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【書籍化決定】転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした  作者: 鳥助
第一章 捨てられたけど、万能な魔力があるお陰でなんとかなりそう!

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38.最上位種を倒せ!

 そこにいたのは、圧倒的な存在感を放つ巨体の魔物たちだった。


 筋骨隆々の体格に、金属鎧を無理やり着込んだような三体のゴブリンチャンピオン。その後ろには、細身ながら禍々しい魔力を纏ったゴブリンロードが立っていた。


「チャンピオンはBランク相当、ロードはBランクからAランクと個体よって振れ幅がある」

「強いっていうことね」


 そう言いながらクロネは立ち上がった。


「ユナのお陰で休憩が取れた。もう動ける」

「本当に? 無理してない?」

「こんなことでめげていたら、真の強さには辿り着けない」


 頼もしいけれど心配だ。でも、本人が大丈夫だって言っているんだから、信じないと。


「じゃあ、次は一緒に戦おう」

「あぁ。頼んだ」


 お互いに見つめ合って強く頷く。強敵が相手だから、二人で戦った方がいい。


 クロネは双剣を構えると、俊足にゴブリンチャンピオンとの距離を縮める。そして、目にも止まらぬ速さで双剣を振った。


 ガキン!


 だが、その双剣は大剣で受け止められてしまった。


「ちっ。意外と素早いな」


 一旦距離を取って、様子を窺うクロネ。私はどのタイミングで魔法を放つか考えていると、詠唱中のゴブリンロードが目に入った。クロネを狙っているみたい――危ない。


 ゴブリンロードが詠唱を唱えると、無数の氷の刃が空中に生成される。その氷の刃は素早い速度でクロネに向かっていった。


「そうはさせない!」


 私は魔力を高め、風の刃を放つ。風の刃は氷の刃に向かっていき、音を立てて迎撃した。なんとか、無数の氷の刃を撃ち落とすことが出来た。


 その間にも、クロネはゴブリンチャンピオンと戦っている。三体による素早い攻撃にクロネは避けるので精一杯。ここは、私が補助して上げなければ。


 火の矢を無数に生み出すと、ゴブリンチャンピオンの頭部に向けて放つ。風の効果が付与されており、目に留まらぬ速さで向かっていった。これなら、当たる!


 そう思っていたのに、火の矢はゴブリンチャンピンが振る剣によってかき消された。精度を意識して、威力を抑えめにしたのが悪かった。それにクロネがいるから、爆発も使えない。


 だが、クロネはゴブリンチャンピオンが見せた隙を見逃さなかった。


「《月影舞》!」


 クロネの姿がフッと消え、一瞬でゴブリンチャンピオンの背後に回る。次の瞬間、無数の斬撃がゴブリンチャンピオンを襲った。


 この隙、狙える!


 すぐに魔力を高め、爆発の威力を籠めた魔力を放った。これが当たれば! そう思っていた時、ゴブリンチャンピオンの背後から魔法が飛んできた。


 その魔法は私の魔法を撃ち落とし、誰もいないところで爆発をして消えた。ゴブリンロード……ちゃんと私の動きを察知して魔法を放ってきた。侮れない。


 だけど、ゴブリンチャンピオンには傷をつける事が出来た。そのお陰か、その動きは少し遅くなっているように見える。


 ゴブリンチャンピオンと周りをクロネが走り回り、確実に傷を増やしていく。そのせいか、ゴブリンチャンピンの苛立ちが高まり、その動きは大雑把に変わっていった。


 クロネ……凄い! あんなに戦った後なのに、そんな動きが出来るなんて。私も負けてられない!


 ゴブリンロードを見ると詠唱中だ。その視線はクロネに向かっている。だったら、詠唱が終わる前に――。


「いっけぇっ!」


 指に魔力を籠めて、光線をイメージする。すると、光線は光の速さで真っすぐ飛んでいき、ゴブリンロードの肩を貫いた。


「ギャァッ!」


 その攻撃で発動間近だった魔法が雲散した。これで、ゴブリンロードはまた詠唱から始めないといけない。その詠唱が完成する前に、ゴブリンチャンピオンに魔法を!


 空中に無数の火の矢を生み出し、風魔法を付与して、一斉に放った。私の意思が乗った火の矢は真っすぐ向かっていき、動きに合わせて軌道を変える。


 だが、その火の矢にゴブリンチャンピオンが気づく。豪快に剣を振り回し、火の矢をかき消そうとした――だが、その剣を火の矢は避け、その体に突き刺さった。


 途端にその体が小さな爆発が巻き起こる。クロネに当たらない程度の弱い爆発だ。その爆発の威力に体に大きな傷を付け、ゴブリンチャンピオンの動きが鈍くなる。


「ここだ!」


 その隙を見逃さず、クロネはゴブリンチャンピオンに飛び掛かった。クロネが空中に飛び上がった瞬間――一体の首が飛ぶ。


 空中でフッと姿を消し、しばしの静寂の後――残り二体の首が飛んだ。首を失ったゴブリンチャンピオンは地面に倒れ、動かなくなった。


「残りはロード!」


 姿を現したクロネが素早い動きで、ゴブリンロードとの距離を縮める。だが、その時すでに詠唱に入っていた。まずい、魔法が放たれる!


 間に合わないと判断した私は魔力の塊をクロネの前に飛ばした。それと同時にゴブリンロードの魔法が放たれる。稲妻が空中に走り、クロネに向かった。


 だが、私が放った魔力の塊が盾になり、その稲妻はクロネには当たらなかった。そして、クロネはゴブリンロードとの距離を一気に詰め――。


「《迅雷双刃》!」


 強烈な一撃がゴブリンロードに入った。その衝撃でゴブリンロードの体に穴が開く。


「ギャァァッ!」


 断末魔を上げ、その場にゴブリンロードは崩れ去った。この場に立っているのは私たちだけ。村を襲ってきたゴブリンたちはみな、地面に倒れ込んでいた。


 その時、クロネの腕が上がる。私に向かって親指を立ててきた。


「ユナ、補助に感謝」

「クロネも!」


 私たちはゴブリンの大軍を殲滅した。

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速さは強さだよ兄…姉貴!
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