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【書籍化決定】転生したら魔法が使えない無能と捨てられたけど、魔力が規格外に万能でした  作者: 鳥助
第四章 ロズベルク公爵領

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131.バルドル篭絡

 あの後、交流を深めるためにお茶会を開こうという話になった。その準備が整うまで、私たちは個室で休憩を取っている――はずだった。けれど、落ち着いてなどいられない。


「まさか、バルドル様の側にカリューネ教の神官がいるなんてね」

「あいつ……危険な匂いがする」

「あぁ、確かに。あの匂いは忘れられない」

「匂いって、どんな匂いだったの?」


 クロネとランカは妙に息が合って、真剣に頷き合う。だが、匂いと言われても私にはさっぱりだ。


「あのレイナって人、人を誑かすような匂いがしたんだ」

「すごく濃い匂いだったよ。きっと狙いはバルドル様だと思う」

「……やっぱり。あの二人の様子、どうにも普通じゃなかったもの」


 彼女たちは匂いで察していたらしいが、私は仕草や雰囲気から危うさを感じ取っていた。これは、何かある。


「今はまだ何を企んでいるのか分からない。だから、お茶会の席で話を引き出そう」

「オルディア教の神官たちといい、どうもきな臭い」

「……この町ごとカリューネ教に支配されてる、なんてことは?」

「今の段階じゃ断定できない。まずはバルドル様から事情を聞かないと」

「でも、レイナが一緒じゃ無理じゃないか? 絶対に邪魔してくるぞ」


 そう、話を聞きたくても絶対にレイナが邪魔してくるに決まっている。バルドル様があの誘惑を振り切って、こっちに都合よく話してくれるなんて、到底思えない。


 けれど、一つだけ、レイナの誘惑を打ち破る秘策があるのだ。


「ねぇ、クロネ。バルドル様って……もふもふが好きなんじゃない?」

「えっ? ま、まぁ……そういう節はあるけど……」

「ほらね! レイナを傍に置いてるのも、絶対にもふもふ目当てなんだよ!」

「……ユナ以外にも、もふもふに釣られる人がいるの?」

「いる! 絶対いる!!」


 力説する私に、クロネとランカは不思議そうに首をかしげる。


「そんなに魅力的か? これが」

「ランカ、まだよく分からない……」


 二人は耳をピクピク動かし、しっぽをふわりと揺らす。その瞬間、私の中のもふもふ警報が鳴り響いた。あぁぁぁ、これは危険! 堪らない! バルドル様だってイチコロに決まってる!


「だから! 次のお茶会で、このもふもふを最大限に活かす作戦を立てたの!」

「……え、作戦?」

「そう! 二人とも協力して!!」


 勢いよく身を乗り出して叫ぶと、クロネとランカは「……まぁ、ユナがそこまで言うなら……」と、ちょっと引き気味に頷いた。


 ◇


 色とりどりの花が咲き乱れる庭園。その一角に佇む白亜のガゼボへ、私たちは招かれた。


 丸いテーブルの上には焼き菓子や果物が所狭しと並び、香り高いお茶を傍らのメイドが丁寧に注いでくれる。優雅な場に集うのは、私たちとバルドル、そして例のレイナだ。


「さぁ、遠慮なく。話をたくさん聞かせてくれ」


 にこやかに微笑み、身を乗り出してくるバルドル。その視線がこちらに集まった――その瞬間。


「まあっ、このお菓子、とっても美味しそうですわ! バルドル様、はい、あーん」


 レイナがすかさず割り込んできた。しかもバルドルの口元に菓子を突きつけ、腰の後ろからふわりと尻尾を揺らして彼の手をなぞる。


「え、えっと……あ、あーん……」


 頬を赤くしながらも、まんざらでもなさそうに口を開けるバルドル。彼の顔はすっかり蕩けてしまい、ご満悦そのものだ。


 ……駄目だ、このままでは話にならない。バルドルの意識をどうにかこちらへ引き戻さなければ、肝心のことを聞き出せない。


 だから、いよいよ作戦開始である。私は二人に目配せをすると、「本当にやるの?」と疑問を浮かべている顔をした。私が頷くと二人は遠慮がちに頷いた。


「わ、わぁ……美味しそうだな」

「う、うん。どれから食べよう」

「……あたしが選んであげる」

「ほ、本当?」


 ぎこちない会話に、ぎこちない笑顔。クロネはテーブルの上から一つお菓子を摘まみ上げると、そっとランカの口元へ差し出した。


 戸惑いながらも口を開いたランカは、お菓子をひと口。噛んだ瞬間――耳がぴん! と立ち、目がキラキラと輝き、しっぽがブンブン振られた。


「……ランカ?」

「んぐ、んぐっ! んーっ!」

「落ち着けって……」


 ランカは両手をばたつかせ、しっぽもはち切れそうな勢い。その姿にクロネは呆れながらも微笑み、手元のお茶を差し出す。


 ごくりと喉を潤したランカは――。


「クロネ! これ! すっごく美味しい! 初めて食べた味だよ!」


 子犬のように無邪気にはしゃぐランカの様子に、クロネの口元が自然と緩む。


「……そんなにか?」

「うん! 本当に美味しいんだって! クロネも食べてみて! 今度はランカがあげる!」

「……分かったよ」


 勢いに押され、クロネはおずおずと口を開いた。ランカが摘まんだお菓子を口に含むと、クロネの表情は変わらない――ように見えた。


 だが、耳はぴんと立ち、しっぽがゆらり、ゆらりと揺れている。


「ま、まぁ……悪くないな」

「嘘だ! 絶対に美味しいって思ってる! だって、しっぽが動いてる!」

「ち、違う……これはその……!」


 クロネは真っ赤になりながら、しっぽを手で押さえ込む。それでも、先っぽはくすぐったそうに揺れてしまう。


「ほら! 誤魔化してもダメだよ!」

「や、やめろって……」


 二人のやり取りは、じゃれ合う子猫と子犬のよう。手をどかそうとランカが奮闘し、その魔の手から逃れようと奮闘するクロネ。


 獣耳やしっぽがあるだけで、この光景がとても尊いものように見える。その光景をずっと見ていたい気もするが、これは作戦だ。


 後ろ髪を引かれる思いでバルドルに視線を向けると――バルドルはこちらの光景に釘付けだった。二人の可愛いやり取りに夢中な様子で、レイナの方は向いていない。


 これはチャンスだ。

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このままでは。。読者として。。 オルディア教の聖女かも知れないユナたんが。。 「オルディア教モフモフ派」なる宗派の開祖になってしまうかもしれないと、危惧しています(びくびく) --すべてのモフモフは、…
少女たちだけにやらせる訳にはいかない!ヤレ! ティンタクル「は〜い、こっち来てコレを付けましょうね〜」 ???『なんだ!そのウネウネした物体は!止めて!ほじらないで!差し込……アーーーーーーーー↗↗↗…
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