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第四十三話・スピリチュアルの偽物の話



 母が頼っていた霊能者には、信者さんがいらっしゃるので公表は今後もないですが、子としてどう思っているかをあらためてエッセイにして形に残しておきます。

 占い好きの母に育てられたおかげで、私もまた占いが嫌いではありませんでした。悪いことを言われたら気にしてお祓いに行きました。でも、来月から三年、悪いことが続く、◎◎先生にあと◎年待てと言われたので、今年はやめておこう。困ったことが起きたが、それは前世の因縁から来ているらしいので祈祷してもらおう。先祖霊が浮かばれず祟られているらしいので供養してもらおうなどの話が普通にありました。

 長じて私は先祖霊が子孫に対し、死してなお、そんな力を持つとは思えない。子孫の運命を狂わせたり病気にさせたり困らせたりできるの、本気で信じるのと聞くと罰が当たると恐れる母でした。先祖霊が子孫に危害を加える発想自体おかしい。でも霊能者は真剣です。母は霊能者の力を封じ込めたお守りを購入して人生これで良しとなぜ思えるのか。

 霊能者の根城の入り口にあるカウンターには、大小の仏像はじめ数珠やお守り、魔よけのお札、そしてお札入れなどが綺麗に配置されていました。全部売り物です。相談事に乗って不安を煽り、これを持っていれば大丈夫だから購入しなさいという流れです。何度でもしつこく書きますが、母は自分語りが大好きな女なので、霊能者にとっては母の望む答えを言いやすい。さぞ良いカモだったろうと思います。数十年に渡ってその霊能者の根城を見ていますが、献金のおかげで数珠や札を売る販売員さんも増えてにぎやかです。祈祷する場所もきれいになっています。宗教法人にすると税金はないので、そうやってより多くの信者さんを呼び込むのでしょう。どこの宗派もご縁日などの行事は年間でも月間でもあるので、そのたびにお金が入る仕組みです。


 さて私は過疎地に嫁ぎ、驚いたことがいくつかありますが、宗教関係では昭和時代に誇大広告で問題になったところがまだ活動していました。これも名前を公表しないですが、知人がひっかかったので書いてみます。

 地元の折り込み新聞チラシです。人生の悩み相談解決に向かい、すべてを好転させるとある。期間限定で公民館でお待ちしています……こういう集客はまず自前の建物を持っていません。カモを求めて移動していきます。

 チラシには、病気や引きこもり、不妊などありとあらゆる人々の悩みをコンパクトにまとめています。体験談の掲載はすべてそこに相談したおかげで人生がうまくいくようになって感謝しているというもの。とかく間口が広い。お年寄りは未だにネットをせず、新聞のチラシで情報収集しますのでそういった免疫のない人をターゲットにしているのでしょう。

 知人から聞いたので、私は彼らの手口を詳細に知っています。雑誌にも書かれたので知っている人も多いでしょう。まずは相談の電話。その流れで、受付係が相談者の住所氏名生年月日を聞きます。電話をしたのは相談者本人もしくは家族ですので、まだ顔も知らない受付に容易に個人情報を明かします。受付から話を聞いた霊能者とグルの仲間がネットで情報収集、時には実際に現地に出向きます。自営業なら実際に店に入り、支店などの位置を確認します。また普通の一般家庭の家を外から見るだけでも間取りもある程度はわかるので、打ち合わせをする。

 さて相談者が霊能者に会ったら、己のことを見てきたように霊能者がびしばしと当てる。

「玄関すぐ横にお風呂がありますね」「あなたの周囲には◎◎があるでしょう」など……とにかく、まず信用させる。それから不安をあおり祈祷に持ち込む。

 その知人の親が知人の不妊に悩んでおり、連れていかれたクチです。知人は今どきのヒトなので半信半疑です。霊能者は自信たっぷりに先祖霊が邪魔しているので、五十万円の祈祷料を払えば子供が授かりますと断言する。知人親はその金額なら簡単に払える金持ちですが、あまりに性急で断ると態度が変わりました。霊能者と受付が「子どもができなくてもいいのか」 とすごんだそうです。これで詐欺だとわかり、すごく怒っていました。でもご主人の生年月日などすべて教えてしまったし、お金を払ったわけではないので警察にいうこともなく、そのままです。

 おそらく気が弱くて信じ込みやすい人だけを相手に、そういう商売をしている。お金のために、その人の弱みにつけこんで儲ける。都会だと記事にもなったので敬遠されるが、過疎地ならまだ大丈夫だと営業している。


 ある患者さんがそういったところのとりこになっていました。その人は隠し事ができない人で、その◎◎様がどんなにこの世のことを心配しているかを世の中の人はもっと理解すべきだという。

 心の拠り所がないよりは、あったほうがよいですが、その救世主からすべてを搾取されているのに気づかない。とてもピュアで繊細で良い人で、救世主さまの意に沿える献金ができなくて悩まれていました。お金に変えられるものはなんでも売ったあと、体調も悪くなりびっくりした家族がそこの教会から連れ戻して病院に入院させました。でもその患者さんは、心配する家族より救世主の意向が心配でした。完全に洗脳されていましたね。

 救世主だろうが霊能者だろうが大金を要求するのは詐欺です。人を救ってあげると見せかけて儲ける人たちです。私には他人の人生のかじ取りはできません。職務で知り得たとしても、業務外だし僭越だし余計なお世話なので黙っています。

 私は地獄を今や信じてない。単なる弱者の気休めにすぎない。だけど、心の優しい人、気の弱い人を騙して生きている偽物の霊能者や救世主さんは地獄に行くべきだろうと思います。




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