11.戦闘後の二人
「クロネ!」
ゴルガンが動かくなるのを見ると、私は一目散に倒れているクロネに駆け寄った。見て見るとクロネは苦しそうに顔を歪めている。
「クロネ、大丈夫!? 怪我を見せて!」
「だ、大丈夫……。あの時、体を後ろに倒したから傷はそんなに深くない」
「そ、そうなんだ……良かった」
クロネが喋ってくれるだけで嬉しい。だけど、怪我をしていることには変わりない。この怪我を癒したい。私の魔力ならそれが可能だ。
「待っていて、今怪我を癒すから」
「癒すって……」
意識を集中して、手のひらに魔力を溜める。その魔力に癒しの力が付与するように、意識をした。すると、手のひらに温かい力が生まれてくる。この力だったら、クロネの怪我を治せる。
魔力さん、お願い。クロネの怪我を癒して。
手のひらに溜まった魔力を解放すると、キラキラと光り輝く。その光はクロネの傷に降りかかる。すると、切り開かれた傷口がどんどん修復していくのが見えた。
「な、なんだって!? 怪我が治っていく!」
その光景にクロネは驚愕していた。そして、その光が止む頃になると、クロネの体は怪我のない健康な体に戻る。
「クロネ、痛いところはある?」
「……いや、全然痛くない。絶好調だ」
「それなら良かった」
クロネの傷が塞がって本当に良かった。胸を撫でおろしていると、不思議そうな顔をして傷があったところをクロネが触っていた。
「本当に傷がない。まさか、ユナが回復魔法まで扱えるなんて思わなかった」
クロネはとても驚いている様子だ。なんでそんなに……はっ! そうだった! この世界での回復魔法は貴重なものだったんだ!
「ユナって信仰者だったのか?」
「ううん。これは魔力に回復の力が付与出来たらいいなって思ったら出来たの」
「ユナの魔力は考えるだけで力が変わるのか? ……不思議な魔力だ」
回復魔法は神に愛された者しか使えない。使えるものはほんの一握りで、その存在はとても貴重なものだった。
国は違えど、それは同じなようで。その力が知られれば、神に愛された者として教会に召し上げられてしまう。きっと窮屈な思いをするんだろうなぁ……。
「私が回復魔法を使えるのは秘密にしておいてくれる?」
「……その方がいい。そうじゃなかったら、ユナを取られる。それは嫌だ」
「取られるって……」
「今のカリューネ教はそれぐらい強引だってこと。信仰を集めるためになんだってする」
今の国教がそんなに強引だなんて……。絶対に気づかれないようにしなくっちゃ。
すると、クロネが立ち上がった。本当に怪我は大丈夫なみたいだ。もし、私が防御魔法を張っていたら、怪我なんてせずに済んだのに……。
「ごめんね、クロネ」
「なんで謝る?」
「防御魔法を掛けてあげられなかったから……」
「防御魔法……。あの魔法、あたしにも掛けられるのか?」
「多分、掛けられる。ほら……」
試しにクロネの体を防御魔法で覆って見せた。透明な膜が張られ、私が叩いて見せると、クロネはびくともしない。
「ね? 掛けられたでしょ?」
「そうみたいだな。だが、あたしには必要ないぞ」
「どうして?」
「強くなりたいからだ。頼っていたら、強くなれない」
強い目をして訴えかけてきた。でも、それだとクロネが怪我をしてしまう。それは、心配だ。
その私の感情が顔に出ていたらしい。クロネはポンと私の頭に手を置いて、撫でてくれる。
「そんな顔するな」
「でも、クロネが怪我だらけになっちゃうよ」
「出来るだけ怪我をしない。ユナに心配かけない。だけど、強くなりたい」
真っすぐなクロネの気持ちが伝わって来る。クロネは自分の力で強くなりたいんだ。その気持ちが伝わってきて、感心してしまう。
「クロネは強いなぁ」
「強いか?」
「うん、強いよ」
「そうか……」
視線を逸らし、マントで顔半分を隠す。しっぽはゆらゆらと揺れていて、嬉しい気持ちが現れていた。
その姿を見ると、私の不安が消えていく。
「じゃあ、私も強くなる。クロネに迷惑かけないようにね」
「そうか! なら、一緒に強くなろう。二人で天下無双になるんだ!」
「えっ。そこまで強くならなくてもいいかなー……」
「何を言う! 強さに天井なんてない!」
クロネが目をキラキラさせて訴えかけてきた。その目で見られるのは辛い!
「ほどほどに頑張るよ」
「だったら、暇な時間を見つけて二人で修行だな!」
凄いやる気を感じる。これは、避けて通れないな……。
「ま、まぁ……魔物を倒したし、村に帰る?」
「倒した魔物をマジックバッグに入れたい。ちょっと、待っててくれ」
「分かった」
そういうと、クロネは背負っていたマジックバッグを取り出し、ゴルガンの死体をマジックバッグに入れ始めた。
その姿を見ていると、私の目に白い像が入ってきた。そういえば、なんでゴルガンはこの白い像を壊そうとしていたんだろう?
気になって白い像に近づいた。その白い像は女神を形どったもので、長年根付いたオルディア様を信仰する像だ。
それにしても、この顔……どこかで見覚えが……。
さらに気になって近づき、白い像に触れた瞬間――私の意識が飛んだ。
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