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デート

◇◆◇◆


 ────慰安旅行の翌日。

私はジークを連れて、あちこちの観光地へ赴いた。

その際、ラッセル子爵領のトンネルなんかも見て回る。

一度、ちゃんと見ておきたかったため。

『思ったより、立派だったな』と考える中、私は海の見える丘へ足を運んだ。

すると、隣を歩いていたジークが口を開く。


「あの、イザベラ様」


「なんだ?」


 おもむろに足を止め、私はジークの方に視線を向けた。

『海は興味なかったか?』などと思案する私を前に、彼はそろそろと顔を上げる。


「今日はどうして、デートに誘ってくれたのですか?」


 『何か目的があるのでは、ないか』と勘繰っているジークに、私はこう答える。


「何となくだ。理由がなければ、ダメか?」


「い、いえ、そんなことは……!」


 勢いよく首を横に振り、ジークは『滅相もありません!』と主張した。

かと思えば、少しばかり眉尻を下げる。


「ただ、普通のデートってあまりしたことがないので戸惑ってしまって……」


「そういえば、今までは仕事絡みのものばかりだったな」


 『戦場デートとか、視察デートとか』と呟き、私は金の瞳を見つめ返した。

と同時に、ジークの頭を軽く撫でる。


「これからは普通のデートも頻繁にやるつもりだから、早く慣れろ」


「えっ?頻繁に?」


 反射的に聞き返すジークに対し、私はすかさず頷いた。


「ああ、もう休日を研究に費やす必要がなくなったからな。今後は────愛する伴侶のために、時間を使う」


「!」


 ハッとしたように息を呑み、ジークはこちらを凝視する。

衝撃のあまり固まる彼は、大きく瞳を揺らした。

かと思えば、


「愛する伴侶……」


 と、繰り返す。

まるで、その言葉を噛み締めるように。


「イザベラ様、俺────今、凄く幸せです」


 泣き笑いに近い表情を浮かべ、ジークは私の手を控えめに握った。


「貴方の愛する伴侶になれて、貴方の貴重な時間をもらえて……」


 金の瞳に歓喜を滲ませ、ジークは少しばかり身を乗り出す。


「だから、今の俺と同じくらいイザベラ様を幸せに出来るよう頑張ります」


 コツンッと額同士を合わせて、ジークはうんと目を細めた。

握った手に少し力を込める彼の前で、私はゆるりと口角を上げる。


「そうか。期待している」


 今後の楽しみがまた一つ増え、私は笑みを漏らした。

『一体、どんなことをしてくれるのか』と想像を膨らませつつ、ジークの唇を指でなぞる。

そして────吸い寄せられるかのように、口付けを交わした。

『悪辣令嬢の独裁政治 〜私を敵に回したのが、運の尽き〜』は、これにて完結となります。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。


本作は完全に思いつき……というか、序盤の『はっ?お前が死ねよ』を言わせたいがために書き始めたため、正直ここまで長くなるとは思ってませんでした。

あと、予想以上に多くの方に読んでもらえて嬉しいやら恐れ多いやら……(笑)

何はともあれ、こうして無事に完結を迎えられて良かったです!


さて、本作の裏話についてですが……


・第三章の学校編、三回書き直した

→初期案では『身分制度撤廃を提唱する宗教集団が居る▶よし、倒そう』という流れだったが、『いきなり宗教出てくるのは、変かな?』となり断念。

『じゃあ、皇城の職場見学をさせるのはどうだろう?』と、全く違う展開にするものの……いまいちパッとしないし、ニコラスやセドリックの心情の変化を上手く書き切れないためボツに。

それで結局初心に返り、身分制度撤廃の要素を取り入れつつ、セドリックの復讐と絡めて書くことになった。


・イザベラ不在時の戦争の黒幕を、ケイラー侯爵にする予定だった

→学校編の変更に伴い、修正。

あと、イザベラ不在時の戦争ではリズベットやジークにスポットを当てたかったため。脇役のセドリックに花を持たせるのは、避けたかった。


・過去編のあと、ジークはイザベラのことを『リベルタ様』と呼ぶようになる……筈だった

→後悔を晴らしたことで、イザベラは前世(リベルタとしての人生)を完全に過去のものとしたため、今更リベルタと呼ばせるのは違和感あるよなぁ……となり、断念。


本作の裏話は、これで以上になります。

『へぇー!そういう展開もあったのか!面白い!』と思っていただけましたら、幸いです。



それでは、改めまして……

本作をお読みいただき、ありがとうございました。

いいね・感想・評価・ブックマークなどもいただけて、感無量です。


また気が向いた時にでも、無双しているイザベラを見に来ていただけますと幸いです!┏○ペコッ

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