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第七十七話・縁がない人

憤りの記憶は何度でも再現、反芻される


 処分したはずの手紙が出てきた。差出人は当時一緒だったPTA役員。女性。直筆です。私宛です。

 内容は諸事情でPTA行事の欠席が続いた私を非難したもの。この差出人をOとします。

 過疎の学校といえども活動はあり、役員はリクレーションをしたあとにドリンクや軽食を準備する役目がありました。私は参加できないこともあると、念押しをしたうえで、役員を引き受けました。当時は実父が脳梗塞の発作で入退院を繰り返し、かつ母の通院の介護もしていました。父は要介護五の寝たきりとなり、施設に入れたことで一段落つきましたが、その前の話。医療や介護、法律関係は平日のみの稼働。だから仕事を休んで行く。一学期にはPTA活動も二度あり、都度準備はするものの当日は担任とOにお願いしていた。Oも快く応じてくれて感謝していた。

 三度目の活動。夏休みで親子登山。前から決まっていたとはいえ、これも都合が悪く同居人にお願いしました。しかしダメだったらしく、Oが怒ってきた。一人でやるのが嫌でずっと我慢されていたようです。わたしのかわりにわたしの夫がやるとダメだという。

 加えて当日の清算で三百円ほどの食い違いがでた。Oは発狂したように皆から預かった大切なお金なのに、あなたは活動に参加もしないくせにと罵ってきました。

 その手紙がそうです。当時の嫌な気分も再燃した。誤解とはいえ、泥棒扱いをされるということは、何年たっても納得できるものではない。金銭的な誤解は解けたがOは謝罪をしていないままだからなおさら。

 当時のOとは会話にならず担任にOの手紙のコピーとわたしの言い分を文書にしたため、担任同席の上で説明した。Oはわかったとはいうものの、終始不満気で「この人は一度もPTAに参加しない」 と言い立てる。前準備をしたこと、夫がわたしの代行をしたことがOの頭の中では計算に入っていない。

 PTA役員は夫が代行するとダメらしい。そのあたりは読者にもいろいろな考えがあるとは思う。


 以後のわたしのクラスのみPTA活動は逐一担任を介して活動することになった。Oとは今も不仲のまま。夫にこれをあらためて読ませると当時Oは妊娠中で情緒不安定だったのではないかと言う。思い当たったが、手紙の文面の強さにそれを差し引いてもダメだと感じた。ものすごく感情的な手紙は、書いたOの溜飲をさげても、結果として書いた人の本質を下げる。

 Oは、わたしだって仕事を持っているのに、ちゃんとしている。実家の用事だってわたしもちゃんとしている。用事が重なってもPTAの仕事を優先するのが当たり前だとある。

 夫は経年の劣化で黄ばんだ手紙を放り出して笑う。

「きみはOとは一回り以上も年上だ。要はきみが舐められていた。甘く見られていたってことだな」


 これに関しての救いは周囲の若いお母さんたちには事情を伝えていたので、Oに同調して直にクレームをつけてくる人はいなかった。


 手紙は残る。残さない方が忘れたままだったかもしれない。現在Oに対しどうしてくれようかと思うが、それもいずれ忘れるだろう。迷ったが、手紙を残しておくことにした。十数年たったけれどOに対する嫌悪感が増した。Oの夫も恐らくOの言い分しか聞いてないせいか、Oの家は郵便局だがわたしが行くと態度がなげやりでおかしい。縁がない人は縁がないままだ。

 残念だとは思わない。この状態もOが望んだことだから。忙しすぎてやり返すことは私もしないが、ここに記録として残しておく。 


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