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第二十九話・顔マスクは顔下着


 このコロナ禍、人の顔を覚えるのが苦手な私には苦難の時期でもあります。加えて感音性難聴者なのでマスク越しの声は困る。低くて籠りがちな年配の男性だと会話はほぼアウトです。筆談に応じてくれない人もいます。踏んだり蹴ったりです。

 ところで先日幼児と接する機会がありましたが、当然ながらマスク越しでした。年令は二才。きょとんと私を見つめる女の子。彼女にも小さなマスクがつけられています。職場の窓口だったので、彼女親子との間にも、私が嫌いな透明シールドがぶら下がっています。いや、嫌いといってはこの時期、非常識と言われるのがオチですが……でもね、シールドってウイルスもさえぎりますが、音もさえぎってしまう。これのせいで仕事が減り、私はマジで困っている。シールドの必要性は理解しているけれど、やはり嫌いです。コロナウイルスはもちろんもっと嫌いですが。

 で、女の子に笑顔をよこすと、女の子はまだじっと私の顔を見ている。その子は眼鏡をかけていますので私はもしやと思ってシールド越しに思い切ってマスクを下げて、大げさなほどに破顔しました。とたんに女の子の顔が変化して彼女も笑顔になった。その日一番の私的なトピックです。

 人の顔の変化がまだ二才児だったらもしかしてわからないのかも。去年までは大人は誰もマスクはつけていなかったから、混乱している子もいるはず。弱視者なら特に。大人の顔の下半分がわからない。どうしてなんだろうか、と。

 一部の教育関係者がこの状態に危機感を持ち、小学校では喜怒哀楽の感情カードを作って持たせたり、顔のマスクに笑顔の口や歯を印刷したり。企業も営業マンの素顔の下半分を印刷した画像をマスクに貼り付けたりしています。やや年長の子どもや大人でさえ、世の中は変わったと実感しています。この世は、新たなコミュニケーション時代に突入しました。これから生まれてくる子や、まだ自我もない未就学児の影響は大変なものになるのではないか……。

 顔全体を覆う透明感のあるシールドもいずれ出てくるとは思いますが、抱っこや頭をなでる行為も今やNGです。母親が感染すると、同じ家庭内にいても世話ができなくなるケースもある。第三者が介入すると、幼子の混乱も出てくる。本当に大変なことです。


 マスクは仕方がない。感染防止以外の無理やりなマスクメリットを考えると、

① 歯並びの悪さを隠せる、

② 嫌いな人にべーと舌を出してもわからない。

③ 口臭防止 

④ リップをしなくても大丈夫

 これぐらいだが、幼児だと他人とのコミュニケーションの一部が没されてしまう。彼らの心理変化は数十年後に私達大人とはまったくもって違うものになるのではないか。コロナ禍で世界は変わりましたが、幼児への影響も大きく新たなコミュニケーション能力も求められるでしょう。


 顔施がんせという言葉が仏語にあります。和顔施わがんせや、笑顔施えがんせともいいます。笑顔で他人を施すという意味です。これはもしかして日本だけの現象ではないかな……この名前をつけた老人介護施設がいくつかあるぐらいです。要介護者に笑顔で接しますと標榜しているわけです。誰にでもできるお金もかからぬ「お布施」 と徳を積むわけです。マスクでもそれをより意識してすべきです。特に幼児相手には……人の素顔を見るのは、テレビにまかせるのも一手です。

 でもベストではないでしょう。おそらく仏様だってこの世がこうなるとは考えていないでしょう……難しいです。




追記、顔全体を知っているか知らぬかで、親密さの度合いが測れるようになる時代かも……

恋人になる前に気になるあの子の顔面下部を見ることができるかなど、検証記事とか出てくるだろう……どうやってら自然にマスクを外して顔を見せてもらえるか、マスクを外させるときのマナーや注意点など……。今までは下着だったけど、その前段階でマスク外さなきゃ話が始まらんのです。


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