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【書籍化決定】転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした  作者: 鳥助
第四章 ロズベルク公爵領

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138.決闘日

 オルディア様の像の前に膝をつき、両手を胸の前で組む。静寂の中、前に立つ司祭がゆっくりと両手を広げ、深く息を吸い込む。聖堂の空気が、張り詰めるような静けさに包まれた。


「――偉大なる光の神、オルディア様」


 司祭の声が厳かに響く。


「ここに跪く三人は、あなたの加護を信じ、あなたの御名のもとに戦いへと赴く者たちです。どうかその勇気を讃え、正しき道を照らしたまえ」


 両手を高く掲げると、柔らかな光が司祭の掌に宿った。それはまるで、天から舞い降りる祝福そのもののようだった。


「光は恐れを祓い、闇を退ける。この者たちの心に、真実と慈愛の力を与えたまえ――」


 司祭が静かに祈りの言葉を重ねると、その光はふわりと揺らめき、私たち三人の上に降り注いだ。頭から肩へ、胸の奥へと染み渡るような温もり。心の奥で、何かが静かに灯る。


「オルディア様の名において、汝らに祝福を授ける」


 司祭の声が低く響き、光がひときわ強く瞬いた。


「恐れるな。正しき信念をもって進む者に、オルディア様の加護は常にあらん」


 その言葉とともに、光がゆっくりと消えていく。残ったのは、温かな余韻と、胸の奥に確かに宿った勇気の火。


 私はそっと目を開け、隣の二人と視線を交わす。二人とも覚悟をした顔つきをして、強く頷いた。この祝福があれば、私たちは決闘に勝てる。


 「さぁ、皆で三人に勇気を与えるのです!」


 司祭の力強い声が聖堂中に響き渡った。その瞬間――


「オルディアの加護を!」

「勝利を掴め!」

「あなたたちに全てを託します!」


 信徒たちの間から一斉に歓声が上がる。手を掲げる音が重なり合い、聖堂の空気が一気に熱を帯びた。


「我らの勇士たちに栄光あれ!」

「オルディア様が見守っておられる!」

「必ず勝てる! お前たちは我らの誇りだ!」


 老若男女問わず、誰もが立ち上がり、両手を高く掲げて声を張り上げる。信徒の中には涙ぐむ者もいて、祈りと歓声が混ざり合い、聖堂全体がひとつの熱狂に包まれていった。


 「勇気を!」「光を!」という声が何度も何度も繰り返され、足元が震えるほどの熱気。私たち三人は、その中央で静かに立っていた。心臓が高鳴る。けれど、不思議と恐怖はない。


 この声、この想いがある限り、きっと負けない。隣の二人が小さく頷き、私もそれに頷き返す。司祭が最後に両手を掲げ、荘厳な声で叫んだ。


「オルディアの勇士たちよ! 光の導くままに、勝利を掴むのです!」


 歓声が一段と大きくなり、私たちはその熱気を背に、ゆっくりと聖堂を後にした。背中に感じるのは、無数の祈りと期待――まるで、神と人々のすべてが、私たちを押し出してくれているようだった。


 ◇


 決闘の場は町の一角にあるコロッセオ。その戦の場に私たちは集まった。


「ふむ、みな集まったようじゃな」


 この場を取り仕切るのはバルドル。私たちオルディア教の一団とレイナ率いるカリューネ教の一団が向かい合う。


「これより、オルディア教とカリューネ教の間における決闘を執り行う!」


 バルドルの声は重く、そしてよく通った。誰もが息を呑み、視線を彼に集める。


「この場においては、双方の代表者三名が戦いに臨む。勝敗は降伏、戦闘不能、または審判による判定で決するものとする」


 バルドルは両者を見回し、真っ直ぐな目で言葉を続けた。


「勝者の信仰は、神々の加護によって証明される。敗者は潔くその結果を受け入れよ。この場での争いは、いかなる理由があろうとも神聖なる決闘として扱う。ゆえに、私情の持ち込みを禁ず」


 厳しいバルドルの言葉を受け、身が引き締まる思いだ。


「両者、何か言う事はないか?」


 その言葉にレイナが一歩前に出た。


「今からでも遅くないですわ。あなたたち子供が戦って勝てる相手じゃありませんわよ」


 人を見下すような視線を向けてきた。だけど、それに怖気づくような心ではない。


「誰が何と言おうとも、私たちが絶対に勝ちます」

「ふふっ、そう言っていられるのも今の内よ。私たちの決闘者に勝てるかしら?」


 レイナの言葉に後ろで控えていた、決闘者が前に出る。筋肉隆々の大柄な男性が二人、細身で魔導師の姿をした男性が一人。


 その人達が私たちを見て、鼻で笑った。


「オルディア教はそんな子供しか出せないとはな。笑っちまうぜ」

「泣いて降参するのが目に見えている」

「負けるなら今の内ですよ」


 三人ともニヤニヤと笑って、私たちを見下していく。まぁ、見た目だけで判断するとそうなるのは分かる。だけど、私たちは見た目以上には強い。


「そっちこそ、見くびっていると痛い目みるよ」

「あたしらが勝つ」

「絶対に負けない!」


 その気迫に負けないように私たちも睨み返す。すると、その三人は明らかに不機嫌そうな顔をした。子供にこんなことを言われたのだから仕方がない。


 お互いに睨み合うと、それぞれの一団に戻っていった。すると、司祭が心配そうな顔をして話しかけてくる。


「三人とも、よろしくお願いします。オルディア様も力を貸してくれることでしょう」

「はい。きっと、オルディア様が力を貸してくれると思います」

「あたしは別に……」

「ランカ、いつも以上に強くなる? だったら、楽勝!」

「本当に頼もしいですね。では、私たちは端で見守っています。オルディア様のご加護がありますように……」


 そう言って司祭たちは私たちに祈りを捧げてくれた。そのお陰で体中から力が漲ってくる。


 それぞれの一団がコロッセオの端に移動して。中央には決闘者の私たちとバルドル様が残った。そのバルドル様が私たちに声をかけてくる。


「お前たち、本当に大丈夫か?」

「大丈夫です! 見ててください、私たちが勝ちますから!」

「問題ない」

「ランカたちが勝つよ!」

「……どうやら、引かないようだな。だったら、わしはその覚悟を見届ける。精一杯にやりなさい」


 バルドル様の激励を受けて、私たちはやる気を漲らせた。


「では、これより決闘を執り行う! 両者、定位置へ!」


 とうとう、決闘が始まる。

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― 新着の感想 ―
オルディア様の観戦中継希望〜
メテオがダメなら飯テロアニメでちょっと負けたベビちゃんを暴走させようぜ‼️ ティンタクル「モンスターハザードなら問題ないな」 ゴリ「代表選手は6人だから公平に3ダース送り込めば良いよな」 ???『だ・…
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