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瓶入りのラムネは水色に透き通って、揺れるたびに水面に向かって小さな泡が踊った。
コンビニのイートインスペースの机を使ってラムネのビー玉を押し込む。あふれるか、と一瞬身構えたが、幸いラムネは良く冷えていて、圧力から解放された瞬間泡が吹きだすということはなかった。
瓶を傾けてぐいと呷った。冷えた甘いサイダーが喉を下りていく。ビー玉が邪魔をして思うように出てこない。確か、瓶のくぼみにうまくひっかけて飲むと良く出るんだっけ、と昔誰かに言われたことを思い出した。淡い炭酸が心地いい。
すぐに飲み終わって瓶は空になった。コンビニを出たところに備え付けてあるゴミ箱を見たが、瓶は回収していないらしかった。
それなら持ち帰って部屋に飾ろうかな、とアオネは考えた。ラムネ瓶の水色がかった透明な、なんとも言えない涼し気な感じが好きだった。振ればカランカランとビー玉が瓶に当たる爽やかな音がする。窓際などに飾って、日光がガラスを通って差し込むのを眺めるのもいい。
アオネはカバンにラムネ瓶をしまった。
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少し涼んでからコンビニを出ると、町の方で昼花火の音がした。そういえば今夜は山の神社で夜祭があるとチラシに書いてあったことをアオネは思い出す。家に戻って夜祭の支度をしようと決める。浴衣や髪飾りは旅行鞄に詰めて古民家まで持ってきている。祭は浴衣で楽しむというのは、アオネがいつも決めていることだった。
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