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第七十八話・ユニークフェイス

 ユニークフェイスとは、病気や怪我などによって変形したり、大きなアザや傷のある顔や身体を持つ当事者を指します。同名のユニークフェイス研究所の石井政之氏が名付け親。石井氏もまた顔面に血管腫あざをもっておられます。ジャーナリストさんなので文章がうまく、これに関する著作もあります。


 外見は文字通り見た目そのもの。

 目が二つ、鼻が一つ、口が一つ……それが見慣れないもの、大多数のそれでない場合がある。

 差別やいじめの対象になる。そのため自殺を選ぶ人もいる。

 石井氏が「顔の差別で人は死ぬ」 と言い切る所以です。今回は顔の差別を受け続けた人が誰にも(特に母親から)フォローされず犯罪を起こした話です。読後感が悪いですが、どうしても書きたいので書かせてください。




 わたしの知人の話です。Pとします。Pの毒親がからみます。

 Pはユニークフェイスでした。一度会ったらすぐにわかる。覚えられる。形成手術を受けるべき状態かつ受けられたはずですが、Pの母が許さなかった。Pの言い分ですので真実はわかりませんが……でも普段はそれを気にせず笑顔でいる人でした。

 誰も返事をしなくても、しゃべっている人でした。わたしはぼっち体質で平気でしたが、Pが寄ってくるので自然と一緒に食事をしたりするようになりました。そこでわかったのですが、Pに対して通りすがりの人が侮蔑の視線を寄こしてくる。

 カフェでもPがオーダーしたものだけ、ぐちゃぐちゃの盛り付けだったり……カウンター式の某洋食屋ではひどい目にあいました。他の人と行ったときはすごくおいしかったのに、Pと行ったときはめちゃくちゃな味付け。カウンターで作るところは見た。Pとわたしは同じメニューだったが、鍋は一緒のを使っていた。料理人がそんなことをするなんて……今も信じられない。あれは、わたしの勘違いではない。当時はわたしも若かったので調理人にも指摘するにも遠慮があった。元々内向的でクレームなぞつけられる性格ではない。Pもそうだった。

 極めつけは某ハンバーガーチェーンではポテトがPの分だけ凍っていた。わたしのものは、アツアツの揚げたてなのに。これにはさすがに驚き「クレーム付けた方がいいよ」 って言ったらPはなんと言ったと思いますか。

「冷たいけど食べられるから」

 全部食べていました。


 わたしには美人と歩いて周囲の男性の眩し気な視線を感じたことがあります。しかしPと一緒だと真逆の意味で注視されます。わざわざ立ち止まって見にくる。物珍しそう、軽蔑、嫌悪感……良いものではありません。やはり人間、特に男性は女性の容姿で態度を決めると思いました。それはもうあからさまでした。

 たまたま活動グループで苗字が近い順で振り分けられたので一緒に行動しただけで、ソレです。同じグループの人たちはあたりさわりなく、最低限のつきあいをするという感じ。Pがわたしにくっついてくるのは、わたしのことが好きなのではなく、誰かと一緒にいたいだけというのはわかっていました。周囲の奇異な視線もわたしは鈍感で平気だったのもPはわかっていたと思います。

 こんなエピソードもあります。グループ活動で連れ立った時、記念写真を撮りました。わたしの手持ちのカメラで。当時はデジカメは出始めで高価でした。だから重たいカメラです。その上、撮ったものをその場で確認できません。フィルムを巻き上げてカメラ屋さんに現像に出しました。

 出来上がった写真に、Pだけが映っていない。私が撮った分はちゃんと映っている。撮ってと頼んだ撮影者は意図的にやった。

 わたしはその写真を焼き増しせず、誰にも見せないまま処分しました。Pに対して哀れだと思いました。Pは当時の教諭からもひどい扱いをされていました。わたしは言い切ります。すべてPのユニークフェイスのせいです。

 P自身はわたしにはいつも笑顔でいました。しかし、二人きりで話をしてみると意外と怒りっぽい。表と裏の面が違い過ぎてとまどいもあり、深いつきあいはしなかった。Pとは異性や家の話、過去の話を一切しない。Pの話題は朝ご飯に何を食べたかなどで、はっきりいって退屈だった。わたしは一人で読書をしているほうが好きで、続きを読みたいときは邪険にしたこともある。適当なつきあいでした。


 ここから先はわたしの言いたいこと。

 ⇒ ⇒ Pは世間全体へ怒っていた。そしてその怒りの原因もわかっていた。その原因を創ったのも誰かともわかっていた。



 Pの積年の怒りは、Pの母親に向いた。母親に対して傷害事件を起こしました。

 事件を耳にして、今にして思い当たることがありすぎて可哀想に感じました。

 親が毒というのは、成長期の一番大事な時期に味方がいないということです。ユニークフェイスでの対応を教えてなかった、というよりも親としてできることをしてあげなかったということです。Pには自己肯定感が皆無だった。現在Pは出所しているはずですが、行方不明です。

 ユニークフェイスは幼少時から周囲の理解と心理的なケア、そして最終的には世間一般のユニークフェイスに対する理解を啓蒙をすべきです。そして形成手術も積極的にすべき。なぜかというと、Pについてのあからさまな差別をした人はごく普通の一般人だったから。ユニークフェイスという個性を認める以前の問題です。ユニークフェイスを人間として認めない人々がいる……わたしはPと一緒にいたことでそれを経験しました。これはもう幼いころからの教育が必要です。先に書いた石井氏は、小学校などでユニークフェイスについての授業をし、また実際に顔を触らせる。本も出す。そうやって見た目主義というルッキズムの悪い面を正していく。大変重要な活動です。

 幼児のころからユニークフェイスを持つ本人に対しても自己肯定感を保つよう周囲も配慮が必要です。Pの場合は形成手術をわたしも当時からすすめた。が、顔の話をするとすごく哀しそうな顔をするので、突き詰めた話はできなかった。Pの起こした事件は起こるべきして起こったと思う。


 美人の知人、そしてユニークフェイスのP、両極端な扱いを実際に体験したわたしは、社会人になってから整形手術をしました。すると一部の整形したでしょ~という年配のしつこい女性たちをのぞいた大多数が優しい。そして見知らぬ男性にまとわりつかれるという体験もしました。

 作家の中村うさぎは整形を繰り返しているが、美人ですねと褒められると、整形ですからと言い返す。わたしもそんなところがあって、容姿を褒められても別に嬉しくもない。美人には程遠いけど振り返られるほどのブスでもなくなってもです。

 美容整形を探求、突き詰めた人という代表をあげるならば、タレントのヴァニラさんでしょう。この人も整形をするにいたる最初のきっかけが父親の心無い言葉でした。鉄面皮だったかな、表情に乏しいということは、バカにされる原因でもある。元の顔を画像で見たらわたしと少し似ていて親近感がわいた。わたしもぼやけた奥二重の目元をはっきりした。そうやって人体の一部を武装した。Pのこともあって、整形したことはまったく後悔していない。


 話を戻します。

 ユニークフェイスに関しては周囲の理解が必要と書きますが、一番の味方である家族からの支援がないとどうにもなりません。Pは産んだ母親から幼少時から差別を受けていました。しかし外部から見て問題がなさそうに見えると、児童相談所もからんでこない。こういうケースもある。毒親は存在自体が問題だが毒親の自覚がない人もいるし、当事者も周囲に言えない場合が多い。

 事件にならなくともただ一度きりの人生を親を怨むことで終わってしまう人もある。わたしのように初老になって親が毒だったと覚醒することもある。Pに関しては逮捕、裁判、そして服役という社会的な罰を受けたが、親に対してはやりかえせた。結果的にはガス抜きができて良かったのではないか……と、書くと叩かれるかもしれませんが平気です。わたしもまた間違った育て方をされていたから。

 



NOTE同時掲載


こちらでは石井氏、ヴァニラ氏、中村うさぎ氏のページも文末に紹介しております。

 ↓ ↓ ↓

https://note.com/1fujitagourako1/n/ndee08d54a911

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