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魔王の世話係になった俺の異世界記

作者: 噛内

初めての短編で色々入れたい要素をギュッとしたので少し分かりづらいかもしれませんがよろしくお願いします…


薄明の空に浮かぶ日本のよりも何倍もでかい赤い月と隣に並ぶ一回り小さい黄色い月

これがこの世界での朝と知ったのはここに来て数日後だった



「なーにやってんだこのくそがきゃぁぁ」


俺の叫び声が毎朝の恒例行事となっているらしい




_________



パワハラ大好きなクソな上司にそれを容認しているクソな会社、ペコペコ頭を下げてご機嫌取りをする俺はなんとも惨めなんだろう


首から提げている百均のネーム入れの中には、田中 一太郎(いちたろう)と書いてある自分の名刺がボロボロの状態で入ってる



こんなブラック珍しくもない。嫌ならさっさと辞めて次の会社へ行けばいいと思うがそうもいかない。

ギャンブルに走った親父がヤーさんのところで借金こさえて行方をくらましたのは俺が21の時、いつの間にか連帯保証人になって俺が返す羽目になった。この会社はそのヤーさんが持ってる会社のひとつで給料から差し引いて借金返済しているらしく、辞めようものなら海に沈められる



そして俺が35になった年。とうとう借金を返しきった

詐欺られて永遠に借金返しきれないまま最後まで働かされるんじゃないかと思っていたが、ヤーさん意外に良い人で

『ウチで借金する奴は大抵クソだからお前みたいに根性ある奴は嫌いじゃない。親の借金でここに来たみたいだし、大目に見てやるよ』

別に居てもいいが、いつでもやめていいぞ。と解放してくれた



その日俺はスキップで帰った。雨上がりの空は清々しく、俺も清々しい気分になる。水溜まりの上をパシャパシャと踏み入れ、ズボンとか革靴が汚れるのなんか気にしない。少しでかい水たまりに差し掛かり、いい歳した大人が両足でその中に着地しようとした時だった


足の裏に地面が着く感覚がなくまるで1段階段が少なかった時のような感覚と、倒れた訳でもないのに目前まで迫り来る地面


意識があったのはそこまで





気づいたら天蓋のついたキングベッドの上に座っていて、コ●トコで売られているようなあのでっかいチョコエッグサイズの卵を抱えていた


「は?」


パニックにならない方がおかしいだろう。水溜まりダイブしてた俺が気付いたらたまご抱えてベッドで座ってんだぞ

固まっていること数秒、パキ……とたまごにヒビが入り始めた


「は!?は!!?待って待って!!」

クソ上司が俺が徹夜して作った資料をシュレッダーにかけた瞬間くらい焦った。

でも悲しいかな、俺の静止も聞かずたまごはパキパキ割れていき、中から出てきたのは鳥__ではなく、角の生えた人間の子供だった

桃太郎でしか聞いたことがない状況に理解できる方が可笑しいんじゃないだろうか。そんな耐性1ミリもついてないぞ



銀色の髪と黒い羊のような角、月をそのまま目ん玉に入れたようなでかい目が俺を見上げる

「お前が今回の世話係か」


キャパを超えた俺は後ろに倒れて意識をなくした

ベッドの上でよかったと意識を無くす瞬間思った



ぺちぺち、ぺちぺち

「起きろ、世話係」

「ぅ……うおぉぉっ!!たまごが割れて子供が出てきてシャベッタ!!」

飛び起きて叫ぶ俺は後から思うととんでもない馬鹿に見える

「夢、か?」

しかも寝ぼけて現実と夢の区別がつかなくなっていた俺は夢であって欲しいと願いそう口にする

「夢じゃない。それより僕はお腹がすいたぞ」

「うおおおぉっ」


横で話しかけられ、見るとさっきたまごからでてきた子供が俺を見上げていた。服は着ていなくて推定10歳、よく見るとかなり顔が整っている

「あー…俺がその世話係?かどうかは知らねぇけど多分人違いだぞ、俺社会人だから。リーマンだから」

「何を言ってる?たまごを持っていたのだろう?世話係として適任があると()が決めたのだから人違いなわけが無い」


「待って待って、その城って何、拒否権ねぇの?てか帰りたいんだけど」

「城は城だ。今僕達がいるこの建物だ。城が僕が生まれる時に世話係として最適の相手をここに連れてきて僕の身の回りをやらせる。拒否権は知らない。今まで皆喜んで僕の世話をしていたからな」


今まで??


「僕の記憶は代々受け継がれている。どの代の魔王の世話係が誰だったのか全て覚えているぞ」

どやぁ、としている中悪いが聞き捨てならない言葉を聞いたぞ

「魔王?魔王ってあの魔物の王とかドラ●エに出てくるやつ??」

「どら、?そのどらなんとかは知らないが、魔物の王というのは合っている。僕は53代目の魔王ユーグレフ・アルギアノン。お前は僕の世話係だ」


「は、はぁぁ〜〜〜〜〜〜???!!!?!」


俺の叫び声が城の中で虚しく響いた



________


態度や性格が大人びていても見た目が見た目(こども)なだけに日本人の俺は関わっちまったからには見捨てれない。帰り方を模索しながらこの城で世話係として世話になることにした



「世話係、お腹がすいた」

「お前何食うんだよ、とりあえず出てきた卵の殻食ってろよ」

日々のストレスのせいか、つい悪態ついてしまったことにはっと気付いた。しかし時すでに遅し

「…………」

パリポリ…


こいつ食いやがった!食いやがった!!!


「お前バッカバッッカ!!何抵抗もなしに本当に殻食ってんだよ!ペッしろ!」

「?食べろと言ったのは世話係だ」

「何この純粋培養の塊…本当に52代分の記憶培ってんのかよ〜」


「たまごから出てきているのは毎回同じ姿じゃない。世話係と近い姿の生命体として生まれるから世話係の食事がそのまま僕の食事になる。世話係は殻を食べないのか?」

「食べね〜よ、冗談だ冗談。もう殻は食うなよ、間違えて食ったとしてもペッてしろよ」

「わかった」



なんだコイツ…今まで社会の荒波に揉まれていた俺からすると信じられないくらい純粋で騙されやすい性格で調子が狂う


まぁ、可愛げあるし後輩育てるみたいな感じでいけるか




___と思っていた俺が馬鹿だった





「ユーグレフ!テメェ西側の山ぶっ飛ばしやがったな!!」

「あぁ。だってイチタロウがあの山の向こうが気になるって言っていたから」

「馬鹿野郎そんなん行ってみてぇなぁ的なニュアンスだよ!視覚的にスッキリしてどうするんだよお陰で山に住んでたオーガ達から朝っぱからクレームの嵐だコノヤロウ!謝りいく俺の苦労も少しは知れ!!」


「オーガを消せばいいんだな」

「ちげぇよこんの阿呆っ」

「イチタロウ、今日はハンバーグが食べたい」

「食いてぇなら俺と一緒にオーガ達んとこ言ってごめんなさいしろ。さもないと焼魚にするぞ」

「うん、チーズが入ってるやつがいい」



______



「あ?ゴブリン達が人族襲いかけた?あいつらシバいたばっかだよな??そろそろいい加減にしねぇとユーグレフが集落に雷落とすぞって言っとけ」

ズカァァァンッ!


「今じゃねぇよユーグレフ!あぁぁ、もう、とりあえずゴブリン止めた奴誰___は!?ヴァンパイア!?あのヤンキー軍団!?そんな良心残ってたのかよあいつら。え?襲われかけた人族が女の子で?ヴァンパイアのひとりが恋に落ちちゃった???どこの青春だよ結婚式絶対呼べよ!!!」

「せいしゅんって何イチタロウ」

「お子ちゃまにはまだ早い。あと5年待て」



この後しっかり2人は結ばれたし結婚式に行ったし泣いたし祝儀奮発した



______



「ユーグレフそこ座れ。お前俺に何か言うことはないか?あるよな??」

「紅茶と乾燥させた苦草混ぜたのは僕じゃなくて人狼のヤンヤだ。今庭で剪定してる」

「おいこらヤンヤァ!!!後で絶対飲ませるからそこで待ってろよ!!じゃねぇよそれじゃない。お前俺の用意した人間界との協定の書類どこにやった?」

「…………」

「ユーグレェフ??」


「…燃やした」

「なんてことしてくれてんだよ馬鹿ッやっと契約取れたってのにこんな絶望元の世界でもねぇわ」

「…ごめんなさい」

「、なんでこんなことやったんだよ」

「イチタロウが帰りたがっていたのは知ってる、でも僕は帰って欲しくない。人間界と繋がりを持ったら人間界で帰る方法を見つけるかもしれない、だから…燃やした」


「馬鹿そんなん二の次だ。こんな一般常識のじょの字もないガキを育てるので手がいっぱいなんだよ、そもそも俺は途中で投げ出さねぇ。お前がしっかり1人で自立できるまで俺がみっっっちり教育してやるから今更嫌だとか言うんじゃねぇぞ」

「!分かった」

「とりあえず今日から3日飯は3食全部トーストだけだ」

「ウグゥ…」


「はっwざまぁねぇw燃やしたこと反省するんだな

さぁ飯だ飯、手洗ってこい。ついでにヤンヤ呼んでな。しっかり()()()()()してやる」


その日、悲痛な叫び声が聞こえたそうな


_________


魔界の治安その他諸々の問題解決とか魔物と人族の交流を深めたりするのはもちろん、

魔物達が余計な悪知恵を入れようとするのを阻止したり問題児の魔王の世話をするのは骨が折れるが、まぁ楽しくない訳では無いので暫く帰る手段を探すのはやめておこうと思う


とりあえず



「城に風穴ぶち抜いたの誰だぁぁぁぁ!!!!」



そろそろ俺の喉が壊れそう







【蛇足】

一太郎は魔王の世話係として城に住んでいるので、ポジションで言ったら宰相辺り。魔王の目もあるので逆らえないし本人の口も悪いが、根は良い奴なのでわりかし魔物達から慕われている

たまーに危害を加えようとする魔物はいるものの、異世界転移のテンプレチートのおかげでお話し合い(物理)で返り討ちにしている



父親はまた別のところで借金こさえてヤーさん達に見つかり行方不明になったそうな

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