表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定】転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした  作者: 鳥助
第四章 ロズベルク公爵領

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

133/143

133.暇なオルディア様

「今日はウチに泊まっていくじゃろう?」


 クロネとランカのやり取りを微笑ましく見ていたバルドルが、ふとそんな提案をしてきた。


 クロネのことを思えば、確かに泊まっていくのが一番安心だろう。けれど、私たちにはやるべきことが出来てしまった。のんびりと甘えるわけにはいかない。


「お気遣いありがとうございます。でも、私たちはオルディア教に力を貸すため、教会に向かいます」

「ほう……お前たち、オルディア教の信徒だったのか? だが、力を貸すとはどういう意味じゃ?」

「私たちが、決闘に出るんです」

「なに? お前たちが、か……!」


 途端に、バルドルの表情が険しくなった。


「決闘は遊びではないぞ。複数で戦い合う形式で、武器も魔法も飛び交う修羅場じゃ。クロネは別としても、幼子のお前たちには――」


 止めたくて仕方がない、そんな必死な気配が滲み出ている。だが、私たちはただの子供じゃない。


「大丈夫です。これまで、どんな敵も打ち倒してきましたから」


 胸を張って言い切ると、バルガルは目を細めてため息をついた。


「……随分な自信じゃな。だが、もう後には引けんのじゃろう。オルディア教のために戦うと決めたなら、好きに選ぶがいい」

「はい、そのつもりです」

「そうか……。本当は、もう少し一緒にいたかったんじゃがな。今日はここまでとしよう」


 そう言って、バルガルはすっと席を立ち、颯爽とガゼボを後にする。


「ふふ……あなたたちに何が出来るのか、楽しみにしておりますわ」


 レイナは妖艶な笑みを浮かべ、バルガルの後を追っていった。静けさが戻った庭園で、私たちも腰を上げ、公爵邸を後にした。


 ◇


「そういうことか……。なら、その決闘に出よう」

「ランカも! カリューネ教なんかに負けさせない!」


 二人に事情を説明すると、迷うことなく賛同してくれた。


 カリューネ教の勢力拡大を止めるには、オルディア教が決闘に勝ち、これまで通り信仰を集め続けてもらわなければならない。


「じゃあ、このまま教会に行って協力を申し出よう」

「そうだな」

「うんっ!」


 話がまとまり、私たちは足並みを揃えて歩き出す。――その時。


『フレー、フレー! ユーナ! 私のために争ってー!』


 っ!? この声は、オルディア様!? 急に話しかけないでください!


『だって、ユナが私のために決闘をしてくれるっていうじゃないですか! これは私が正ヒロインという立ち位置じゃないですか! 私が正ヒロイン……ぐふふ』


 何を考えているか分かりませんけど、オルディア様のためじゃありませんからね。あくまで、カリューネ教の勢力が強まるのを押さえるためですよ。


『いえ、伝わってきます。ユナの心から、私を思う気持ちが……』


 神様のように振る舞っても無駄ですよ。願望を垂れ流した後じゃ、無駄です。


『うっ、つい口が……。そ、そんなことよりも! この決闘に勝てば、この地の信仰は私のもの! 勢力は維持されます!』


 なんか、台詞が悪役のそれに似ているんですが……。


『ふっふっふっ、いいのです。カリューネ教にこれ以上、信仰を奪われるわけにもいきません。そうしないと、私の影響力が落ちてしまいますからね。そうすると、私の神としての格が……』


 自分の格の事よりも、信者の事を心配してください。だって、カリューネ教を信仰したら魔物の脅威から守ってくれないようなので。だから、オルディア様がしっかりと仕事をしてくださいね。


『うっ! や、やってますよ!』


 だったら、なんで私の事を見ていたんですか?


『うぅっ! そ、それはたまたま、そのぉ、時間が出来て……。チラッとみたら、興味深い話をしていたんです! 本当ですよ!』


 ……ふーん。それにしても、オルディア神官たちは大変そうでしたね。早く行って、力になる事を伝えないといけません。


『そ、そうですよ! あんな扱いをされていたなんて……。もし、私がいれば神の威光でちょちょいっと加勢できましたのに!』


 へー、そんな前から見ていたんですね。


『あっ! いや、それはその……。仕事から逃げて、ごめんなさーい!』


 もう、しっかりしてくださいね。私は行きますから、ちゃんと仕事をしてください。


『はい……分かりました。でも! 応援はさせてくださいね! もっと、力を増幅させることも出来ますよ!』


 力の増幅? そんな事が可能なんですか?


『はい、とりあえず一万人の信仰を集めてくだされば、大丈夫です!』


 ……オルディア様の力じゃないんですか?


『はい! 信仰の力がないと、力を分け与えられません!』


 ……ポンコツ。


『わーん! そう言わないでください! 神様は信仰がないと、力が蓄えられないんですー! それに今は信仰が減っているので、下界の影響力が減っているせいで、色々と信仰が足りないんですー!』


 もう、力はいいですから。私の力でどうにかしてみせます。


『うぅ、神としての威厳がぁ……』


 そう言って、オルディア様の存在はスッと消えた。今の話を聞いて分かるのは、オルディア様の力が減っているってこと。


 つまり、信仰が減り、仕事が減り、暇な時間が増えたという事だ。これ以上、信仰が落ちると色んな悪いことが起こるかもしれない。


 それを防ぐためにも、ここの領地の教会を守らなくてはいけない。オルディア様には期待出来ないので、私たちでなんとかするしかない。 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なるほど、オルディア様に信仰を集めれば、仕事せざるを得なくなるから、暇な時間が減ると。。。 それって、「小人閑居して不善を為す」というか、 「女神様閑居してユナを構う」といった感じなんですね。。 (汗…
代替品としてコレを元に戻して本編に出荷してもらうのと、ココでこのまま弄るのどっちがいいか挙手してくれ、コイツは玩具だと思う人 (( 'ω')/ ハイッ!(∩゜□゜)ハィッ!↑ʅʅʅʅʅ(´・ᴗ・` …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ