第五十話・仲間に入れて
前話で元同級生を話題にしたので、ついでに。
高校一年生の同級生にKがいました。私はKがなんとなく苦手でした。周囲には人当たり良くても私には冷たくする人の一人でした。今回はここまでが前置きです。
さて私には卒業後に会う知人が二名いました。L.Mといって高校三年生の時の同級生です。私を含めてどちらかといえば、性格が穏やかで内向的です。社会人になってから数カ月に何度かお茶を飲んでいました。ある時、Lから連絡がきて、Kが会いたい、次はいつ会うのっていうので、次のお茶会で一緒でもいいかと聞いてきました。
本当はイヤでしたが、承知しました。そうでないと今後貴重な友人のL.Mと会えなくなる。当時の私は孤独を平気だといいつつも、本当は怖がっていました。
お茶会は、私、L.M。そしてK。
Kとは数年ぶりにあう。あたりさわりのない近況報告で終わりましたが、Kは駅のホームで別れるときに「今度いつ会う、ねえ、いつにする。来月はどう」 とLとMにしつこく聞きます。そばにいる私には聞かない。そもそも言葉をかけない。それでもまあ、LとMは折れてKも交えて二、三か月に一度会うことになりました。
その後、私は別の知人から、Kがそっちに関わってないかと聞いてきました。いぶかる私にKがいわゆるマルチに引っかかって総スカンをくらった話を教えてくれました。同級生の結婚祝いを皆でするときにお金を集め、それで本人と皆の承諾なしにそのマルチ商法の鍋セットを注文したそうです。Kをそこまでに変貌させるマルチって怖いです。結婚する本人と皆のためにって。それで疎遠にされ、私やL.Mのグループに入りたがったのかと思いました。
Kもマルチ鍋の件で懲りたのか、私を含むL.Mグループには、マルチ勧誘はしませんでした。私はKに直接マルチの件をどう思っているのか聞きました。強制はしていないの主張です。さすがに嫌がっている人にあれこれ聞くことも私も苦手です。話はそれで終わりました。しかしKは、私ごときからマルチの件を質問されたのが相当に嫌だったらしく、仕返しをされました。
さて、このメンバーで東京へ遊びに行くことになったのですが、私とKが仕事の都合で、先に行くL.Mを追いかけていく形になりました。新大阪から東京まで行く新幹線の切符はKと隣り合わせです。
今はどうかわかりませんが、新大阪が始発の新幹線は早めにホームに入る。私は座席に座ってKを待っていました。ところがKは時間になっても来ない。新幹線は定刻通りに出発しました。驚いた私は携帯電話を持っていたのでKの家に電話しました。Kの母親が出て来て勤務中のはずです、という。そこで勤務先の学校の連絡先を聞いて直接電話しました。Kは電話口に出てきましたが、夜に行くからというだけ。忙しいのかそれで電話が切れました。
Kは私の携帯電話番号を知っているはずなので、時間変更ならば知らせるべきだろうと思いました。しかし、夜に集合しても謝りもしない。遅れたけどちゃんと来れたからいいじゃないというだけ。学生時代からKに軽視されていたのは知っている。学生時代ならともかく、社会人になってまで何を言われてもされてもへらへらしたりはない。頭にきましたが、L.Mはまあまあとなだめたので、せっかくの旅行ですし我慢しました。それ以降私はKがいる旅行には参加していません。我慢して参加するより、不参加の方が少なくとも悪い思い出はできない。これにつきる。
こうしているうちにKの自己本位な性格がL、Mにも伝わるようになりました。先にLとMが結婚して私もKも式に呼ばれたのですが、次にKの結婚式の際に、先に結婚したMにお結納の時の振袖や帯、新婚旅行用のトランクなど、結婚前後に使うものを貸してくれといいます。Kは、Mの家柄は良く金持ちであるので、良いものを持っているのを知っている。貸してよ、というのは、Kらしい話だと思いました。
Mは断ったといいます。一度限りしか着ないものでも思い出だから貸したくない。私はそれで当たり前だと思う。いや、それよりも前に一生に一度の大事な儀式に使ったものを、簡単に貸してと言える。Kはマルチの副業でお金を相当にためたらしく結婚後に注文建築の家を建て、仕事も出世して教務主任になった。私が遅くに結婚し、頑張って三人目を産んだときに、二人しか出産していなかったKは、四十すぎてよく産んだねと言ってきましたが、「赤ちゃんはかわいいよ」 と言い返しました。その会話があった翌年の年賀状を見ると「三人目を産みました。女の子でした」 とある。逆算すれば私の出産報告した直後から妊娠すると月日があう……Kの勝気な性格は出産でも発揮されるのかと、ぞっとしました。あくまでも推測の話ですが、Kならやりかねない。
またKの実家の事業をうけついだKの弟夫婦に子どもができない、不妊治療をしているが無理だろうと話す。言外に弟夫婦に子ができねばそれはKの子にそっくり実家の財産が行く、それを楽しみにしている……上機嫌に話すKにぞっとして、縁を切りました。
Kと私は単に相性が悪いだけと思います。また推測にすぎなくても私の思想からはKはそう考える女だと決めてしまった。そう思うに至る長い履歴がどうにも私には無理。縁がない人はとことん縁がない。生き方がどうの、思想がどうのという話ではない。我慢の糸と縁が切れてせいせいしている。それでは終わります。




