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「わ、私だけ逃げるなんてことできるはずないでしょ?!」
アオネは叫んで踵を返した。
「神社にいる人たちに伝えなくちゃ」
「それはさせない」
背中に衝撃があった。アオネは前に倒れる。体が動かない。もう一発体に撃ち込まれた感覚がある。もしかすると、アオネが背を向けるタイミングをこの男はずっと図っていたのかもしれない。いや、そもそもあのリモコンは本当にテレビのリモコンであって、壮大なはったりを決められただけだったのかもしれない。
アオネは祭の明かりに手を伸ばす。何か叫ぼうとするが、声が出ない。祭のオレンジ色、花火の色彩が、視界の中でぼやけていった。
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