31.ゴブリン駆除の依頼
領主様の屋敷を訪れた後、私たちは冒険者ギルドへとやってきた。
「えーっと……あっ! これじゃない? 噂の真相を突き止めるって書いてある」
「そうみたいだな。でも、今は任務遂行者が多いため受付は中止しているみたい」
「じゃあ、沢山の人が動いてくれているんだ。だったら、安心だね」
「まぁ、そいつらが見つけられればの話だけど……」
クロネは厳しいなぁ。どれだけの人がこの依頼に携わっているか分からないけれど、受付が中止になるくらいなんだから、きっと多くの冒険者が受けてくれたに違いない。
町の中で多くの冒険者が動いてくれているのなら、きっとこの件は解決に近づいているはず。
「この件はまだ私たちの出る幕じゃないね。じゃあ、予定通りにゴブリンの討伐をする?」
「それがいい。魔物が増えているっていうことだから、きっとゴブリンも増えている。数をこなしたいユナにとっては絶好の相手になる」
「苦手を克服出来ればいいなぁ。ゴブリンの依頼は……あっ、これじゃない?」
クエストボードに貼られた紙を見ると、ゴブリンの文字が目に留まった。
「ふーん。村の周辺にゴブリンたちが増えたから、その討伐の依頼みたい。依頼者は……男爵か。上手くすれば褒章メダルが貰えるかもな」
「本当? それなら、これを受けたいなぁ」
「じゃあ、これにしよう。ゴブリンの数も多いみたいだし、丁度いい」
クロネは紙を剥がすと、早速受付のカウンターに近づいた。
◇
受付を済ませた後、私たちはすぐに村へと向かって出発した。村までは歩いて原付バイク……いや、ホバーバイクに乗って丸一日ほど。途中で一泊野宿をしながら、道のりを進んでいく。
そして、お昼前に私たちは目的の村へと到着した。
「ここが依頼にあった村か……のどかだね」
「普通の村だな」
村は木造の家が並ぶ、小さな集落だった。ホバーバイクを降りて歩いていると、畑仕事をしていた人々が私たちの姿に気づいて手を止め、こちらを見ている。
こんな村に小さな子供が来るのが珍しいのだろう。まずは挨拶が肝心だ。
「こんにちは! 男爵様のお家はどこにあるか知っている?」
「あぁ、知っているが……。何しにここに来たんだ?」
「ゴブリンで困っているんだろう? その駆除に来た」
「駆除って……子供が?」
「ん」
話を聞いて不思議そうな顔をしていた村人にクロネは冒険者のタグを見せる。
「それは、Bランクの証!」
「それで、男爵の屋敷は?」
「男爵様の屋敷はこの道を真っすぐいった突き当りにある、大きな屋敷だ。きっと、一目で分かるだろう」
「ありがと。じゃ、行こう」
私たちは案内の通りに道を進んでいく。その途中で気づいたことは、外にいる村人が少ないということだ。子供の姿も見せないし、どうしたんだろう?
気になってキョロキョロと見渡していると、家の窓から子供がこちらを覗き込んでいる姿が見えた。その子供が手を振ったので、こちらも手を振り返す。
どうやら、子供は家の中にいるらしい。もしかして、増えたゴブリンを警戒して家の中にいるのかな?
そんな事を考えていると、目の前に大きなお屋敷が見えてきた。きっと、あれが男爵の屋敷だ。私たちは外で掃除をしていたメイドに話しかけた。
◇
「まさか、Bランクの冒険者が来てくれるとは思ってもなかったよ!」
男爵様は私たちを歓迎してくれた。始めは子供が来て戸惑っていたけれど、冒険者のタグを見せると態度が今のように豹変した。
テンションが高い男爵に向かって、クロネが冷静に質問をする。
「それで、困っていることはゴブリンが増えた事?」
「そうなんだ。森で見かけるゴブリンが増えて、森に入るとすぐに襲い掛かって来るようになってきた。なぜか、森からは出てこないから今のところ被害はない」
「ゴブリンが森を出て襲って来ない? ……変だ。ゴブリンなら平気で森を出て、畑作業をしている村人に襲い掛かったり、家畜を襲ったりする」
へー、そうなんだ。ゴブリンについては詳しく知らないから、クロネの話がとてもためになる。
「しばらく森に行ってないから、どれだけ増えたか分からない。確認することも出来なかった」
「現状は分からないということか。分かった、現状の確認も含めてこちらでする。あとは、こちらに任せろ」
「Bランクの冒険者が来て助かった。これなら、なんとかなりそうだ。この村には宿屋がないから、ぜひウチに泊ってくれ」
「助かる。じゃあ、早速調査に行ってくる」
「あぁ、任せた」
話はそれで終わり、私たちは一旦屋敷を出ることになった。
◇
「これから、森に調査に入る」
「どれだけゴブリンがいるか確認するんだね」
「それもあるが、出てきたら問答無用で倒していこう。あたしは前でゴブリンたちを引き付けておいて、その間にユナが魔法で退治すればいい。魔法の扱い方を鍛えたいんだろう?」
あっ、クロネはちゃんとその事を覚えていてくれてたんだ。えへへ、なんだか嬉しいな。
「私の事を考えてくれてありがとう」
「……別に。ユナが強くなったら、あたしと修行をする時にあたしも強くなれるから」
「えー、本当にそれだけー?」
クロネの本心が知りたくて踏み込んでみると、クロネがプイっとそっぽを向いてしまった。
「……ほら、行こう。前は私が行く。ユナは後ろに」
「はーい」
はぐらかせられたけど、クロネが自然と私を気遣ってくれるのが嬉しくなる。このクロネの期待に答えるためにも、魔法の操作頑張らないとね!
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