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終わりの始まり

「兄上がいなくなっただと?」

ソフィアの存在がシャルルを明るく照らし始めていたある日、暗く重い事実が彼に伝えられた。

「はい、島中を探しているようですがお姿がどこにも見当たらないと」

「いつからだ?」

「数日前と…」

「まさか…」

「可能性がゼロとは言えませんが…海峡を渡るなどおおよそ出来ることではありません。」

「島のどこかで死んでいてくれればいいのだが…」

「私の立場で言うべきことではありませんが…それが一番ではあると…」


ーーーーーーーーーーー


「ソフィアはまだ帰らないのか?」

「殿下、何度目ですか?ちゃんと暗くなるまでには帰られます」

「あ〜!帰すんじゃなかった。なぜ急に帰るなどと…」

「まぁでも覚えてらっしゃらないとはいえ、生まれ育った家ですからね。むしろずっとここに足止めしているほうが…」

側近がニヤリとしながらシャルルを責めた。


「………帰したくないのだ。生まれ育った家だからこそ」

「あの殿下が…なんと腑抜けな…」

「ふんっ」

「…以前のソフィア様に戻られるのをご心配されているのですか?」

「…………」

「本当にまるで別人のようですね、最近のソフィア様は。こんなに愛らしい方だったとは…。一体どんな毒を盛ったのか…」


「……………まだ帰らないのか?」

「この仕事が終わる頃には戻られるのではないですか?早く終わらせて下さい」

「クソっ」


「殿下!ソフィア様がお帰りになりました!」

「終わりだ!仕事は終わったぞ!」

「殿下!殿下!…………どう見ても何も終わってないのですが……」

側近はもう見えなくなった彼の背中に呟いた。



結局、家に泊まることは許されなかった。

何度訪問してもいい。でも夕刻には帰ってきてほしい。それがシャルルの出した条件だった。



「え?もういいのか?もう家に帰らなくてもいいのか?」

いつものようにシャルルがベッドに座ってソフィアが眠るまで彼女を撫で続けている。今や毎晩の日課だ。

2人にとって大切な1日の終わりの儀式だ。


「殿下…」

「なんだ?」

「まだ、ここにいてもいいですか?」

「もちろんだ!ずっといればいい。」

そう言うと、シャルルはイヤというほど彼女にキスの雨を降らせた。

ーーーそろそろ我慢の限界なんだが…

シャルルは眠りについたソフィアにもう一度キスをして部屋を後にした。




ソフィアの家には何もなかった。

当たり前だが思い出も、温かみも…

ソフィアには両親がいた、使用人もたくさんいた。大きな家だった。

でも…

ーーー彼女はあまり幸せではなかったのかもしれない


そしてソフィアは今日、彼女の部屋で探していたものを見つけた。

あればいいと願い、探す為に家に行ったのだ。

それは簡単に見つかった。

だからもうあの家に帰る必要はない。

そして………


ーーーこれを終わりの始まり、なんて言うのかな。


シャルルが部屋を出ていく音を聞きながら彼女は静かに涙を流した。

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