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「ねえ、夏の朝は好き?」
アオネはカバンから、無人駅で会った女性にもらった絵を取り出した。夏の空の色をした朝顔の絵。
「それは?」
青年の声は少し震えている。
「隣町の駅に行ったんだ。夏の一日に捕らわれ続ける女性にもらったの。君のように、夏の一日に永遠に閉じこもっていたいと願う女性」
青年はアオネの手から絵を受け取る。そっと表面を指先でなでる。
「僕のことを覚えてた?」
「ええ。でもその人は私に、朝を望んでもいいと言っていたよ」
「朝、か」
「私も夏が好きだよ。うだるような暑さの正午、蝉の声、夜祭。でも、繰り返しはもう終わりにしよう。静かで涼しくて透明な朝に、朝顔が見たい。朝を待とうよ」
青年は少し間があった後、頷いた。
「そうだね、もう、終わりにしよう」
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