21.罪の意識(笑)
「うわぁ、本当に出来ちゃったよ……」
私の手のひらには数枚の金貨がある。これは本物のお金じゃなくて、私の魔力の変異で出来たお金だ。
つい、好奇心に負けて作っちゃったけど、流石にこれは使えないよね。ここは大人しく、クロネからお金を借りたほうがいいのかもしれない。
「ん? なんだ、お金ならあるじゃないか」
「えっ、やっ、こ、これは!」
「ほら、行こう」
クロネは私の手を掴んで、門番がいる所に近づいた。
「ようこそ。証明書の提示か通行料で仮証明書の発行が出来るが、どちらにする?」
「あたしはギルド証で。この子は通行料で」
そう言って、クロネは私が止める暇もなく出来立ての金貨を門番に渡した。あわわ、だ、大丈夫?
震えて待っていると、門番は顔を顰めた。やっぱり、偽物だって分かってる!?
「……金貨しかないのか?」
「そ、それしか作ってないです!」
「作る? まぁ、これしかないなら仕方ないか。ほら、おつりと仮の証明書だ」
そう言って、門番は革袋の中から沢山の銀貨と証明書を出して手渡してきた。……へっ、偽物だって分かったんじゃ……。
「ほら、早く入った入った」
「ん。行こ」
「えっ、ちょっ」
私がボーッとしていると、門番が急かし、クロネが私の手を引っ張る。私は受け取った銀貨を落とさないようにしっかりと握り、門を潜っていった。
そして、門を潜ったところで事態を把握した。私……作ったお金で町に入っちゃった!
「クロネ、どうしよう! 私、偽物のお金を作っちゃったかも!」
「偽物? あの門番はそんな素振りはなかった」
「きっと、精巧に出来ちゃったんだよ! ど、どうしよう……。この事が知られたら、私……投獄されちゃうかも?」
考えれば考えるほど悪い展開が頭をよぎる。やっぱりおかしいと思った門番が金貨を調べると……魔力で出来た金貨だって知る。これは犯罪だ! って気が付くと、私が指名手配される。
そして、この町に私の似顔絵が描かれた紙が沢山貼られて、私は賞金稼ぎに狙われるように!
「どうしよう! 賞金稼ぎに捕まっちゃう!」
「どうしてそうなった!?」
「あーん! 私が捕まっても、クロネは会いに来てね!」
「だから、どうしてそうなる! ユナは悪人じゃない!」
「私を置いて先に行かないでー!」
「誰も置いていかないから! まずは詳しく話をして!」
泣き叫ぶ私をクロネが宥めてくれる。だから、今回の事をより詳しくクロネに伝えた。すると、クロネは――
「あのお金はユナの魔力で作ったのか」
「どうしよう、私……偽物のお金を作ったかもしれないよ!」
「でも、あの金貨は本物だった。門番の人も気づいていなかった」
「バレたら……」
「あれをユナが魔力で作ったって言った方が誰も信じないと思う。だから、誰かに言いふらしたりでもしなければ大丈夫じゃないか?」
ど、どうしてクロネはそんなに落ち着いていられるの!? これは本当に大変なことで、私は大変な犯罪を!
「ユナはあのお金を使って悪い事を考えていないから大丈夫だ。それに、門番にお金を渡したのはあたしだ。あたしも半分悪い」
「えっ、じゃあ! これがバレたらクロネも一緒に捕まっちゃう!」
「全然いい。気にしない」
いや、私が気にするよ! クロネのためにも、ここは黙っておいた方が……! でも、凄く罪悪感!
ハッ! こういう時は神様に懺悔をするんだ!
私は胸に手を当てて、神様に懺悔をする。
神様……私はお金を作ってしまいました。それだけじゃなく、それを使ってしまいました。私はとても罪深いことをー!
『あららー、そうなの?』
そうなんです! だから、私は罰せ……えっ!? こ、声が!?
『やっほー。懺悔をする声が聞こえて、出てきちゃいました』
って、えぇーーっ!! オルディア様ーーーっ!?
『ユナみたいに純粋な心の持ち主の懺悔はとても好物……いやいや、とても辛いことでしょう』
今、私の懺悔の気持ちを食い物にしようとしてませんでした?
『いいえ、純粋な気持ちを思うと私の胸が張り裂けそうでした』
……なんか、取ってつけたような言葉ですね。
『ユナの懺悔……私が聞き届けました』
話、流そうとしてません?
『ユナに無限の可能性を秘めた魔力を授けたのは、私。ユナの力は神の力に等しいでしょう。神の力は何よりも尊重されるものです。だから、ユナが行使した魔力には何も罪はありません』
なんか、凄く強引な論理! ……論理?
『ユナは犯罪に使う事を考えていないし、それで金儲けをしようと思っていないから、平気だって事』
でもでも! 私、作ったお金を使っちゃいました! これは凄く悪い事じゃないですか!?
『使ってしまったのなら仕方ありません。では、ユナの罪を軽くするように神の罰を与えましょう』
罰……。それで私の罪が軽くなるなら、望んで受けさせていただきます。
『では、いきますよ』
手をギュッっと握り込んで、目を瞑った。その時、額に小さな衝撃が走る。
「いたっ!」
『今、ユナを罰しました。デコピンの刑です』
デ、デコピン?
『はい、これでユナの罪はなくなりましたー。良かった、良かった!』
えっ、神の罰ってこれだけ?
『これでユナの心が軽くなりましたね。じゃあ、そういうことで!』
ちょ、あの……オルディア様? ……オルディア様!?
「オルディア様ー!?」
はっ、つい声に出してしまった! 恐る恐る、クロネを見て見ると――
「……ユナ」
物凄く引いていらっしゃる! まるで、不気味なものを見るかのように私を見ていらっしゃる。
「凄く色んな顔をしてた。何かに憑りつかれたんじゃないか?」
「いや、今のはちょっと神様と話していただけで……」
「やっぱり! 何かに憑りつかれている! 教会に行こう!」
「ちょっ、待って!」
クロネに手を引っ張られて、町の中に入っていく。いや、クロネ……話を聞いて!
オルディア様のせいで面倒な事になった! こっちの方が神の罰だー!
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