13.褒章メダル
「ん……」
「ユナ? ユナ!」
「んんっ……」
ふと、意識が浮上するとクロネの声が響いた。その後には体を激しく揺すられて、嫌でも頭が覚醒していく。
ゆっくりと目を開けると、目の前には眉を下げたクロネの顔があった。
「クロネ? ……私は」
「良かった、目覚めた。ユナが白い像の前で倒れていて、ビックリした。一体何があった?」
「何が……あっ」
ゆっくりと思い出してみると、オルディア様に出会ったことを思い出した。確か白い空間にいて、色々喋ってきたっけ。
「私……オルディア様に呼ばれていたみたい」
「オルディア様に? ユナが? どうして?」
「ちょっと、聞きたいことがあったんだって」
そう言うと、クロネが顔を顰める。
「神様がそんな事するか? 夢じゃないのか?」
夢……。確かにそうかも。と、思っていると、服の下に硬い物があるのに気づいた。そっと胸に手を当ててみると、そこには掛けていなかったはずの首飾りがあった。
取り出してみると、夢でオルディア様からもらった首飾りと同じ形をしていた。ということは、あれは夢じゃなくて現実だってこと?
「そんな事よりも、体は大丈夫か? 魔力切れになって倒れたんじゃないのか?」
「体は平気だよ、魔力も大丈夫だった。心配かけてごめんね」
「……別に。それはそうと、早く起き上がってくれないか?」
はっ! つい、クロネの膝枕が気持ちよくてずっと横になっていた! 私は慌てて体を起き上がらせる。
「えへへ、ごめんね。クロネの膝枕が良くて」
「……ふーん」
あれ? ちょっと、嬉しそう?
クロネがそっぽを向きながら、おもむろに口を開く。
「……だったら、またしてやる」
「えっ、本当!?」
「……あぁ」
「嬉しいな! じゃあ、私もしてあげるね」
「……うん」
また少し、クロネと仲良くなれたかな?
◇
村へ戻ると、森の入り口に村人たちが集まっていた。みんな心配そうな顔をして、そわそわしている様子だ。
そこに、私たちが戻った姿を見ると、ワッと沸いた。私たちはあっという間に村人に囲まれる。
「大丈夫だったかい? 怪我とかしてないかい?」
「うん、大丈夫だよ」
「魔物は倒した」
「本当か!?」
「……証明する」
クロネが村人から離れると、地面に倒したゴルガンたちの死体を置いた。その姿を確認した村人たちは再度沸いた。
「本当にこの子たちがやったのか! なんて、強い子たちなんだ!」
「こんな事ってあるんだな! 本当にありがとう!」
「二人のお陰で村が救われたわ!」
村人たちは私たちを言葉一杯に褒めてくれた。凄く褒めてくれるから、私たちは顔を見合わせて照れ合った。
賑やかな村人たちの間から一人の中年の男性が前に出てきた。
「私はこの村の長、男爵だ。この村を救ってくれてありがとう。お礼にこれを進呈したい」
そう言って、男爵様がくれたのは金で出来た小さなメダルだった。
「これは?」
「あぁ、見るのは初めてかい? 褒章メダルといって、貴族が庶民の功績を称えるためのものだよ」
「この褒章メダルを集めると、枚数に応じて貴族に面会できる権利が出来たり、沢山集めると貴族に叙爵されるんだ」
「えっ! 凄いメダルだ!」
クロネの説明を聞いて、私は驚いた。この褒章メダルを集めるだけで貴族に面会出来たり、貴族になったり出来るの!?
私がいた国にはなかった制度だ。ということは、これを集めれば私もこの国の貴族になれるかな?
「いいなー。集めて貴族になりたいなー」
「ユナがこの国の貴族? ……それもいいな」
「あっ、でも。メダルが一つしかないから、クロネと半分こ出来ないね。どっちが持つ?」
「あたしはいらない」
「そうなの? 貴族に興味ない?」
「興味がないっていうか……」
そう言って、クロネは言葉を濁した。また何かを隠しているようだけど……。聞きたいけれど、無理はさせたくない。でも、気になる!
「はっはっはっ、そういう子もいるんだな。さぁ、今日は私の屋敷でありったけの豪勢な食事を振る舞ってあげるよ」
「えっ、本当!? やったぁっ!」
「それは、嬉しい」
「さぁ、こっちにいらっしゃい」
私たちは男爵様に連れられて、屋敷へと向かった。
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