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ソーダ味の水色のアイスキャンデーは、アオネの幼少期の頃から変わらない味だった。
透き通るような水色は夏の色をしていた。熱を持った口の中をシャリシャリとしたかき氷風の食感が冷やしていく。一気にほおばって、歯の奥にキンとした痛みを感じる。ほぉ、と吐く息は冷たい。夏の味がする。
融けてしまって最後の一口をこぼすなどということもなく、すぐにアイスキャンデーは無くなった。子供の頃は今よりもずっと口が小さかったし、食べるのも遅かったので、もたもたしていると周りの気温でアイスが溶け出し、手がべたべたになったものだった。
手元に残ったスティックを捨てようとして、アオネはふと気が付いた。
「当たりだ」
人生で当たりのアイスキャンデーに出くわしたのは初めてだった。思いがけない幸運にぽかんとしてしまう。幸運とは、望んでいないときに気まぐれにやって来るものなのかもしれない。アオネはカバンにその当たり棒をしまった。
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少し涼んでからコンビニを出ると、町の方で昼花火の音がした。そういえば今夜は山の神社で夜祭があるとチラシに書いてあったことをアオネは思い出す。家に戻って夜祭の支度をしようと決める。浴衣や髪飾りは旅行鞄に詰めて古民家まで持ってきている。祭は浴衣で楽しむというのは、アオネがいつも決めていることだった。
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