表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定】転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした  作者: 鳥助
第四章 ロズベルク公爵領

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

140/144

140.簡単には終わらない

「やったぁ!」

「……当然」

「ランカたちの勝ちだ!」


 バルドルの宣言に、私たちは思わず抱き合って歓声を上げた。背後ではオルディア教の仲間たちも喜びの声を上げている。


 これで、あの教会は守られた。人々の祈りの場を、私たちはちゃんと取り戻したんだ。


「こ、こんなの認めませんわ!」


 歓声の中に、甲高い声が割り込んだ。振り向くと、顔を真っ赤にしたカリューネ教のレイナが、こちらへ詰め寄ってくる。


「獣化がいるなんて、卑怯です! そんなの、反則ですわ!」

「別に獣化を禁じた覚えはない。戦いとは、持てる力を尽くすものだ」


 バルドルの低い声が響く。だが、レイナは納得しない様子で、唇を噛みしめながらさらに言い募った。


「だったら、次は! 次こそは純粋な人間の力だけで勝負ですわ! そうでなければ不公平です!」

「ランカの獣化は卑怯じゃない!」

「……負け惜しみが過ぎるな」


 隣でランカが抗議の声を上げ、クロネが呆れたように肩をすくめる。その様子に私も黙ってなんていられない。


「不公平? おかしいのはそっちじゃないの?」


 私は一歩前に出て、静かに言葉を返した。


「そもそも、ルールを決めたのはあなたたち。私たちはその条件で戦っただけです。それで負けたからといって、今さら文句を言うのは違うでしょう?」


 レイナの顔がさらに紅潮する。周囲の空気が少しピリッとした。勝利の余韻が、彼女の怒声で一瞬かき消される。


「黙りなさいっ! カリューネ教は国教として認められたもの。本来なら人々の信仰を導くのは私たちなんですよ!」


 往生際の悪いことに、まだ諦めていないみたいだ。私達に厳しい視線を向けていたが、バルドルに視線を向けると妖艶な笑みを浮かべた。


「ねぇ、バルドル様もそう思いますよね? 本当ならバルドル様もカリューネ教に変えたいんじゃありませんか? だったら、この決闘は無効でいいですわよね?」


 バルドルの体をそっと触り、頭を傾ける。本当ならここでバルドルはデレるはずなのだが――。


「いや、決闘は決闘だ。その結果は守られるべきものだ」

「なっ!? で、でも! カリューネ教に変えないと、国から色々と言われますわよ!」

「地方の統治はその公爵家に委ねられている。そんなものはどうとでもなるわ」

「くっ……どうなっても知りませんわよ!」


 良かった、バルドル様は結果を重んじてくれている。これならば、オルディア教が出て行く必要はない。


 レイナは顔を歪めると、バルドルから離れていった。そして、カリューネ教の一団と合流する。


「お前たち、よく頑張ったな。しかし、ちびっ子たちがこんなに強いだなんて思いもしなかったぞ」

「心配ご無用でしたね」

「ランカたちは強い! 友達だから!」

「沢山修行したから、勝てたんです」


 バルドルはこちらに近寄って、私達の頭を順々に撫でていった。認めてもらったこの瞬間が何よりも嬉しい。


 すると、離れたところで控えていたオルディア教の一団もやってきて、私達はもみくちゃにされた。みんなから感謝をされて、とてもいい気分だ。


 その中でもランカは少し戸惑った様子だ。あんなに喜んでいたのに、いざ感謝をされるとどうしていいか分からない、と言った様子だ。


「ランカ、こういう時は素直に喜んでいいんだよ」

「そ、そうなの? なんか、くすぐったくて……」

「ランカがいなかったら、勝てなかった。ランカは胸を張っていい」

「わー! そう言わないで! そう言われると、もっとくすぐったくなるよー!」


 クロネが素直にランカを褒めると、ランカは恥ずかしそうに耳を押さえて体を縮こませた。その可愛らしい様子に私達は笑い合った。


 これで、終わりだと思っていた。


 その時、上空から異様な気配を感じ、私達は空を見上げた。すると、空には黒い靄のものが広がっている。


「あれは……なんだ?」

「雲? それにしては、黒いが……」

「何か、嫌な感じがします……」


 見守っていると、その黒い靄の中から――魔物が現れた。


「魔物!? どうして!?」

「次々と現れているぞ!」

「どういうことだ!?」


 黒い靄からは次々と魔物が生まれ、町の上空を覆いつくさんとする様子だ。


 どうして、今になってこんなことが……。もしかして、カリューネ教がまた何かをした? 魔物と繋がっているカリューネ教の事だ、決闘で負けたからと何かを仕掛けてきたに違いない。


 カリューネ教の一団を見て見ると、こちらに近寄ってきた。すると、戦闘のレイナが口を開く。


「大変です、魔物が現れました。この状況をオルディア教はどうにか出来ますか?」

「……そ、それは」

「こんな事態になっても何も出来ないようなら、この町にオルディア教は必要ありません。バルドル様、考え直して下さい。町を守る事が出来るのは、我々のカリューネ教だと言う事を」

「うぅむ……」


 なおもカリューネ教が必要だと主張するレイナ。司祭はどうしようか困惑し、バルドルは困ったように腕組をした。


 ……この様子、絶対にカリューネ教が仕組んだことに決まっている。リーネラ子爵領で起こった、万の大軍の魔物もカリューネ教が用意たもの。だから、今回の魔物もカリューネ教が仕組んだことだ。


 思い通りにはさせない。


「私に任せてください!」


 声を張り上げて、主張した。この状況を覆す手はある。誰も傷つけないで終わる手段が。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
すぐに戦う力がある者達を集めよう! 迎撃するぞ!
ついに、使徒ユナたんの、真価が明らかになるとき!
( ¬_¬ )チッ 玉潰しは延期! それじゃ次はお前の出番だ ???『私は分体だし、ここから出られないんですけどぉ?』 ティンタクル「神(作者様)が導いてくれるさ」 ゴリ(そういえば体型の事は文句言っ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ