第六話・偉い人はうっとおしい?
大きい組織にいたときの話。職場の親睦会がありました。今と違って当時は絶対に参加です。葬式などやむをえない事情以外は強制です。
で、その時のテーブルわけの話。六人一つのテーブルでしたが、偉い人は新人と一緒に卓を囲みます。当時は新人はお酌係だったので、コミュ障的な私は困惑……いやもう、どうしようかと数日前からずっと悩みました。当日は三歳上の先輩が偉い人の隣で私は一番遠い席だったので難を逃れました。今でも感謝しています。
その時から数十年後、違う職場で創立何周年とかでレストランでお祝いとなりました。私は非常勤パートの立場で常勤の手助けという立ち位置です。部外者ではないが、中心人物でもない、いわば窓際族。スピーチを聞いて拍手しておいしいものを食べてあいさつして頃合いを見てひっそりと帰宅しようと思っていました。
休憩時に常勤の若い新人たちが話をしています。
「偉い人と一緒に座りたくない。偉い人は偉い人でテーブルを囲んでほしい。こちらは緊張するし、きれいに盛り付けてあげなきゃいけないし、ビールがあいたらそそいであげなくちゃいけないし、会話も困るし第一おいしいものがおいしく食べられない。一緒に座るのってすごい迷惑よね」
創立時から頑張ってきた偉い人、これを聞いたらショックだろうな。しかし平成生まれのひとたちはなんでもはっきり言う。その偉い人はきさくで善い人には違いない。でも新人から見たら緊張するし、うっとおしい。偉い人だって今どきの新人がなにを考えているかと楽しみにしているでしょうけれど、現実はこんなものです。
そのあたりは昭和時代となんら変わっていません。その新人はいざその場では、偉い人の隣になってかいがいしくお酌をしてあげました。こういう人はきっと出世するでしょう。影で文句をいいつつも、ちゃんと気をきかせていました。偉い人も笑顔だ。セクハラやパワハラは聞いたことがない人だし、これなら双方とも仕事にもプラスがでる。
それにしても、いわゆる偉い人も大変です……若い人々の意向も知りつつ、企業を発展させるべく会話をあわせて努力する。新人相手に若い時の苦労話をするのは、今はもう、はやりません。同じ話を繰り返したり、お酒の場で訓戒は厳禁です。威張ると尊敬どころか一発で嫌われます。周囲にお追従するものしか残らなくなります。ふんぞり返るだけの偉い人なんて、無用の長物ですよ。ついでにお酌の強要もやめたらいいですね……と、一生涯通じて職場の片隅に生息していた私がここでもひっそりと書いてこの場を去ります……。