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第九十二話・岡目八目 

※今回の話の目的は、依頼された文章添削→感想文を成仏させるということです。


岡目八目ってなに? という人のために、コトバンクから意味を引用します。

↓ ↓ ↓

当事者よりもはたで見ている者のほうが物事の真相や得失がよくわかり、的確な判断ができることのたとえ。

↑ ↑ ↑


 今回の表題はわたしのことですね。でも、文章添削を依頼されたらわたしはその資格がないながらも一生懸命期待に応じるべく動きます。



 わたしが文章好きなのを知っている人が、ある人の小説を添削してやってくれとお願いしてこられました。その人はプロではない。その人の作品は読んだことはない。長編だと苦しいかも……と思ったのですが原稿用紙5枚ほどだというので引き受けました。その紹介者経由で2編持ってこられました。400字のマス目をきちんと埋められた生原稿で恐縮しました。訂正部分も鉛筆での手書き。この時点でその人は書き手としては、純粋なアマチュアの人だとわかりました。添削というと、わたしごときではおこがましいので、感想文を書くという形にしました。もちろん無償です。


 受けたからにはきちんと読まないといけないので、30回ぐらい読み込みました。で、感想文も良いところを踏まえたうえで読んで不思議に思った点や、こうすれば読みやすくなるという読者目線で書いたつもりです。生原稿も汚さないようにきちんとクリファイルに入れて返却しました。書き直したらまた読みますと言葉を添えて。

 それがなんで今頃イラクサにUPするのか、といいますと、紹介者が添削希望者に渡さずわたしの感想文の中でほめているところだけを抜き書きして渡したとおっしゃったからです。

 わたしはびっくりして、どうしてそんなことをしたのですか、その抜き書きした文を見せてほしいというと、いや、もう手元にないからという。紹介者はわたしの感想が酷評すぎてそのまま渡すと哀しむだろうと勝手に配慮したという。ならば、最初から超甘口で誉め言葉だけ欲しいと言ってほしかった。


とはいっても、紹介者は恩ある人だし、添削希望者は地位ある人です。わたしは、そうですかといって聞き流しました。文章好きなら無名のわたしの感想でも、ちゃんと読んでくれると思っていたのですが、地位がありすぎるとそういう変な配慮をされるものなのですね。逆に可哀そうに思えます。先年その人が亡くなられましたのでご冥福を祈りつつその感想文を成仏させるべく全部UPいたします。

※故人の許可を得ていませんので、故人が作成した題名並びに作中の〇〇、▽▽部分は変えています。


」」」」



「〇〇の〇〇」


 まず最初から。会話文から小説を読ませたい場合はとても高度な技術がいると思います。と、申しますのは会話文から始める場合は読者にとっては、この小説は誰がどういう状態で何を言っているかがわからないからです。よほど魅力的でそのセリフがどういう意味か興味をそそらされるならいいですけれど、女の人を叩いたことはありませんか、というのは私個人の印象として「やだな、しょっぱなからDV男の話か?」 と思いました。逆に過去女性を叩いて罪悪感を持った経験のある男性ならば「おっ」 と思って腰を入れて読むでしょう。つまり私は作者様にとっては対象外な読者です。

 最後まで読み通すと悪印象を持ったのは間違いではありましたけれど、一体誰が主人公で、誰の視点で、いつの時代の話をしているのかがごっちゃになっています。現在と過去とがいきつもどりつしている上に、誰がどう考えているのかがわからないところが多々あります。正直に申しますが一読者としては非常に読みづらい原稿ではありました。

 ですが主人公の私に話しかけてきた男がひょんなことで夫婦間のよりどころを見直すことになったという話で読後感は悪くないです。悪印象がないだけ、地の分の荒さと拙さが目立ちます。

 〇〇のご主人と私、が顔の表情だけで会話できる、というのは面白いです。そこは掘り下げるべき面ではないのですが、そういうさりげないところは生きているだけに単なる労作で終わってしまいもったいないところだと感じました。読ませていただき有難うございました。





」」」」


 「それぞれの〇〇」


 題名について、最初の▽▽から手書きでの変更が見て取れますが私も〇〇という文字が入ったこちらのがよいと思います。書いたご本人を直に知っているだけに作者様の性格の良さと誠実さと正直さがよく出ている小説だと思いました。▽▽の出欠に逡巡するところが長ったらしく思えたのですが最後にはそれが結びにつながり、なるほどと感心できる書き方です。このあたりは小説を書きなれた人ならではの技巧ではないでしょうか。

 しかし面白かったか? と問われると正直これも苦しいところです。

 短編小説ながら主人公の私が狂言回しの役をして何人もの同級生の生き方を聞き取り、また共感もする。それはわかるのですが、各々の話をきいただけで終わってしまっているのもあり、かつ主人公がどうしたというわけでもないので読者としては気が抜けてしまうのです。あとは読者の想像にまかせるよ! と投げ出された印象です。主人公の人のアクのない人柄の良さはそのまま作者さんの性格に反映されているので、好ましくはありますが、読者に考え込ませる小説は書き手としてはプロでも一番難しいものではないでしょうか。

 ですが還暦を迎える男性のちょっとした見栄は私にとっては知りえることのない心理で興味深く拝読できました。その見栄はどこへいってしまったか、それも最後のシーンと結び付けて書き込みができていれば性別も年代も違う私でも共感を覚えることが少しはできたでしょうか。どうも私小説は普段読まないだけに点が辛くて申し訳ないです。

 以上自分のことを棚にあげて酷評な感想を書きました。読ませていただき有難うございます。

 



」」」」」」」」」」」」」」」」」」」


 以上でおしまいです。紹介者が気遣うほどの酷評でもなんでもないと思いますけどね。故人の良いお人柄を感じられましたし、わたしでない指導者に接するなどして、もっとたくさん作品を書いてほしかったと思います。ご冥福を祈ります。




NOTEにも同時掲載しております。

https://note.com/1fujitagourako1

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