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「誰かが死ぬことで繰り返しが終わる確証でもあるの?あなたがやっていることはただの殺人だよ」
「何度殺したって、何度悪いことをしたってまた繰り返すんだ。誰も俺を裁かない。繰り返しが終わるんなら、捕まったとしたってその方がマシだ」
「私はあなたを覚えている」
「俺はいっそ狂ってしまいたいんだ。永遠に繰り返す日々の中で永遠にハッピーに遊んでいられたらいい。でも、できない。とにかく終わらせたいんだよ」
完全にやけを起こした男は威嚇するようにドンと足を踏み鳴らした。アオネは反射的に走り出す。
「さあ逃げろ。あと9分だ」
男が叫ぶのが聞こえる。アオネは夢中で走った。
男の言った通り、山の裏手に地下道は見つかった。壁にはスプレーの落書きで覆いつくされ、天井の切れかけた古い蛍光灯は数メートル先までの視界しか確保してくれなかった。地下道にはアオネの荒い息遣いと足音が大きく反響した。
突然、足元が揺れて、アオネは倒れ込む。天井からパラパラともろくなったコンクリートの欠片が落ちてくる。立ち上がろうとした瞬間、もっと大きな揺れがあり、アオネの体はバランスを崩して壁に激突する。
頭を打ったのか、目の前が真っ暗になり、意識が遠のいていく。
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