第六十六話・他人からねたまれるということ
私は小説やエッセイを書いていますが、別のジャンルでも首をつっこんだりする雑食性の人間です。さて顔見知り程度の人に愚痴を言われました。Bさんとします。Bさんは私より年長の女性で、小説ではないが某ジャンルの仲間と月に一度顔をあわせて、自作を発表したり、同人誌を作ったりしてわきあいあいと楽しんでいました。私のようにネットではなく、同じ趣味仲間と実際に顔をあわせて活動する。旧式創作愛好家タイプですね。
さて、このBさんが、とある賞を射止めました。他の仲間も応募していましたが、全員選外です。Bさんが受賞を告げたとたん、仲間の態度が豹変し、口をきいてくれなくなった。会合にも誘われなくなった。Bさんは、若くして結婚、ずっと専業主婦。人間関係に悩んだ経験があまりなかったらしく、落ち込んでいます。私は話を端折りました。
「嫉妬ですね」
Bさんが私に愚痴をいうのは、私も地方文学賞を射止めたことを知っているから。でも、一緒に怒ったり同情してくれると思ったなら間違いだ。
「別にいいじゃないですか。仲間とやらに無視されても」
「でもぉ」
「元々創作は共同作業じゃなくて一人でやるものですし」
「そうですね、そうですけど……」
Bさんは、受賞よりも仲間との合評や食事会の方が大事なのか。受賞がきっかけで嫌われるのが嫌なのか。私は言いました。
「とにかくおめでとうございます。これからもがんばりましょうね」
「でもぉ」
「Bさん、出る杭を集団で打ちまくる人とわかって、それでも仲直りの為に受賞を辞退しますか」
「それはイヤ」
「でしょ。今はSNSの時代ですし、創作したらネットで発信したらいい。私もやってますし」
「そうねぇ」
一度でも友情にヒビが入れば修復は難しい。仲間とやらが欲しいなら新しい仲間をさがせばいい。
覆水を盆に返したいなら病むしかないと思う ……Bさん見てるかな。
 




