第八十一話・メディアによる取材の余波(観光地編)
コロナ禍はまだ収束していませんが、それでも遠出する人も増えました。ですので取材を要請された観光地はうれしいことです。より多くの観光客が来てくれるから経済も潤います。だけど名前を広く知られることで需要と供給のバランスが崩れた事例もある。
この話をしてくれたのは観光課の人。Qさんとします。忘備録代わりに書き留めておきます。
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誰でも取材を受けるのはうれしい。特に有名になりたい人間、お店、観光地などは取材依頼があれば、よほどのことがない限り受けるでしょう。
で。観光地は観光地ではあるが、そこ以外は老人世帯が多い過疎地にしかすぎないこともある。Qさんはそういうところの公務員です。観光課といっても数人で他の課と兼任です。
Qさんの管轄内のあるレストランが土地名産の料理を出していました。そこがテレビ番組の取材を受けた。番組構成は①周辺観光の紹介、②その名産とレストランの紹介という流れ。
観光地では構成によっては地元の交流もあります。その時はインタヴュアーが、たまたま道行くおばあさん三人に声をかけた。そのおばあさんたちの笑顔がよく、めちゃくちゃ元気で返答も威勢がよかった。そのため番組も盛り上がった。
インタヴュアーも雰囲気を盛り上げて「年はいくつ~」 と聞くと三人とも八十歳代後半。
「どうしてそんなに元気なのですか~秘訣はなに?」 と聞いたら、おばあさんたちはある食べ物の名前を言った。そこらあたりは、本当にたまたま、だったらしい。
その次に番組はその名産を使った料理を提供する当該のレストランの紹介にすすむ。流れとしては自然で、わかりやすい。ただ視聴者の一部は、その食べ物を常食していたら、元気で長生きできると受け取った。
放映後、そこの観光地もレストランも連日満員御礼。テレビの威力恐るべし。その食べ物の良いイメージもあいまって連日売り切れ。元々旬のものだし、たくさんあるわけではない。缶詰め製品ですら売り切れ、結果として需要と供給のバランスが総崩れ。
そこでQさんが登場します。その時点ではQさんはテレビ番組の取材があったことを把握していない。いかに観光地課であっても地域の人に番組の取材を受けますという報告義務はないから。Qさんは、見知らぬ人々からいきなり電話で責められる。
「長寿になれる◎◎がずっと在庫切れとはどういうことか」
驚くQさん ⇒⇒⇒ 「えっ、◎◎って 食べたら長寿になるの?」
「おまえっ、それでも観光課の人間かっ」
ものすごく怒られながら、事情を把握したQさん。でもどうしようもなかった。
なだめるQさん ⇒⇒⇒「◎◎は、旬の短い食べ物だから、大量生産はできないです。販売店がないといえば、もうないです」
「じゃなんで、テレビで紹介したんだよ、あるから紹介したんだろがっ」
Qさんは、ぼくがテレビ局に依頼したわけじゃねいと、ぼやきながら、キレる人に説明する。取材を受けたレストランのみならず、周辺の売店やスーパーまで◎◎を求める人々から怒られていた。だからQさんがなぜか彼らもなだめたそう。本当にテレビ番組の影響はすごい。
「今は下火になったけど、今でも問い合わせが来る。気の毒なのは、今にも死にそうな人間やその家族が◎◎を食べさせてあげたい。少しでいいので、ぜひお願いしますとすがりつくように言われること。◎◎さえ食べたら命が助かると思っているのかね……できるなら差し上げたいがアレは量産できるものでもないしね、すみませんと謝るしかない」
◎◎の名前を聞いたが、毎日◎◎を食べたとしても長寿にはならない。あれは単なるイメージです。健康的ではあるけれども。正直いっておいしいものではない。
① 観光地の豊かな自然
② 番組に出た元気なおばあさんたちの魅力
、③ レストランのお料理を紹介
その結果 ⇒ ⇒ ⇒ ④テレビの編集力で◎◎を魅力的に視聴者に提供できた。
テレビ局の誤算はレストランよりも◎◎重視のイメージになったこと。あいにくと入手困難な食べ物なので追随して◎◎の良さを主張する番組はなかった。それはQさんにとってもよかった。
◎◎が長寿にいいならとっくに健康食品や医薬品になっているはずです。希少性と地域性で相乗効果をもたらした好例です……が、単なる◎◎でもこれだもの、おばあさんたちのコメントを流しただけで……テレビ局が本気出したら、世界を牛耳れるのではないかと思う。




