表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定】転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした  作者: 鳥助
第一章 捨てられたけど、万能な魔力があるお陰でなんとかなりそう!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/143

42.ランカを襲った連中

「……」

「……」


 二人で無言になって歩く。考えているのは、先ほどのランカの事。


 私の渡したお金がランカを傷つける結果になってしまって、罪悪感がずしりと圧し掛かる。もし、私がお金を渡さなかったら……ランカは傷つけられずに済んだだろう。


「私のせいでランカが……」

「いいや、ユナのせいじゃない。ランカのお金を狙った奴らが悪い」

「でも、私が渡さなかったら、ランカは酷い目に合わずに済んだのに」

「ユナの行いは間違いじゃなかった。だから、自分を責めるのは止めろ」


 クロネの言葉は、いつもより少しだけ強かった。でも、それが逆に優しさとして伝わってくる。


 私は俯いたまま、小さく唇を噛んだ。


「でも……あのとき、私は何も考えずにお金を渡しちゃった。ランカの暮らしや、周囲の目まで気にせずに……。無責任だったと思うの」


 その言葉に、クロネは立ち止まり、私の正面に回り込んだ。そして、まっすぐ私の目を見て言った。


「じゃあ、ユナはお金を渡さなかったら良かったって思ってるのか?」

「それは……」


 返事に詰まる。


 あのとき、ランカが本当に困っていたのは事実だった。何も持たず、誰にも頼れず、飢えに耐えていた。助けたいという気持ちは本物だった。でも、その結果があの傷だと思うと――。


「たとえ結果がどうなっても、困ってる子に手を差し伸べられるユナの優しさは本物だ。私は、そういうユナを誇りに思ってる」

「クロネ……」

「だから、自分を責めるのは止めろ。辛そうなユナの顔を見るのは、あたしも辛い」


 クロネの真っすぐな気持ちが伝わって来る。そのお陰で私の中の罪悪感が薄れていくのを感じた。


「うん、クロネ……ありがとう」

「いい。ユナの気持ちが大事」


 クロネに励まされて、私も元気が出た。うん、落ち込んでなんかいられないね。


 そのまま歩いていた時――クロネがピタリと止まった。


「クロネ?」


 クロネは路地をじっと見て、鼻を動かしていた。


「ほのかにランカの血の匂いがする」

「えっ!?」


 さっき、助けたばかりなのに、もしかしてまた誰かに傷つけられた!?


 そう思っていると、クロネの目が鋭く細められた。


「これは……ランカじゃない。きっと、ランカを傷つけた連中」

「じゃあ、この路地の先にその人達がいるってこと?」

「……あぁ。ランカを傷つけた事……後悔させてやる」

「ちょっ!」


 すると、クロネは路地に向かって歩き始めた。慌ててその後を追う。


 前を歩くクロネからは威圧が出ていて、次第のその威圧が強くなっていく。耳は路地の向こう側に向いていて、もしかして声を拾っているのだろうか? どんどん、クロネの怒りが増えているように思える。


 そして、何度目かの路地を曲がった先に男女の大人たちがたむろしていた。みんな上機嫌に何かを話しているみたいで、その話し声が聞こえてくる。


「いい臨時収入だったな。これからは定期的に子供たちを締め上げないと」

「一体どこからそのお金が出てきたんだろうな?」

「どうせ、盗んだんだろう? まぁ、いい。どうせ、また盗むからこっちが奪い取ればいい」


 とてもじゃないが、聞いていられない内容だった。だけど、その話を聞くと私も怒りがこみ上げてくる。


 その大人たちに向かって、クロネは近寄った。


「おい」

「あぁ、なんだ?」

「お前たちだろ。ランカを傷つけて、お金を奪ったのは」

「なんだぁ? ランカの友達かなんかか?」

「丁度いい。こいつらも金が持ってないか、調べてみようぜ」


 クロネが声を掛けると、大人たちはニヤニヤとして笑いながら立ち上がった。そして、腰にぶら下げてあったナイフを取り出す。


「へへっ。痛い目になりたくなかったら、お金を出すんだな。じゃねぇと、ランカみたいに刺すぞ」

「どうして、ランカに酷い目を負わせた」

「スラムに住んでいる子供は俺たちの下僕なの。だから、好きなようにして何が悪い」

「ランカたちは下僕じゃない!」

「生きてる価値もない奴らの事をどう扱っても咎める奴はいねぇよ。あいつらは死ぬまでこき使ってやるよ」


 大人たちの心無い言葉に私たちの怒りは高まった。クロネは背中から双剣を取り出すと、大人たちは少し驚いた顔をする。


「へ、へぇ……俺たちとやろうっていうのか?」

「この数に勝てると思っているのか? ただの子供が」

「痛い目見る前に止めといたほうがいいんじゃないか?」


 クロネが立派な双剣を取り出して驚いているようだけど、それだけでは引き下がらない。じりじりと距離を詰めてくる大人たちに向かって、クロネが睨みを効かせる。


「お前たちを……斬る」


 町の中で流血沙汰は問題になる。私はクロネの前に立って、それを制した。


「クロネ、ここは私に任せて」

「おいおい、可愛らしいお嬢ちゃんに何が出来るっていうんだ?」


 私は深く息を吸い込み、胸の奥に潜む魔力を静かに呼び起こす。


「何ができるか、見せてあげる」


 魔力を放出すると、大人たちが持っているナイフを包み込み、その手から奪って見せた。


「なっ!?」


 そのナイフを私の方に近づかせると、魔力でナイフを圧縮する。すると、ナイフは脆く崩れ去り、粉々になって地面に落ちていった。


「ナイフがっ!?」

「おじさんたちもこんな風にしちゃうよ?」

「そんな脅しに屈するとでも思っているのか!?」


 ナイフがなくなった大人たちは一斉にこちらに駆け寄ってきた。だけど、その体がピタリと止まる。私の魔力でその体の動きを止めているからだ。


「何っ……体がっ!」

「腕が変な方向に!?」

「いででででっ!」


 大人たちを全員地面に伏せさせると、腕を後ろにして関節を決める。すると、大人たちは悲鳴を上げた。


「腕がっ……折れるっ!」

「いでぇっ、いでぇよぉっ!」

「や、やめっ! いででででっ!」

「これで、分かった? 今度からランカに酷い事をしないで」

「ひ、ひぃ……わ、悪かった、悪かったって!」

「二度と傷つけないって誓える?」

「ち、誓う! もう何もしねぇ! だから、許してくれ!」


 私は彼らをじっと見つめた。小さな命を平然と踏みにじるような人間たち。許す価値があるのか、一瞬悩んだ。だけど、その選択をすると私もこの人たちのように落ちぶれてしまう。同類にはならない。


「次、同じことをしたら、今度は風じゃ済ませない。燃やすか、凍らせるか……」

「ひ、ひぃぃぃっ……!」

「わ、悪かったー!」


 私は手を叩くと、大人たちの拘束は解けた。すると、大人たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていく。


 これが抑止力になればいいけれど……。そう思っていると、肩を叩かれた。


「ありがとう。あたしは冷静じゃなかった」

「ううん。町の中で剣を振り回すのは、クロネの身が拘束されちゃうかもしれないから。それは、嫌だなって思ったの」

「……そうだよな。お陰で助かった。あのままだったら、首を刎ねていた」


 クロネが人殺しにならなくて、本当に良かった。私たちに出来る事はこれくらいだ。これで、少しはランカも暮しやすくなればいいのにな。

お読みいただきありがとうございます!

面白い!続きが気になる!応援したい!と少しでも思われましたら

ブックマークと評価★★★★★をぜひよろしくお願いします!

読者さまのその反応が作者の糧になって、執筆&更新意欲に繋がります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
完全焼滅してやればある意味『完全犯罪』になりそう 魔法で1500℃程度まで上げれば骨も灰になってしまうでしょ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ