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第五十四話・恐ろしい人々


 袖振り合うも他生の縁……古来からあることわざです。

 ……道を歩いていて見知らぬ人とすれ違うのも、前世からの因縁による。行きずりの人との出会いやことばを交わすことも単なる偶然ではなく、縁があって起こるものである……そこから、縁は大事にしましょうという話につながる。が、今回はつながるどころか、お金を取られた話を聞きました。強盗ではなく合法的に……なのでイラクサゲット。

 手短にいうと相手は一般人だが、怖い入れ知恵をする人が後ろに控えていた……普段はかかわらないが、交通事故で、かかわってしまったパターン。警察は、事故処理はしてくれてもその後の交渉は民事不介入。相手が激高して殺すなど脅して着たら警察はかかわってくれる。犯罪ではなく、それでいて裁判すると警察はもうかかわりがない。民事扱い。そのどうしようもない話が怖いのでイラクサシリーズに入れます。

 

 Qは、とある小道で接触事故を起こしました。よくある事故。事故相手の助手席にいたのが若い女性。この人をRとします。相手方運転者はこの話に関係ありません。

 双方の車の一部がへこみ、状況からQは加害者となった。幸い誰にも怪我はなかった。また双方とも保険加入をしており、警察も呼んで保険業者にも交渉を依頼した。割合分に応じて金銭のやり取りがあった。

 ところがその後、Rの代理人を名乗る弁護士から内容証明が来た。実は車はRの父親の名義だったという。Rは事故にあったことを黙っていたが、整備会社の連絡でRの父にばれたらしい。そのうえ、Rは事故直後は黙っていたが、怪我をしていたという。怪我の他にも、あとで腰が痛むなどの症状が出たという。ゆえに治療費の請求、会社を休業した分の保障、車が全損した分、新車が来るまで約一カ月レンタカーを借りて通勤していたのでそのレンタカー代、すべてのもろもろを請求するというもの。

 しかしQは、保険会社に任せて運転者と交渉はしてもらっていた。助手席にいたRとRの父親なる人物は交渉の視野外だった。車がRの父親のものなら、今までの交渉はなんだったのか。

 あわてて、なじみになった保険担当に交渉してもらうと、担当者がわざわざ「Rの父親がやばい」 といってきた。保険範囲内だけでの交渉はもう完結しているので、ここから先は民事になる。別に弁護士依頼してやってくれという。そういうことってあるのか、とQはびっくり。ハシゴを下ろされた気分だが、Qもまた法律に疎い。警察にいっても民事だからという。民事ってなに? 状態のQも、ともかく内容証明が来たので何とかしないといけない。伝手を頼って弁護士を雇う。その弁護士も「Rの父親とその後ろについている人と受けた弁護士がやばい」 という。Qはただごとでないのがわかり青くなる。


 一見平和な時代に見えてもこの世には魑魅魍魎が蠢いています。Qあての治療費他請求一覧や車はとっくに廃車にしたので新車購入費用と、その手間賃、新車納品までに借りたレンタカー代まで請求が来ている。Rの治療費は事故により容姿に傷がついた、事故後に腰に異常を感じて歩きにくくなったと主張する。休業補償も何もかも全部。休業補償ってわかりますか? Rは父親の会社に勤務していたが治療のために出勤できないからその給料分もそっちが出せという。弁護士通じて入手した証拠のRの給料明細を見ると相当な高給取りです。精神的な慰謝料も全部あわせて八ケタ万円の請求です。車関係は整備会社が廃車にしろと言っていただけ。実証はない。怪我に関しても診断書もない。医院の領収書のみあり。でもその内容も記載なし。Rの父が経営している会社は登記上では実在しているが、住所検索をすると遠方の民家、それも長屋で、どうみても会社組織ではない。Rが担当していたというNPO法人の取引も事故のせいで出勤できずパアになって、その損金まで請求している。Qがこれに応じると人生破滅です。折り合う点が一つもない。そんな訴状でも、形式が整って入れば裁判所は受け入れ、裁判開始を書面でQに告げる。

 Q側の弁護士は言う。

「この世には恥も外聞もなく、搾り取れるものは搾り取る人がいます。Rの父親がそれです。一応普通の民間人を装っていますが……わかりますね。それでも訴状を出された以上裁判にも出席すべきです。欠席すると敗訴、つまり請求に応じるとみなされます」

 欠席したら敗訴……つまり負けになる。

 金払えという恐喝だと警察案件だが、慰謝料請求は合法だから向こうも弁護士を使って堂々としている。こういうのは裁判に立ち会った裁判官も書記官もわかっていると思う。取れるものは全部取ろうとする原告か、必死な思いで慰謝料請求する原告かどうか……でも訴状が出たら、不備がない限り、裁判所は裁判し、裁判官は判決をくだす。

 幸い判決は、詳細な診断書がないなどで医療系はゼロ。しかし、Rの父の会社員としての仕事ができなかったという慰謝料、怪しい整備会社の廃車にした理由を述べた証言、そういうのは大幅に減額されたものの、一部認められてしまいました。八ケタ万円から七ケタ万円になりました。十分の一以下になったけれど、大金には間違いありません。原告は大幅な値下げでも、納得済です。Qさんはこれ以上原告にかかわりたくなくて、慰謝料を何とか工面して支払いました。双方の弁護士で、今後請求はないという念書をかわしたのはもちろんです。

 原告のRは、見た目本当にごく普通の女性で、裁判中は顔半分を隠す眼帯をしており、松葉づえも持参していた。でも、裁判の席上では、下を向いてずっと黙っていました。相手方弁護士まかせです。

 私はそれを聞いて本当に怖いと思いました。Qさんに対する脅しがあったわけでもなんでもない。法律に従って弁護士を使い、裁判をされただけです。

 その行為自体は正しくても、反社会につながっていたとわかると恐怖でしかない。警察は脅されたわけでなく、請求だと民事扱いで動かない。警察はアテにならない。

 魑魅魍魎人種にかかわると終わりだわ。Qさんは幸いお金があったからいいようなものの、お金がなかったらないで、それも調査されて別のやり方で合法的に脅されるのだろう。

 地道に生きていても、こういうことが起きる。だからみんな厄払いと称して神仏に祈願に行くのだと感じた話です。ただQさんはひどい目にあったとはいえ、それである意味大きな災厄は終わったと言える。得して儲かったと感じるR一家のほうがみじめに思える。それでは終わります。



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