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クレオパトラの娘  作者: かのこ
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ローマへの道

  アウグストゥスによる輝かしい御世の始まった年(紀元前27年)だった。当時十四歳だった私は、生まれて初めてエジプトを出た。師に従ってローマへ向かうためである。

 私の師アポロニオスは、エフェソスに生まれ、アテナイに学び、アレクサンドレイアの大図書館ビブリオテケーに仕えた学者であった。その道では名の知られた人で、エジプトからローマに旅した時には、立ち寄る各地で手厚いもてなしを受けた。ある時世話になった屋敷では、我が師の旧知の近況が話題になった。 「アウグストゥスも粋なことをしたものですね」 「何の話です?」

 すっかり葡萄酒に酔った我が師は、臥床に横たわったまま尋ねた。学識あるギリシア人の典型例で、沈思のあかし、口髭をたくわえている。年齢は四十半ば、妻子はない。

「自殺したエジプトの女王の娘……同じ名をした。あの娘が、婚約をしたそうではないですか」

 館の主人が感心した様子で言った。ローマを離れ、地方の荘園で暮らしている貴族である。ローマにも住む家はあるが、あそこは夜はうるさくて眠れないので、もっぱら別荘で過ごすのだという。

「アポロニオス殿はアレクサンドレイアの方ですから、女王の娘と面識があるのですね」

「ええ。王女は私の教え子でした」

 我が師は嘗て、エジプトのアレクサンドレイアの王宮で、王室の家庭教師を任されていた。大図書館の学者には、そうした者が何人もいたという。

「相手はヌミディア王の遺子……ユバ王子、でしたか。いい青年になったそうですね。アウグストゥスやその姉君が決めたのだとか」

 エジプトを発って以来、私たちは何度か王女と、その婚約者のユバ王子なる人物の噂を聞いていた。人は口々に彼の学識を讃えた。ローマに逆らったヌミディア王の遺子は、捕虜としてローマに送られた後、教育をほどこされ、立派なローマ市民となったという。

「ユバ王子はローマに行ったら会ってみたいと思っていた人物の一人でしたが……まさかこういう形で会うことになろうとは」

「ローマと言えば、不思議な話を聞きましてね」

 主は肥え太った身体を臥床に横たえていたが、わざわざ上半身を起こして言った。

「ローマで、珍しい書物が発見されたそうですよ。それを手にすれば、世界を統一できるといわれているそうです」

我が師は怪訝そうな表情をした。

「……世界を統一?」

 また奇妙な噂が流れているものだ。

「アリストテレスがアレクサンドロス大王を教えた時の、講義録とも言われているそうです。その書物の名は『アステリオン』……」

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