行ってみよう」
「三か所か……。とりあえず、近い所から探していこう」
町の魔物目撃情報は、全部で三か所。私たちはまず、冒険者ギルドから一番近い商業区の裏路地へと向かった。
「ここ、少し前に魔物の姿を見たって話があった場所だよね」
「夜の時間帯みたいだな。何か痕跡が残っていればいいんだが」
路地の中は薄暗く、昼間でもじめっとしている。壁際にはゴミ袋や木箱が積まれ、猫の鳴き声がどこからか響いていた。空気が重く、どこか不穏な気配が漂っている。
「クロネ、何か感じる?」
「ちょっと待て」
クロネが地面に鼻を近づかせると、その匂いを嗅ぐ。
「薄っすらと魔物の匂いが残っている」
「どこに行ったの?」
「こっちだ」
地面を這いながらクロネが進んでいくと、ピタリと止まった。
「匂いが途切れている」
「そこからジャンプをしたとか?」
そう思って、周りを見て見たが壁に囲まれていて、飛び上がる場所がない。
「壁を登っていったとかかな?」
「壁に魔物の匂いが残っていない。突然、消えたって事になる。そういえば、最初に嗅いだ匂いも突然そこに匂いがあった」
「じゃあ、突然現れて、突然消えたって事?」
そんな魔物がいるのだろうか? でも、突然現れて突然消える魔物はやっかいだ。
「それに匂いに以前嗅いだ匂いが混じっているような……。どこだったか……」
クロネは腕を組んで悩んだ。一体、どこで嗅いだ匂いなのか……。ドキドキしながら待っていると、クロネがハッと気づく。
「これは、ランカの匂いに混じっていた香の匂い!」
「えっ……。それ、本当?」
「あぁ、本当だ」
じゃあ、この魔物はランカに近いところにいるってこと? そこまで考えてゾッとした。だけど、ランカは魔物の事は知らないようだし、一体この接点はどういうことなのだろう?
「魔物とランカを繋げる、この香の匂いはどこから……」
「……分からない。偶然両者が香の匂いの場所にいた可能性があるってこと」
言いようもない不安に襲われる。もし、ランカと魔物が紙一重の場所にいたら、ランカの身が危ないんじゃないか。
「とにかく、他の場所も行ってみよう」
「そうだな」
私たちは他の場所も見て回ることにした。
◇
他の二か所を回って気づいたことは同じ事。魔物は突然現れて、突然消えたという事。その匂いにはランカから漂っていた香の匂いがしたこと。
ここで注目すべき点は香の匂いだ。
「香の匂いって……スラムにいた時には嗅いでいた?」
「いいや、あの灰色の法衣を着てからだ」
「そしたら、香の匂いって教会の匂いじゃ……」
「でも、教会にはそんな匂いがしなかった」
教会全体では香の匂いはしていない。というと、もっと個人的なところから? それだと、怪しい人は一人だけいる。
「ランカを神官見習いにした神官の人が怪しくない? その人がいた所から、匂いが移ったってことは?」
「……そうか?」
「だって、ランカと魔物から同じ匂いがしたって事は、同じ場所にいたって事じゃない? 同じ時間にいなくても、別々の時間にいたって事も出来るし。その神官が何か企んでいそうだし……」
もし、ランカを神官見習いに誘った人が魔物と接点があるとしたら、ランカと魔物に同じ匂いがした理由になる。やっぱり、その神官が怪しい。
「教会に潜入して、その神官を調べよう」
「大胆な事を考えてるな」
「そうしないと、問題解決しないでしょ。ほら、行こう」
私がクロネの手を引っ張って教会に行こうとした――その時。
「待て」
クロネの体が立ち止まった。振り向くと、クロネは真剣な表情で周囲に視線を向け、耳をピクピクと動かしている。
「悲鳴が聞こえた」
「えっ?」
「こっちだ!」
クロネは逆に私の手を引っ張って、路地を進んでいった。一体、何が起こったの?
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