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「そうはさせないよ」
アオネはカバンからピストルを取り出し、素早く発砲した。男は何が起こったのかわからない、という表情でゆっくりと後ろに倒れていく。
アオネの背後で花火が空に咲く。男は口をなにかパクパクと動かしたが、口から出てくるのは血だけだった。
アオネはピストルを取り落とした。それは足元に転がって鈍い音を立てた。全身が震えだす。
「逃げよう」
青年がアオネの腕を掴んで言った。その言葉ではっと我に返る。花火がもう一発上がった。
二人は下り坂をほとんど転ぶようにして駆け下りて行った。アオネの家までたどり着くと、庭に転がり込んだ。アオネはうずくまり、自分の腕で自分の体をぎゅっと抱いた。手足の先が血の気が失せたように真っ白で冷たかった。変な汗で全身が濡れていた。足や手には先ほど転んだのか、擦り傷や切り傷がたくさんついていたが、痛みは感じなかった。
青年がアオネの肩をなでる。
アオネは動くことができず、そのままの姿勢で震えていた。夜が更けていった。
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