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【書籍化決定】転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした  作者: 鳥助
第一章 捨てられたけど、万能な魔力があるお陰でなんとかなりそう!

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36.急げ!

「じゃあ、お嬢ちゃん。扉を開けるぞ」

「うん。私が出て行ったら、しっかりと閉めてね。あと、オルディア様の像への祈りも忘れないで」

「無事に戻って来るんだよ」

「大丈夫!」

「じゃあ、いくぞ!」


 村人が閂を取り、扉を勢いよく開けた。私は走って扉から出て、外に出る。すると、扉はすぐに閉められた。


 外に出てすぐに教会の周囲に視線を動かした。すると、教会の周りに青白いバリアみたいなものが張られているのが見えた。うん、オルディア様、ちゃんと働いているね。


 次に教会に襲ってきたゴルガンだけど……いた! バリアの中には入れずに、バリアに対して攻撃を仕掛けているようだ。


 数は全部で五体……。結構いるね。私一人でどうにかなるかな?


 ……クロネだって、一人で踏ん張っているんだ。私がやらなくてどうする!


 気合を入れると、声を張り上げる。


「こっちだよ!」


 すると、ゴルガンたちが手を止めてこちらを注視してきた。そして、一斉に飛び掛かって来る。


 私は即座に防御魔法を展開した。それを見た、ゴルガンたちが一気に距離を詰めてくる。そして、強靭な爪で引っかいてきた。


 だが、私に傷をつけられない。かなり強く防御魔法を展開したから、並みの攻撃は食らわない。


「次はこっちから!」


 私が右手を突き出し、魔力を放出した。想像するのは、炎の渦。イメージを魔力に伝えると、魔力が炎の渦になって、ゴルガンに襲い掛かる。


 だが、寸前のところでゴルガンが避けた。


「甘い!」


 だけど、そんなのお見通し。その魔法には追尾の機能がある。炎の渦は避けたゴルガンを追い、その体を飲み込んだ。


「ギャァァッ!」


 ゴルガンの体が炎の渦によって焼き尽くされる。これで、一体目。


 ゴルガンたちは素早く移動をして、攻撃をさけるつもりだけど……そうはいかせない。


 風の刃を飛ばすと、二体のゴルガンに向かっていく。ゴルガンたちはその風をジャンプで避けたが、それは追尾機能がある魔法。すぐに角度を修正して、ゴルガンたちの足を引き裂いた。


 足を切られたゴルガンが地に落ち、動きが弱まる。これを待っていた!


「いっけぇっ!」


 地面に魔力を通すと、一瞬で魔力はゴルガンたちの下に来た。そして――地面から鋭い石が飛び出して、ゴルガンたちを串刺しにする。


 ゴルガンたちは断末魔を上げ、動かなくなった。これで、残り二体。


 どちらも私の魔法の威力を見て警戒しているのか、距離を取って周囲をぐるぐると回り始めた。攻撃する隙を探っているようだけど、そんなことは無意味だ。


 一瞬、動きが止まったかと思うと、同時に襲い掛かってきた。とても素早い動きに私は避ける事が出来ない。でも、それでいい。


 ゴルガンたちが爪で連続攻撃を仕掛けてきた。だが、どの攻撃も私の防御魔法を打ち破るには至らない。


 両手から魔力を放出させると、その魔力でゴルガンたちを包み込み――その体を魔力の圧力で宙に浮かばせる。


 ゴルガンたちはジタバタともがくが、私の魔力に捕まって逃げる事が出来ない。そのゴルガンたちの背後に氷の刃を生成すると、それを勢いよくゴルガンの頭部に突き刺した。


 避ける事も出来ず、ゴルガンたちはその攻撃で絶命する。動かなくなったゴルガンを地面に放りだし、周囲を確認した。


 援軍のゴルガンはいないみたい。だったら、教会から離れても大丈夫だろう。もし、ゴルガンたちが襲い掛かってきても、オルディア様のバリアがあるから大丈夫だ。


「待っていて、クロネ!」


 心配で堪らなかったクロネの下に行ける。私は精一杯体を動かして、クロネがいるであろう森の入口まで急いだ。


 ◇


 森の近くまで行くと、小さいけれどゴブリンたちの声が聞こえている。ゴブリンたちは村の中まで入ってきておらず、その姿は見えない。


 きっと、クロネが一人で引き付けてくれているお陰だろう。あれから、一時間以上経っているけれど、クロネは大丈夫だろうか?


 言いようもない不安を抱えながら、クロネがいるであろう場所に急いだ。


 そして、森の入口に辿り着くと――その異様な光景に目を見開いた。


 差し込む月明かりが、地面に転がる夥しい数の影を照らしている。そのすべてが、ゴブリンの死体だった。


 足元から視線を上げると、地面一面に広がる死体の山。いや、山と呼ぶには余りにも広大だった。場所によっては二重三重に重なり、切り離された顔や、引き裂かれた胸、千切れた四肢が無造作に転がっている。


 地面は、血で黒く濡れていた。赤黒いぬめりが一面に広がり、どこまでが土で、どこからが肉片なのか判別できない。鼻をつく鉄臭さと、焼け焦げたような匂いが入り混じり、息をするたびに胸の奥がざわついた。


 ――その中にクロネが立っていた。


 月明かりに照らされたその姿は、まるで獣そのものだった。


 黒く髪はところどころ血に濡れ、風にゆれるたびにべったりと音を立てそうだった。瞳は鋭く細められ、牙をむき出しにし、まるで次の獲物を探す獣のようにぎらついている。


 血と殺気に染まった少女――その姿は、私の知る穏やかで優しいクロネではなかった。


 けれど、私は知っている。


 彼女は私たちを守るために、たった一人でこの地獄を作り出したのだ。


 その地獄に私は躊躇なく飛び込んでいった。

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