19.集団オーク戦
「おい! こっちにもいるぞ!」
オークの集団の後ろに立つと、クロネが声を上げて注目を集めた。オークは新しく現れた獲物に興奮した様子でいきり立つ。
「オークを引き付けておく。ユナは先にやられていた人達の保護を頼む」
「うん、任せて」
それが先決だろう。クロネはそれを言い終わると、オークの集団に立ち向かっていった。
クロネがオークを引き付けている内に、やられていた人達を保護しなくっちゃ。でも、どうやってオークを抜けて、その人達の所にいこう?
あの場に転移が出来れば……。そうだ! クロネの服を脱がしたあの魔法を使えばいいんだ。
じゃあ、早速その人達の傍に魔力を飛ばして……転移!
魔力にイメージを籠めると、私の居場所が一瞬にして変わった。視界は変わり、やられていた人達の近くまで一瞬で移動出来る。
「なっ……どこから!?」
「くっ、敵か!?」
すると、鎧を来たお兄さんが驚いた顔をしてこちらを見た。
「大丈夫、味方だよ。今、みんなに防御魔法を掛けるね」
馬車が一台、馬が二体、護衛らしきお兄さんが二人。それら全部に魔力を被せて、防御魔法に変異させる。
「これは! ありがたい!」
「助かった!」
傷ついたお兄さんたちはとても嬉しそうな顔をした。本当は傷を癒してあげたいけれど、面倒な事になったら大変だから今は回復しない。
「少女よ、あとは俺たちに任せろ」
「この防御魔法があれば、オークの集団なんて……」
「無理をしないで。仲間が戦っているし、私も一緒に戦う」
「戦える……のか?」
「ありがたい申し出だが……大丈夫か?」
「まだそんなに経験はないけど、初めてじゃないから大丈夫!」
気合を入れた姿を見せると、お兄さんたちはちょっと困惑した表情になった。
「なら、よろしく頼む」
「無理はしなくてもいいぞ」
「うん!」
よし、これで一緒に戦っても大丈夫になったね。じゃあ、オークの集団は……。そう思ってオークの集団を見ると――
「ふっ!」
「ブモォォッ!」
華麗に飛び回ってオークの攻撃を避けるクロネの姿があった。オークたちは連係を取り合い、休むことなくクロネに攻撃を仕掛けるが、どれも当たっていない。クロネ……凄い!
はっ! 見惚れている場合じゃなかった!
「クロネ、準備は完了だよ!」
「分かった」
合図をすると、すぐにクロネが双剣を握る。地面に着地すると、その姿が消えた。その次の瞬間――
「ブモォォッ!」
一体のオークが鮮血で濡れた。オークがゆっくりと膝から崩れ落ち、地面に横たわった。一瞬で同胞がやられたことに他のオークは動揺し始める。
攻撃の手を緩めたオークに向けて、クロネは手先を手前にクイクイと動かす。
「弱いから、まとめて掛かってこい」
ふっ、と笑ってオークたちを挑発した。その舐めた態度にオークたちは雄たけびを上げて、怒りを露にする。そして、一斉にクロネに向かっていった。
「そうはさせない!」
「俺たちもいるぞ!」
そこに護衛のお兄さんたちも加入して、乱戦状態になった。乱戦状態になったことで、私の方にはオークの注目がない。ということは、魔法を乱射し放題だ。
手を向けて魔力を魔法に変えようとすると、そこで気づいた。乱戦状態になっている所に大きな魔法を放ったら、クロネたちが危ないということ。
ど、どうしよう! これじゃあ、私の魔法がクロネたちに当たっちゃう! クロネたちに当たらないようにするにはどうしたらいいかな?
考えている間にもクロネは次々とオークを屠っていく。その数はいつの間にか半分にまで減り、状況は好転していた。
これじゃあ、何もできないまま終わっちゃう! クロネたちに当たらないように、離れたオークを狙って……。
宙に浮かべた魔力を鋭い氷に変異させると、オークの頭を狙って放つ。真っすぐ飛んでいった鋭い氷はこちらに気づかないオークの頭に突き刺さった。その衝撃で、オークは横倒しに倒れる。
よし、一体ずつならクロネたちに当たらない! 私は次々に宙に鋭い氷を生成すると、オークの頭目掛けてそれを放つ。
オークたちは全く私に注意がいっていないので、攻撃は不意打ちになっていた。一体、二体……次々と倒していき、最後の一体を――
「ふんっ!」
「ブモォォッ!」
オークに飛び掛かったクロネが首を刎ねて倒した。最後のオークの体がずしん、と地面に横たわるとその場には静寂が降りた。
戦闘終了だ。
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