20.町に到着
「クロネ! 怪我はなかった?」
「あぁ、なんでもない。ユナのお陰で戦闘に集中できた」
「ううん、いいよ。でも、私はあんまり倒せなかったなぁ」
「その内、慣れてくるさ」
戦闘終了後、クロネに駆け寄って無事を確認した。怪我がないようでホッとした。
「君たち、助けてくれてありがとう」
そんな私たちに護衛のお兄さんが近づいてきた。
「そっちは無事?」
「あぁ、大丈夫だ。君たちが助けてくれなかったら、危ない所だった」
「なら、いい。じゃ、そういうことで……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 今、お嬢様に確認をしているところだ?」
立ち去ろうとするクロネをお兄さんが引き留めた。一体、何を確認しているのだろう? 気になって馬車の方を見て見ると、もう一人のお兄さんが馬車の中の人と話しているみたいだった。
話が終わると、そのお兄さんはこちらに近づいてくる。
「君たちに話したいことがあるそうだ。こちらに来てもらえるか?」
「……まぁ、いいよ」
「うん」
話ってなんだろう? 私たちはお兄さんに連れられて馬車に近づくと、馬車から誰かが出て来た。それは貴族のドレスを纏ったお姉さんだ。
「まぁ! 本当にこの子たちが助けてくれたの?」
私たちの姿を見るなり、そのお姉さんは驚いた顔をした。
「えぇ。この子たちが助けてくれなければ、今頃我々はやられていたでしょう」
「そうなので。あなたたち、私たちを助けてくれてありがとう」
「……別に」
「どういたしまして!」
「ふふっ。こんなに可愛らしい子たちが凶暴な魔物を倒しただなんて思えないわね」
お姉さんはクスリと笑ってそう言った。まぁ、普通は思わないよね。こんな小さな子供が沢山の魔物を倒しただなんて。
「それで、あなたたちに褒美を授けたいのだけれど……生憎、私は友達の所から帰ってきているところで何も差し上げるものがないの。だから、この手紙を託すわ」
そう言って、お姉さんは私たちに一通の封筒を手渡してきた。
「その手紙をリオストール子爵家の門番に渡せば、屋敷に案内することが出来るわ。褒美はその時に授けたいと思うのだけれど、それでいいかしら?」
「それでいいよ」
「うん」
「そう、ありがとう。この道を辿っていけば、リオストール子爵家が治めている町に着くわ。それでは、私たちは先に行って待ってますね」
「あたしは冒険者だから、そこの倒したオークを整理してから行く」
「分かったわ。ありがとう、小さな冒険者たち。絶対に我が家に寄ってね」
そう言うと、お姉さんは馬車の中に戻った。
「君たち、屋敷で待っているよ」
「じゃあな」
すると、騎乗したお兄さんたちも声を掛けてきた。馬車はゆっくりと動き出し、道を進んでいく。
「じゃあ、オークを回収しよう。冒険者ギルドに持ち込めばお金にもなるし、功績にもなる」
「そうなんだ! じゃあ、残さず回収しないとね」
馬車を見送ると、私たちはオークをマジックバッグに回収した。それから、近くにあるという町へと向かっていく。
◇
道を進んでいくと、遠くに人工物が見えてきた。遠くからでも分かるが、それは大きな壁に囲まれている町だということが分かる。
「あそこが町かー!」
「とうとう、着いたな。町なんて久しぶりだ」
「へー、どれくらい?」
「ひと月くらい」
えっ。クロネってそんなに町にいなかったの? ということは、それまでずっと野宿? 結構過酷な状況に身を置いていたんだなぁ。
「じゃあ、しばらくは町でゆっくりする?」
「修行がしたいから、冒険者ギルドの依頼を受けようと思う。お金もないと困るし」
「クロネは本当に修行続きだね」
「でも、一番はユナと戦った方が修行になりそう。町に着いたら、ユナとも戦う」
「えー、私と?」
クロネは目をキラキラさせてこちらを見てくる。わ、私……そんなに強くないから、練習になるか分からないなぁ。でも、クロネの期待には応えたいな。
「じゃあ、しばらくは町で過ごして、クロネは修行だね」
「一番の目的はユナの冒険者登録」
「そうだね。町に着いたら、冒険者登録からしようか」
そんな事を話しながら、原付バイクをマジックバックに収納して町に近づいていく。門の所では門兵が一組ずつ何やら確認作業をしているみたいだった。
「あれは何をしているの?」
「町に入れる証明書とかを確認している」
「もし、無かったら?」
「お金を払って、仮の証明書を発行する」
「へー、そうなんだ。お金……ハッ!」
ま、待って! 私、無一文じゃん!
「ど、どうしよう! 私、証明書もなければお金もない!」
「……あ」
「わー、どうしよう! 私だけ町に入れない? クロネはどうやって入るの?」
「あたしはギルド証を出せばいい」
そっか、クロネはそれを提出すれば入れるんだ。じゃあ、私はどうやって中に入ったらいいのー!?
お金、お金が欲しい! 入手手段は……。
そこまで考えると、あるひらめきが降りてきた。……魔力の変異でお金が作れるんじゃない?
いや、でも……それはダメだよ! もし、それをやったら無限にお金が作れるってことになるんじゃない!? そんな悪い事をしたら、したらっ!
……ちょっと、試してみよう。手に魔力を貯め、意識を集中してお金をイメージする。すると、魔力が変異して私の手のひらの上に数枚の金貨が現れた。
ど、どうしよう……本当に出来ちゃった! でも、これって本当に使えるのかな? ……ちょっとだけ、試してもいいかな?
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