第九十一話・死人が出る前に
今回は短いです。
婆薬剤師の立場から今流行のやせ薬について。
某国で出されたやせ薬の処方内容を見てぞっとしました。
お嬢さんたち、海外の病院、医院に行ってまでやせ薬
いわゆるホスピタルダイエット薬を
処方してもらって飲むのはやめてください。
ジアゼパム(先発商品名・セルシン、ホリゾン)などの向精神薬が出ています。
トピラマート(先発商品名・トピナ)などの抗てんかんの薬も。
薬価の原価はすごく安いものです。それを大金はたいて買うのはおかしい。
そりゃ、食欲不振でやせますよ。一応胃薬もセットにされてますけど
この場合は副作用として身体が危険信号を出していることを防御する処方です。
薬が途切れないように飲ませるために維持処方まである。
やせたので薬をやめたら反動で逆に肥った。あわてて同じ薬をもらいにいくと
ちゃんと続けないとと怒られた話まで出ている。これは大変危険です。
診察代、薬の処方代、それと往復の飛行機代とホテル代……言葉も通じない国へ行って
健康を損なってまでやせたいですか……利用者の大半は未来ある若い女性です。
国内でもそうです。ある種の糖尿病薬はやせます。
患者でないので、処方箋は出せないが、美容外科で全額自己負担なら
入手できます。やせたい一心で、食事を抜き糖尿病薬を
飲んだり注射したりしては一体どういうことになるかわかりませんか。
事実低血糖発作を起こして命にかかわる人もいます。
また肝心の患者さんに薬が回らないという異常事態になっています。
わたしは一貫してブス、デブなので声を大にして言えるけど
ほっそりとしたビジュアルがもてはやされ、
可愛い子が優遇される社会だからこうなってしまう。
ホント50キロ代で十分綺麗なのに、40キロめざすっておかしくないですか?
やせたいのは、わかる。わかるよ。わたしもそうだから。
肥っているとバカにされるよ、わたしがそうだからわかる。
でもお嬢さんたち、健康を損なってまでやせることはないですよ。
医師会も薬剤師会も死人が出てからあわてて動くのでしょうか。
日本未入荷だから価値がある、高額だから、入手に手間がかかるから
価値があると考えるのも早計です。
身体に異常を感じたらすぐ薬をやめるのが鉄則です。
なんの力もないわたしから言えるのはこれだけです。