表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

九〇年代4コマ漫画の雰囲気で、雨


 本日午後三時、私はどうしても出掛けなくてはならなかったのです。


 その湿度は高く、雷もゴロゴロしておりましたので天気予報よろしくスコールのように雨が降るであろうことは私の全身の毛穴という毛穴からも明白でありました。


 しかし、私はどうしても出掛けなくてはならないのです。


 幸いにも雷がゴロゴロしているだけで、お空はほんのりと灰の色をしておるだけだったのです。


 これは千載一遇のチャンスであると、誰にでもあるものではないと、そう私は思ったのでございます。


 勇み立つ私は思い切って、お外にピョンと出たのでございます。土の中はたいへん暑いのです。


 先にお出掛けになられた先人には本当に頭が下がります。ただ、タイミングが悪かった。


 私は先輩たちを何人も何人も引き止めたのです。時期が悪い、タイミングが命であると。


 しかし、彼らの気持ちは痛いほどにわかるのです。なにせ、土の中は暑すぎる。私も我慢しておったのです。


 待って、待って……そして今なのですよ。


 先人方、先輩方の記録を今こそ私は塗り替え、超えるのです!!!




「あぁ、降ってきちゃったよぉ。まぁ、降るとは思ってたけどね」


 学校からの帰り道、アケミはひとり、持っていた青い傘をひらく。


「やだぁ、ちょっと復活してるじゃない」


 公園前の芝生からは最近、土の中が暑すぎるのかミミズがよく飛び出し、そしてアスファルトの上で跳ね、のたくり、最後は黒く焦げたようになって息絶えていた。


 それが急に降り出した雨により、ちょっぴりみずみずしさを取り戻している。


「……あらぁ」


 そのみずみずしさを取り戻した亡骸のすぐ横に、まだまだ元気といわんばかりに跳ねているものがあった。


「よく見ればすごい光景よね。あなたも今のうちに土に帰らないと、またすぐにお日様が出てきちゃうわよ」


 アケミはフンと鼻で笑い去っていった。




 お嬢さん、それは私にもわかっているのですよ。


 お空が灰の色のうちに出、雨を経て、そして日に照らされるのです。土には帰りません、暑いので。


 ただ私は先人たちのようにすぐに日に照らされるのではなく、こうして記録を伸ばし、少しの天国を長く味わうのです。


 そしてこの背中を後人に見せ、うっ、あっ、お天道様だ……!! あぁぁあ!!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ