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「あああーーーっ!!あれを見ろ!」
アオネは叫んで、目を引ん剝くようにして思い切り右の方を向いた。
一瞬、男がそちらに気を取られた瞬間、アオネは下駄を脱ぎ捨てて反対方向に走り出した。
「あっ、コラ待て!」
男が追いかけてくるのを感じる。こちらは浴衣で裸足だが、相手は動きやすい格好をして、足元はしっかりしたスニーカーを履いている。せめて祭の会場までたどり着ければ誰かが助けてくれる。アオネは必死に体を動かす。
突然、背中に衝撃があって、視界が揺れた。アオネはつんのめるようにして前に倒れた。
「う、……あ」
もう一度衝撃があった。アオネの意識はそこでぷっつりと途切れた。
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