第三十七話・それぞれの夫の立場 ●
実妹Zには夫がいます。基本的には、良い人だと思います。母はZが二度目に結婚式をあげる時に、とても喜んでいました。
「よくぞあんな子を引き取ってくれた。のどのポリープが何度切除しても出てくるし、尿管結石も慢性化しているので治療代も助かる。もらってくれる相手に頭がさがる」
生みの母親にこんなことを言われてまで嫁に出されるZもZだけど、本当の話。外面がいいので、Zの友人はそんなことを知らないどころか、Zを哀れみ、Zの姉である私と母を憎んでいると思います。
Zの前の夫がそうだったし、Zの求めで真夜中で車を出して、パニックを起こして泣き叫ぶZを引き取りに来た二人組の女性もそうでした。バレエがらみの友人でしたがあとで年齢もサバをよんでつきあっていたZをどう思っているのだろう。
Zの虚言癖を知っていたからこそ、私は早い時期から今後のために、母への身体的虐待が判明すると診断書を取っておきました。他にも電話の録音、数分おきに恫喝の電話をした着信記録など保管済みです。母の通帳からお金を引き出す時もです。未来に確実にくる母の死亡後の裁判に向けて。
そう。Zが例のクソ叔母Jとつるんで何をするかわからないから。外部の人に状況をわかってもらうためには、そうするしかない。刺激的というか、変な人生だけど、私の子には禍根を残さないようにしたい。私も後顧の憂いを失くしてこの世を去りたい。そのため、少なくともZよりも長生きしたい。でもそうはうまくいかないのが我が人生。だからこのエッセイも粛々と身内の恥をさらして書いております。
私の同居人は、私の家族歴や根深い問題を知っていますが、一歩引いた姿勢で決して介入しません。母と対面した際も、母が親戚の悪口やZの愚痴になると、すぐ察知する。そして母の故郷大阪の昔の風習などを教えてほしいというスタンスでさりげなく話題を変える。あの辺りは立派だと思う。
母は私の夫のことを、高卒の田舎者といってすごく嫌っていましたが、大阪の昔話を興味津々で聞かれると機嫌がよい。母は結婚十数年にしてやっと私の夫のことを「ええ人やったんやな」 と褒めました。結婚反対当時、夫を人間扱いしなかった母がです。謝罪しないところがとても母らしい。でもそれが精いっぱいなのだろうと思います。
さて、私はクソ叔母Jたち、実妹Zに怒っているが、夫と話をしていたら、夫はZの夫に対してすごく怒っていた。「なんで」 と聞いたら彼にも言い分があった。それを今回の話題にします。視点が変わると思考もこんな風になるのかと思うに至った例だと思うので。
それではいきます。
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……君の実家はさあ。君の母親含め、女性の立ち位置がそれぞれの夫よりも強いよね。それで女同士で憶測で動いて憶測で怒ったり悲しんだりしてない? それっておかしくない? でもそんなことはもうどうでもいい。
ぼくは、君の実妹Zの夫が「さらにおかしい」 と、思う。彼は Zが怖くて何も言えないのかな。いつも無言を貫いているよね。何ら行動を起こさないよね。
私は夫に言う。 ⇒ 「違うよ。ZがZの夫に何も教えてないと思う」
夫 ⇒ 「Zの言いなりなのか。それが本当なら、もっとどうかしてないか」
でも私はZを知っている。 ⇒ 「Zは幼いころからいつでも被害者の立ち位置にいたがる人間だった。前の結婚でも私が介入して夫婦仲を壊したことになってるから、二度目の夫にだって、それぐらい言いくるめることは朝飯前でしょ。だから意図的には母にも私たち夫婦にも会わせないようにしていると思う」
実は一度目の結婚相手もそうだったんだよね……そっくり同じ。Zの一度目の相手は、関空にハネムーンの見送りが初対面でした。あいさつする私に無言でそっぽむく男でした。Zがなにか言ったなと思っていました。案の定、ハワイ帰国後一週間で別居、離婚になったが、叔父が私に電話してきて「Zの相手が、離婚するように仕向けたと言ってきているが、なぜそんなことをした」 と責められました。離婚をさせたかったのか、離婚させてうれしいのかと。叔父も叔父です。叔母からも最低だと責められました。
一度も直接の会話もしていない相手に、どうして離婚を仕向けられるのかと思う。私はそんな知能犯ではない。Zから相談を受け別れた方がいいよねというので、その話が本当ならば私なら別れると言っただけ。それが別れた原因になるなら、Zは説明すべきだろう。
だが、Zもずるいので何も言わない。Zが離婚を決意したのではないようにふるまいたいのだろうと。Zも幸せになりたかったと思うが、姉の私を巻き込んでまで己をよく見せたいってどういう神経だろうと思っている。
あれから二十年たってもあの時のくやしさを思い出す。どうして私はいつも悪者になるのだろう。Zが例の相手と別れたくて私の意見にして私のせいにしたとしか思えぬ。
「姉が別れるべきだと言うし、別れましょう」
叔父は私とZが普段から不仲なのに、それがどうしてわからなかったのか。
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夫に言わせると、そこも私の実家の怖いところだという。長じて令和の現在、母の嘘、叔母の不祥事、別叔母のばっくれもあって、夫に言われたことが全部悪い方に露見した。でも結局私が貧乏くじをひいている。
夫は、ZよりもZの夫が嫌いだ。私達夫婦はZとZの夫から着信拒否をされているので、叔母のことでも動けないし、知らせていない。でもZの夫がZからなにも知らされてないとしたら、逆にかわいそうではないかとも思う。
しかし、私の夫はそれも違うという。親族の争いでそれぞれの夫という立ち位置から見るべきものはある。第一血縁関係がないし、現時点では叔母に関しても利害関係がない。でも仮に夫同士がタッグを組んでも、私とZとは元から不仲だし、もう無理だとも思う。
親戚同士のもめ事は巷に普通にある、というと、夫は夫親族にはないぞという。私の母方一族が変なのも事実。でも、そこまで言わなくてもとまたケンカ。
なぜ叔母Jの不祥事だって露見しても誰からも責められず、私だけが責められるのか。徹底して私は被害者だと思うのに。
叔母の不祥事の件以来、夫婦仲は確実に悪くなった。重ね重ね叔母への恨み、Zへの恨み、そしてそれを放置したまま痴呆になった実母への恨みがうっ積して、私もまた病みつつあるのかと思っている。危ないです。
 




