親友だった幼馴染が女の子らしくなっていく夏の日の話
海の日という事で、ふと思いつきました短編です。
以前書かせていただいた、
『親友だった幼馴染が親友ではなくなった春の日の話』
https://ncode.syosetu.com/n9583hn/
の続きになります。
どうぞお楽しみください。
「……なぁマコト……」
「……何……」
「な、何か機嫌悪くね……?」
「……別に……」
いや絶対不機嫌だろ!
海に向かう車の後部座席の空気が地獄です!
何だ!? 俺何かしたか!?
子どもの頃からずっと一緒に遊んでた親友のマコトが、中学でセーラー服を着るようになって、確かにちょっと気まずくなったりもした。
でも中身はマコトだ、と今まで通りにするよう心がけて、最近は変に意識しないで話せるようになってきている。
……階段上がる時のスカートについ目が行ってしまって落ち込む事もあるけど……。
まさかそれが知られて気持ち悪がられてる!?
……いや、それは一ヶ月近く前の話だし、その後も普通だったしなぁ……。
「……」
窓の外を眺めて俺と目を合わせないマコト。
……このままじゃ駄目だ!
ちゃんと話をしよう!
今までも何度かケンカしたけど、そのたびにちゃんと話をして解決してきたんだから!
「……なぁマコト。あの」
「……俺、昨日あんま寝れてないから、寝る」
「え、あ、うん……」
何だ。眠かったからイライラしてたのか。
それなら良かった。
海についてから仕切り直そう。
……あれ?
「マコト、髪伸びた?」
「っ」
あ、ちょっと肩が震えた。
前は首が見えてたのに、今はほとんど隠れてる。
いつもは暑いからって夏になる前に切ってたよな?
海に行く前に切れなかったから、イライラしてるのもあるのかな?
この話題なら返事してくれるかも!
「な、長いと暑くない?」
「……」
……駄目か。反応がない。
マコトのお母さんは運転してるし、これ以上マコトに話しかけてもイライラさせるだけな気がする。
あぁ、早く着かないかな……。
「着いたわよー」
「……マコト、着いたって」
「……うん……」
うぅ、海に着いてもマコトのテンションは低いままだ。
もうこれどっか具合悪いんじゃないか?
でもそういうの言わないマコトじゃないもんな。
「うん、予想通り空いてるわね。さ、中に水着着てるでしょ? 私は海の家に荷物を預けてくるから、一足先に海に入って良いわよ」
「あ、ありがとうございます」
言われるままにTシャツを脱ぐ。
ハーフパンツ型の水着を履いてきたから、俺の準備はこれでオッケーだけど……。
「……」
……マコトは服の裾をつかんだまま動かない。
「マコト」
「……うん……」
マコトのお母さんの促しで、ようやく脱い……、えっ!?
去年までは学校の水着だったのに!
ビ、ビキニって言うんだっけ……!?
う、うわぁ……!
「……」
ハーフパンツを脱ぐと、同じ色のパンツ……!
い、いや、あれは水着だ……!
で、でもこんなの、下着とおんなじだよな……。
見ていいのか、見ちゃまずいのか、もうわかんねー!
「……な、何だよ」
「え! いや、その……」
やばい! にらまれてる!
でもここで目を逸らすのも感じ悪いし……!
「……ぁってるか……?」
「えっ?」
「に、似合ってるかって聞いてんだ!」
「え、あ、う、うん! 似合ってる!」
反射的に答えるけど、マコトの目はまだ鋭い!
「……本当、だろうな……」
「う、うん……」
「そ、その割には、あ、あんまり見ないじゃないか……」
「し、仕方ないだろ! 何かドキドキするんだから!」
「! ドキドキ、してるのか!?」
「あ、当たり前だろ!? そんな、格好見たら、誰だって……」
「……そう、か……」
「……うん……」
蝉の声と波の音と、自分の心臓の音とがやけに大きく聞こえる。
何だ!? マコトは何がしたいんだ!?
「……よし、泳ぐぞ」
「え?」
「海に来たんだから泳ぐぞ!」
「え、あ、待てって!」
よくわからないけど、元気になったマコトは海に向かって走り出した。
その後を追いかけながら、俺はこのドキドキがすごく大事なもののような気がして、胸をぎゅっと抑えた。
読了ありがとうございます。
タケル視点では何が何だか感があるかと思いますが、入学後必死の努力で今まで通りに振る舞うタケルに、「何で俺だけがドキドキしなきゃいけないんだ……」と逆恨みしたマコトが母に相談。
「それなら海でビキニで悩殺よー!」でこうなりました。
ドキドキさせたからマコトは満足してます。
ちょっと口の中甘酸っぱいんで海水飲んできますねー。
お楽しみいただけましたら幸いです。