表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/95

第五十三話・どなたにも分け隔てなく



 今回は形の良い小型イラクサ譚です。

 Oさんの夫はちょっとした肩書をもった人です。しかしOさんにそれをいうと嫌がります。Oさん自身、◎◎の奥様という立ち位置が嫌だとはっきり言います。そして最近知り合った私とも気さくに話をしてくれます。先日Oさんがめずらしく某所の某を非難していました。自由診療のところといえば、お察しですが、ちょっとしたトラブルを経験されました。説明不足と技術不足……Oさん自身も関係者なのである程度の内情はわかる。

「あそこは患者に対する情がない。説明不足を指摘すると開き直った。やり直しを希望するなら応じるが、上乗せの別料金が必要だとふっかけてきた。いくらでも患者が来るからって、不遜な態度をとってよいはずがない」

 ……と気を悪くしている。Oさんは温厚な人なので、よっぽどのことです。するとその場にいたPさんが、Oさんに提案した。

「じゃあ、ぼくがもっと良い先生を紹介してあげる」 

「お願い」 と、Oさん。で、Oさん的には、そこがとてもよかったらしい。

「先生はもちろん受付事務の人に至るまでとても親切で丁寧で本当に行ってよかった。Pさんのおかげよ」

 私はOさんにある言葉を言いかけてやめました。言いかけた言葉は以下のとおりです。


 ……Pさんは、あなたのご主人の名前を出したと思う……


 でも言わない。繰り返しになるけど、Oさんはご主人の七光りが嫌いな人ですから、私がいうと機嫌を損じられる。まさに沈黙は金なり、平和なり。

 Oさんは、先のトラブルの時でもご主人の名前を出したらよかったのに。でもそれをしないし、そういう意識がないからこそ、結婚数十年たっても未だにベタぼれされており、誕生日や各種祝い事にプレゼントや外食に誘われる。結婚後も結婚前の状態が長年続いているのはすごい。夫婦ケンカしたこともないそうだ……こういう理想の夫婦もあるのね。

 Oさんの不興をかった某先生に対しては、Oさんは周囲に言いふらす人ではないので大丈夫だが、Pさんがせっせと広めている。その某先生も、どなたに対しても誠意ある対応をすれば間違いなかったのに……知らぬがほっとけ、どっとはらい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ