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第六十九話・人生はジグゾーパズル。もしくは点在した氷河のすべては水面下でつながっているという話


 この世には定期的にコンビニ強盗事件が発生します。特にローソン。私の記憶ルームに浮かぶ氷河の一つ。先日も某ローソンのレジで強盗事件がニュースになりました。それで親戚のH叔母を思い出しました。

 正確にはHは叔母ではなく、母の従姉妹です。例の叔母Jは母の妹です。つまり、Hは母とJの従姉妹にあたります。Hは、昭和十年生まれ、実母が昭和十二年生まれ、叔母Jが昭和十四年生まれ。だから登場人物は全員もうおばあさんで今から書く事件に遭遇した時でも七十代でした。

 私の祖父と祖母、そしてHの両親は兄弟同士、姉妹同士です。Hの父親が兄、私の祖父がその弟。Hの母親が姉、私の祖母がその妹。通常の従姉妹よりも血が濃いはずです。実際母方一族は皆、顔がよく似ています。



 実母とHは、二つ違いながらとても仲良し。幼友だちであり、従姉妹同士。まだ母が元気でいたころは、Hも私の実家によく遊びに来てくれていました。 

 以下は母が元気で実家にいたころの話。Hは近所のローソンに買い物に行ったおり、強盗に出くわしました。そのまま私の実家に来た。Hは大汗をかきながら母と私にこう告げました。

「今、ローソンに強盗がいて怖いから逃げてきてん」

 Hが店内に入ろうとしたら、レジにナイフを握った強盗が店員を脅していたという。私と母は非常に驚く。

「大変だ。警察に知らさないと」

「いやや。このままで」

「な、なんで。店員さんも無事かどうか」

「いや、多分強盗は逃げたはず。だから警察には知らせんでええって」

 実際、レジの店員はいくばくかのお金を強盗に渡したらしい。強盗はまだ捕まっていない。Hは警察に目撃者として通報すべきだろう。普通はそう思うだろう。しかしHは「怖いからヤダ」 だけ。母はそんなHを笑う。

「Hは、小さい頃はそうでもなかったけど、やたらと臆病だからねえ」

 怖いのはわかるが、通報するのは市民の義務ではないか。私と母はHに、犯人の顔をみたのだったら、なおさら通報すべきだと諭すも、Hは断固拒否。

 強盗シーンを思い出すと怖いからやめて、というのでそういうものかと……これがパズルのピースの一つ。


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 数年後、若いころ農協で横領をしていたとF叔母から聞かされてから、Hが過度に警察を嫌がる理由にやっと合点がいきました。 

 今の私なら書ける。


 ……Hは、警察とかかわりを絶対に持ちたくなかった。高額の落とし物をしても届け出をしないぐらい徹底していた……


 そういや、Hと同居の家族もそうで旅行先で八十万円もした指輪を落としたが届を出さなかった。Hたちは会社経営の役員として名前を連ねている。その時は脱税バレが嫌だからだろうと思っていましたが違うね。

 昭和十年生まれのHは、中学校卒業と同時に徒歩五分もかからぬ農協で勤務。三十歳で退職して義妹夫婦の会社設立に出資。そのまま経理兼役員として名前を連ねている。

 昭和十四年生まれの例の叔母Jは、高校卒業と同時に徒歩五分もかからぬHが先にいる農協勤務。Hがやめたとき、一緒に退職したが数年後に舞い戻って農協勤務。呼び返された理由は勤務態度がまじめだったからと思う。Jは常に用心深く、しかし他人には気前よく寄付でもなんでもする女だった。再就職後は、市を定年退職して天下った組合長と不倫関係になってやりたい放題。地域女性初の農協支店長、平成になったときに農協十数店と合併。その地域女性初のJAグループ役員になった。

 戦前生まれの女性としてキャリアウーマンのはしりで華々しい経歴です。JもHも未婚のままで、周囲から仕事と結婚したヒトと言われていたほどに。

 Hは、四つも年下のJにまるで奴隷のように従っていたこと。これもパズルのピース。Hは、いつでも用心深く人の顔色をうかがいながら話すくせがあったこと、しかし寄付などのお金を出す時はJと同じく相場以上に気前よくふるまうこと。これもパズルのピース。

 

 母が倒れて引き取ったときにいろいろなことが明るみになったが、やはり一番ショックだったのが、横領の隠ぺいと実績あげに、母や私の名義を無断で使用していたこと。

 J曰く「私がいないと農協はどうにもならない」 と自慢していました。これもパズルのピース。その業績は私の実家を踏みにじったうえで作られたもの。私の怒りと恨みの種。

 母がいう終戦時の貧乏暮らしから急激に金持ちになった経緯があまりにも不自然。公共機関が祖父の農地を買い上げたからと言う説明があったが、詳細に調べると時期があわない。


 ジグゾーパズルの破片が私の思い出の破片でもあると見立てると、長生きした結果そのパズルが集まりつつある。

 Hの人の顔色をうかがいながら顔を歪ませて話す癖。病気でなくて心情的なものだとしたら、ウソをついているときの緊張感、バレたら終わりという不安。それが表情に出ていた。単なる推測だと言われるかもしれぬが、私はJやHの部屋の中味も知っている。ベッドの上に宝石、衣類、着物が山積み。好きなものを好きなだけ買う生活。そりゃ縁談があっても、足抜けもできなかっただろう。

 不倫に関しては職場でもバレバレだったらしく、ある時同僚から指摘されたらその場で違うと泣き叫んでしばらく出社しなかったそうです。でも私はマンションの一室で平日の午前に会っていたのをしっている。

 JとHは逃げ切ったまま、篤志家の顔をしたままこの世を去ろうとしている。私は追随もできず、歯ぎしりしてここでひっそりと書き連ねるだけ。私の実家がJの悪事の一端として利用され、世間にも申し訳ないと思っていた。天下のJAは、裁判外紛争解決にADRをぶちあげた私をJの主張通り、勘違いとされてしまった。私はJAに対しても恨んでいる。ホームページに誠実な対応をしますと明記しているが、嘘ですね。弁護士の面前でも私名義の情報の開示を拒否するクズっぷり。ADRでのJA側の対応を見て確信した。⇒⇒⇒ そんなんだから、JAの横領事件が絶えない。JA共済や貯蓄関係は銀行と同じ業務なのに、どうして未だに農林水産省管轄になるのか。金融庁管轄にすべきなのに、国会議員ですら誰も何も言わない。

 組織に関しては何ら権力を持たぬわたしにはどうにもできぬ。しかし、私は、JとHは地獄に落ちろって呪っている。

 ローソン他各種コンビニは便利ですが、強盗にとっても便利。今回はそれに派生したパズルのピースを組み立てたという話です。




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