表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/122

121.楽しい修行日和(2)

「この周辺には魔物がいないみたいだな」

「ランカも、魔物の気配は感じないよ」


 山岳地帯を歩き回り、目当ての魔物を探す。だが、近辺の魔物はあらかた討伐されてしまったのか、姿が見えない。


「じゃあ、少し離れた場所に行ってみる?」

「ああ、それがいい。これだけ広い土地じゃ、魔物も散らばってしまうからな」

「思ったよりも、遭遇しないんだね……」


 人の気配がない土地だから、魔物は多く棲んでいると思っていた。けれど、広大すぎるがゆえに見つけにくい状況らしい。


「さて、どの方向に進めば魔物に出会えるか……」

「上かな? それとも下かな? どっちの方が多いんだろう」


 二人は耳や鼻を頼りに真剣に考えるが、なかなか答えは出ない。目に見える指標のようなものがあれば、ずっと楽なのに。


 索敵に関して、私は役に立たない。鋭い聴覚や嗅覚を持つクロネとランカだからこそできる芸当だ。だが、それも一定の距離まで。もっと遠くまで探れたら……と、どうしても思ってしまう。


 ――待って。私の魔力で、それが可能になるのでは?


 けれど問題は、魔力の届く範囲だ。いくら私でも、無限に魔力を放てるわけではない。あまり広げすぎれば、あっという間に魔力切れを起こしてしまうだろう。


 だからこそ、ただ力をばらまくのではなく、効率的に使う手段が必要だ。でも、魔力を効率よく使うってどうすればいい?


 どうすれば、もっと広い範囲を探れるんだろう。今のままでは、魔力をただ撒き散らすだけ。広げれば広げるほど、私の魔力は一気に削られてしまう。


 無駄が多すぎる。


 まるで水をざるに注ぐように、漏れ続ける魔力。これでは長続きしない。ならば、もっと効率的に、必要なところにだけ魔力を行き渡らせる方法が必要だ。


 空気に乗せる? 風に託す? それとも、大地や岩を通わせる? 考えれば考えるほど、頭の中でいくつもの可能性が浮かんでは消えていく。


 ただ力を押し出すんじゃなくて、媒介になるものを使えれば……。空気や大地はどこにでもある。それをうまく利用できれば、私ひとりの魔力を何倍にも広げられるかもしれない。


 ……そうだ! 空気中には微量の魔力が含まれている。その魔力と自分の魔力を同調させられれば、広範囲に影響を及ぼせるのではないだろうか。


 まずは空気中の魔力と自分の魔力を合わせることから試してみる。体の内側から魔力を押し出し、周囲の魔力へと溶け込ませようと意識する。


 だが、なかなか融合しない。同じ魔力という性質を持ちながら、それぞれが異なる属性を帯びているため、互いに弾き合ってしまうのだ。


 ならばこちらを合わせればいい。空気中の魔力と同じ属性へと自分の魔力を変化させ、改めて融合を試みる。意識を集中すると、周囲の魔力に自分の魔力が染み込んでいく感覚があった。


 そう、この手応え。この調子でさらに同調を深めれば……!


 全神経を注ぎ込んだ瞬間、世界が一気に広がった。感覚が自分の外へと溶け出し、薄い膜のように空気中へ広がっていく。


 これは……間違いない。空気中の魔力と同調できた。


 すごい……。自分の認識の外へと手が伸びるような感覚は、まるで世界に溶け出すような解放感だ。これが――空気中の魔力と同調する力。


 試しに、その魔力に意思を乗せてみる。すると、意識を向けた方向の情報が鮮明に流れ込んできた。木々の本数、川の大きさ、そして――そこに息づく生き物たち。


 まるで自分がその場に立っているかのように、ありありと認識できる。この力があれば、遠くの出来事さえ手に取るように分かる。


 魔物の気配を探ると、すぐに反応があった。……これは、以前戦ったことのある魔物だ。なるほど、この方角に、これくらいの数がいるのか。


「二人とも、魔物の居場所を見つけたよ」

「えっ、どうやって?」

「ちょっと魔力を使ったんだ。とりあえず、あっちへ進んで」

「分かった。じゃあユナは私が背負うね、急ごう!」


 二人に位置を伝えると、驚きの表情を見せながらも、疑うことなく動いてくれた。獣化したランカに抱えられ、風を切るような速度で山岳地帯を駆け抜ける。


 やがて、感知した通りの場所にたどり着く。そこには確かに魔物の姿があった。


「……本当だ。魔物がいる」

「こんなに離れた場所を分かるなんて、ユナってすごい!」

「ユナ、今のは一体どうやったんだ?」

「詳しいことは後で話すよ。今は目の前の魔物を討伐しないと」

「よーし、それじゃあ頑張ろう! スキル技、手に入れるぞー!」


 二人は気合を入れ直し、魔物に立ち向かっていった。


 空気中の魔力と同調する力。これは、もっと他の事にも使えそうだ。これは検証のしがいがある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
???『むにゃむにゃ、修行より信者集めを・・・むにゃむにゃ』 ◦<(¦3[▓▓] 凄いなコイツ、結局起きなかったぞ ティンタクル「しかし、情報の取捨選択してないっぽいが頭大丈夫か?」 ゴリ「その言い方…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ