第三話・占いや霊能者関係余話
母が尊敬していた自称霊能者の話です。私はその人が嫌いでした。詐欺師だと思っているので何度も忠告した。でも、母は「当たるから」って通うのをやめない。母のように自分から事情をべらべらしゃべる人相手なら、霊感ゼロの私だって悪いこと全部先祖霊のせいにしてお金をもらう自信がある。私、金儲け主義の自称霊能者大嫌い。
土地の相談をしたときについていきましたが、土地の話だとわかると突然自称霊能者とその手伝い人が張り切った笑顔を見せました。一瞬でしたけど。母はそういうことに気づかぬ。あっという間に数十万円巻き上げられても「ありがとうございます」 といって拝む。
母が倒れて引き取った後、無人の実家で私が一番先にしたことは、その霊能者が母に買わせた観音様像を閉じる事でした。これを拝むと悪いことは起きず絶対に幸せになりますと保証していましたが、その観音像はZの母に対する数々の狼藉暴力暴言をじっと見ていたはず。効果なしだとはっきり言える。結界を貼って悪いものを封じたという触れ込みの東西南北の色紙もはずしました。さすがに可燃ごみには出せず、いずれ神社に持ち込んで焚き上げしてもらうつもりです。
それにしても宗教法人って儲かるのね……ホームページもできているので閲覧したが、信者が献金するので施設周囲が立派になっていく。占いや霊感、お告げの類は政治家と違ってなにをいっても許される。それでいて人の人生を左右する。悪いことばかり伝えて、祈祷でこれで大丈夫ですという。それでお金を儲けて人助けになって尊敬もされるのが不思議です。信者は幸せになりたいのは誰しも一緒、でも自称霊能力者にすべてを託し、言う通りに動く人生で満足できるのか。
母は最近になってやっと「騙されていた」 としみじみ言った。いまごろわかったのか……その霊感師は母に対して◎◎才まで生きることができるとお告げをしている。本当だったら、この世に医師や病院は不要ですね。さて、どうなるか。
母の見栄っぱりは叔母Jの金持ちぶりのコンプレックスの裏返しです。初老になった私は叔母Jの虚飾の人生をあざ笑う。それでも時効で罪を問えずJAも公表を拒み、叔母が完全犯罪をしたことに怒っている。それらをエッセイや小説のネタにして全世界に向けて発信している。たとえ世間が無反応でも。
母は私のやりたい事すべてに反対をする人間だったので、私が小説や詩を書いて発表していることも、母のいう、みっともない大人バレエをしていることも未だに知らない。
長女の私をそうやって可愛がって育てたと母は信じ、私も母を看取るのは当然と思っている。でも正直複雑な思いです。母方の親戚にはADHDが多いが、もしかして母もと考えたとたん、今までの違和感が氷解しました。寝たり起きたりの生活でもなお、未だに私に執着して介入したがるが、心理的に適切な距離をとって介護をしている。現在のコロナ禍で診察時以外は家族でも施設内は立ち入り禁止で逆に有り難い。
でも母の人生は、一体何だったのだろう。虚言を続けた叔母Jも然り。そしてそれをつらつらと書き綴る私って何者だろう。
私の子に対しても、母は頼んでないのに霊能者にみてもらい、将来をお告げしてもらったが、当たってない。霊感師に頼り切る人間は愚かだ。閉じた世界で幸せに暮らせばいいが、私に強制しないでほしかった。やっと覚醒した母にとっても高い授業料だったがこれも人生でしょう。